死神のお仕事。

文字数 1,522文字

そういや、みっしー。このまえ、都に行ってたとか言ってたじゃない。あれはなんだったわけ?
仕事で行ってたですよ、都。死神のお仕事だったのです。
お姉ちゃん、唐突だよ。前回のお話読んでないとわからないよ。
そうなのです。読んでもわかりづらいのですよ、理科。「参上」と「三条」の洒落と、実際に三条烏丸にいた話がミックスされたセリフだったのです。ナイスな突っ込みなのです、ちづちづ。あいらびゅーん。
「あいらびゅーん」じゃないわよ、ったく。それで、どういうお仕事だったわけ? わたし、いまいちまだみっしーが死神だってこと、理解してないのよね。てか、理解できるかっつーの。
むふふ。そんなに知りたいのですかぁ?
いや、知りたくない、そんなには。特に支障があるわけじゃないし、知らなくても。
わたしも、そんなには知りたいとは思わないなー。
フルボッコ! 今、ボクはフルボッコにされてるのです! モラハラです! モラルハラスメントです! こういうときは黙って聞いてあげるもんじゃないのですかぁ? ひどい姉妹なのです。だけど、ちづちづあいらびゅーん。
みっしーはどんだけちづちづが好きなのよ。『毛皮のヴィーナス』でも読んでろな、このマゾ豚。
ひどさここに極まれりなのです。マゾでも豚でもないのですよ? 数年前ならまだしも、そういう発言をすると削除されるのがオチなのです、以降、気を付けるように、なのです! 
いぇすっ! サー!
ちづちづもそこで乗らないでいいから。聞き流しなさい、この哀れなマゾ豚のたわごとなんて。
そーだねっ♡
……なんというか、ぶち殺されてぇのですか、この極悪姉妹は……。
ま、そんでさぁ。都でなにしてたの?
なんというか、思い切り話を戻したのですね、このクソ理科姉ちゃん……。ゴホン。ボクは縁切りを司る死神なのです。なので、大鎌・ハネムーンスライサーで縁を断ち切ってきたのですよ、ある壮年男性の。
壮年かぁ。
そうねんで(注:そうなんだぜ、の意)。
もぅ、みっしーもお姉ちゃんも! 話は折らなくていいから!
とある壮年男性が、中学時代の修学旅行で都へ来た。その、中学生時代の同級生たちとは、その壮年男性はもう、会うことはないのでしたが、未だに同級生たちにしゃべりかけられてるような錯覚をする。ときに幻聴として「させられ思考」にはなるし、「いじられている」感覚が「声」として実体化する。
病院へ行けばいいんじゃないかなっ?
ちづちづ、すっげー笑顔で言うもんじゃないよ、そういうのは。まあ、同窓会にも呼ばれなさそうな人柄が予想されるな。
なのです、なのです。それで、その壮年男性は、都へ来て、思い出の場所へと行ったわけですよ。そこで、指令を前もって受けていたボクが、ずばあああぁぁっと、大鎌で斬ったわけです、「えにし」を。
おお。そう来たか。しかし、地元で断ち切ればよかったんじゃね?
そこはほら、思い出の場所とか、記憶とか、大切ですから。で、大鎌で斬った。
同級生たちとの関係性を断ち切った、と。
そう。正確にはそこからの「妄想」を、になるのですが。幻聴を聞いているほどですから。
それでそいつはどうなった?
同級生たちの記憶がなくなったのです。その代わり……。
その代わり?
「知らない声」に悩まされる羽目になったのです。
え? どうして?
消したの、記憶だけですから。幻聴は消えないし、その声を聴いても「誰の声かわからない」だけで、症状は続いた、と。ちづちづが言う通り、あとは病院でどうにかしろって話なのです。
めでたし、めでたし。
お姉ちゃん! 全然めでたくないよっ!
そしてボクにギャラが振り込まれ……。
もうやめてあげて~!
関係を断っても、長年蓄積されてつくられた病巣は消えないってね。そういう話か……。
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登場人物紹介

【田山理科】

 主人公にして家主。妹のちづちづと知らない町に引っ越し、二人で暮らしを始めたが、ちづちづがどこからか拾ってきた少女・みっしーも同居することに。趣味は絵を描くこと。ペインティングナイフを武器にする。

【みっしー】

 死神少女。十王庁からやってきた。土地勘がないため力尽きそうなところをちづちづに拾われて、そのまま居候することに。大鎌(ハネムーン・スライサー)を武器に、縁切りを司る仕事をしていた死神である。

【ちづちづ】

 理科の妹。背が低く、小学生と間違われるが、中学生である。お姉ちゃん大好きっ娘。いつもおどおどしているが、気の強い一面をときたま見せる。みっしーとは友達感覚。

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