探偵ボードレールと病める花々【第二話】

文字数 1,076文字

近代、と一口に言うけれど、捉え方は一定ではなく、捉え方は四つのタイプにわかれるという話をしたんだったわね。
「近代化」の主体的、精神的な側面の問題を見落としたり、諸指標間の体系的、動的な連関構造の検討を欠いてはならないのです。そのための分類なのでした。
ここらへんは絡み合っていて。「工業化」による生産力発展の問題を抜きにして「近代化」は論ずることができないのですが、「工業化」がつねに西欧的ないし資本主義的なコースをたどるとは限らないのです。社会体制、特に生産関係の問題を無視し、たんに「工業化」という側面だけから捉えなおすのは一面的な見解だ、と言われてしまうことなどがあるので、よく考えてこの絡みを考える必要性があるのです。
なーんか、いろんな先生の話のおいしいとこだけをついばんだような話しぶりじゃないの。
そう言われるとぐぅの音もでないのです。
うぐぅ。
時代遡りすぎなのです。
まあ、ついでなので「管理社会」についても、サラッと流して終わりにするのです。
管理とは、特定の目的を設定し、それを達成するためにもっとも効率的に人員と資源を組織し、その活動を調整することなのです。管理は、だから多少とも組織的な人間活動のすべての分野に見られる現象なのですよ。感覚としてわかると思うのですが。
しかしこの現象が科学的な観察と分析の下に置かれ、体系的な管理理論として追及されるようになったのは、二十世紀に入ってから新しい産業組織が発展し、企業行動に様々な合理性が要求されるようになってからなのです。
フーコーの話も、何回かしたし、ジョージ・オーウェルの話も少し出したことがあるわね。そう、オーウェルが書いた、管理社会という〈ビッグ・ブラザー〉。それはハート&ネグリにとっては複雑な形として〈帝国〉と呼ばれることになる。わたしたちはそこではマルチチュードとして〈帝国〉に抗わなくてはならない。
その話もいずれしなくてはならないですね。
だけど今回の舞台は、第二帝政期のパリが舞台となるの。
『悪の華』という一冊の詩集を出版し、『近代詩』を確立してしまった彼、シャルル・ボードレールのお話です。それは惨めな素人探偵のお話となるのですが……。
19世紀のパリの遊民文化から話は始まるのね。今回はボードレールを中心にした、群像劇になるわね。でも、その前に。
人物とその時代の物語の前に、『悪の華』をめぐる話を、しないとならないですね。
自らがつくった詩集に、振り回されることになる一人の男と、そのまわりの病める花々の話を。
それでは、『悪の華』が咲いたお話を、してきましょうか。

次回へ、つづく!

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登場人物紹介

【田山理科】

 主人公にして家主。妹のちづちづと知らない町に引っ越し、二人で暮らしを始めたが、ちづちづがどこからか拾ってきた少女・みっしーも同居することに。趣味は絵を描くこと。ペインティングナイフを武器にする。

【みっしー】

 死神少女。十王庁からやってきた。土地勘がないため力尽きそうなところをちづちづに拾われて、そのまま居候することに。大鎌(ハネムーン・スライサー)を武器に、縁切りを司る仕事をしていた死神である。

【ちづちづ】

 理科の妹。背が低く、小学生と間違われるが、中学生である。お姉ちゃん大好きっ娘。いつもおどおどしているが、気の強い一面をときたま見せる。みっしーとは友達感覚。

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