探偵ボードレールと病める花々【第十九話】
文字数 812文字
古代のヒーローに成り代わった詩人は、行為の報告が裁判記録に出てくる近代のヒーローから、離れていかざるを得ない。その断念は、すでに近代のヒーローの〈概念〉に〈組み込まれて〉いるわ。ヒーローは前もって〈没落〉を定められていて、その必然性を描くには、ずっと前にわたしたちが話したこともある〈悲劇詩人〉、彼らの登壇を必要なんてしない。没落が起こるべくして起こったなら、近代の命数は尽きている。そのことによって、近代自体が古典時代(アンティーケ)になり得るかが、明るみにだされる、とベンヤミンは語るわ。
ベンヤミンの定義によれば近代とは、ひとつの時代を指す言葉であると同時に、この時代のなかで活動している力、この時代を古典古代へ近づけていく力を、指したのです。ボードレールはわずかな場合だけ、嫌々ながらユゴーにこの〈力〉を認めたのでした。
つづくわ!!