風流才子には程遠い！
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お姉ちゃん、なにさっきから本を読みながらぶつぶつひとりごと言ってるの？
わたし、現代詩が嫌いなのよね。日本の現代詩が。読めって言われてるから読んでるんだけど、どうも性に合わないのよねー。
お姉ちゃんは、現代なんちゃらがなんでも大好きなのかと思ったら、嫌いな現代なんちゃらもあるんだねっ！
だいたい、誰に読めって言われているの？
もちろん、ボクなのです。
あ、みっしー。おはよー。
おはようなのです、ちづちづ。今日も早朝散歩に行ってきたのですか？
うん。行ってきたよ、散歩。
うーむ。なんかこの本、ムカつく。
理科は中原中也タイプなのですね。すぐに癇癪起こして、ビール瓶でひとをぶん殴るタイプなのです。
わたしはどういう風に見られているのかしら？
確かにお姉ちゃんはすぐに戦闘モードに入るよね。ペインティングナイフを構えて。近所のやんちゃ坊主と応戦してるもんねー。
全く。理科はそういうことしてるからダメなのです。ちづちづもやんちゃ坊主の攻撃対象になってしまうのです。今のところ、そうなっていないのはエンマちゃんとボクのおかげだ、ということをよく考えてほしいのです。
田舎暮らしは、鬱憤がたまっても解消する手立てがないガキどもがイキってるから、どうしようもないわよね。人口が減るって言ったって、そりゃ都会へと〈脱出〉するわよ。〈リアル脱出ゲーム〉って、田舎から都会へ逃げ延びることのメタファーでしょ。
身もふたもないですが、そうでしょうね。〈人狼ゲーム〉だって、ネットでのコミュニケーションのメタファーになっちゃって爆発的に流行った部分、あるのですよ。
そういうの、どちらかというと女の子がプレイすることの多いゲームよね。ホラーゲームだって、女の子が好きなこと多い。ゾンビだか亡霊だかが襲ってくるのから逃げ延びるなんて、普通の日常生活と変わらない部分もあるわよね。
そこらへん、あまりツッコミ入れないほうがいいと思うよ、お姉ちゃん。
そうね。饒舌になったらまた〈クラッシュ〉してしまうわね。碌でもない報復攻撃を仕掛けてくる輩はたくさんいるわね。
そーだよー、お姉ちゃん。ガードがゆるいんだからぁ。
だいたい、『マンスプレイニング』とは言いますが、女子を舐めた奴が多いですね。徹底抗戦の構えを見せないとなりませんね。もちろん、〈蝶のように軽やかに舞って〉抵抗するのですが。……反逆するのですよ？
なーに？ マンスプレイニングって？
『マンスプレイニング』っていうのは、男を意味する「man」と、解説を意味する「explain」をかけ合わせた「かばん語」よ。
あ、ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』だねっ！ ハンプティ・ダンプティの！
知ってるじゃない、ちづちづ。
ハンプティ・ダンプティのセリフの、「さよう、ねばらか (slithy) とは、滑らかで粘っこい (lithe and slimy) 様子じゃ。この言葉は旅行カバン (portmanteau) のようじゃろう 。 2つの意味が、1つの言葉に詰め込まれておる」だね！
その通り。それがかばん語。
それで。マンスプレイニングって、なに？
一般的には「男性が女性を見下す、あるいは偉そうになにかを解説すること」を指すのです。そこには「男性は女性より知識が豊富」「女性よりも多くのことが理解できる」といった、根拠がない性差別が根差すとされるものなのです。
ポリコレ棒でぶん殴られるわよね。もしくは、〈学問の棒〉でぶん殴られるわね。
ポリコレ棒……ポリティカルコレクトネス（PC）ですね。いや、その思考がすでに男性優位の視点が女性である理科の脳内で〈内在化〉されたものだ、とも言えるのですよ。ポリコレ、つまり政治的正しさではなく、マンスプレイニングの場合は、なにも根拠がないわけなのですから、ただ単にバカな輩のバカ論法を駆逐するってだけの話なのです。
きっとマンスプレイニングの男の人たちは自己顕示欲とか承認欲求とか満たしたくて、日ごろ見下しているひとたちに鼻高々になって気持ちよくなりたいだけなんだよ。風流才子には程遠い！
なかなかいいこと言うじゃないですか、ちづちづ。ボクとえっちぃことしてください、なのです！
きゃっ！ みっしーに告白されちゃった！
いや、ちづちづ、それ、えっちしたいって言ってるだけで、告白じゃないから。即物的なナンパだからね？
おなかすいたのです。朝ご飯にするのですよ。
はいはい。
今日がみんなにとっていい一日でありますように。
毎日が良い日であればいいね。悪夢のような昨日のことは全部忘れちゃうのも……良い生き方なのかもしれないねっ。
……そうね。
