あるエージェントのターゲットの話【第三話】

文字数 1,308文字

コミュニケーションの不可能性について、考えていたのですよ。世の中の細分化によって、自明でみんなが了承可能なものがおそらくは〈ない〉世界にボクたちは生きているのです。
っと、話はそこへ戻るのね。
社会構築主義、ってあるじゃないですか。
フェミニズムと言えばこのひと、ってくらい有名な某千鶴子先生も御本を書いていたわね、社会構築主義の本。すっごい前の話だけど。喧嘩を習いに行くために通っていた生徒さんも多数いたと言うわ。
いろいろ古傷を抉るのはやめた方がいいと思うがのぉ。傷でもないと思うが、の。
簡単に言うと社会構築主義とは、人間関係が現実をつくる、という考え方のことなのです。現実の現象や、事実、実態、意味とは、個人の頭の中でつくられるものではなく、人々の交渉の帰結である、とするものです。それにより、言語的に構築される、という立場なのですよ。
あー、みっしー。それで突っ込んでいってぼろくそにされたんだっけ?
そうなのじゃ。こやつがうちの公式アカウントを使って、の。個人アカウントでやれって話じゃ。炎上商法はやっておらぬのに、うちの公式アカウントは。困ったやつじゃ、この下っ端死神がのー。
そのひと曰く、社会構築主義は「表現の自由」よりも「内心の自由」をターゲットにしている、と。「個人」を「社会構造のエージェント」と考え、その「社会構造」を攻撃する。
そのひとが言うには、攻撃すべき社会構造があらかじめターゲットとして存在し、あらゆるところにそれを見出してしまう、と。だが、その「社会構造」はどこに存在し、その実在と内容をどうやって証明するのか。それに対し、主義者は「自明だ」と言うらしいのです。
でも、主義者じゃない者たちからすると、それは自明じゃない。「社会構造ってなに? どうやって見つけるの? それは反証可能なの?」に対し、その構造が「ある」って前提で話をするのだ、というのです。でも、その構造の「場」が、どの本を読んでも定義づけられていないのだ、とも。
一部の過激なフェミニストの批判者から「お気持ち」って言われる奴ね。でも、その主義者というひとたちは本気で女性差別と闘っているのでしょうね。対話の齟齬が上手くいかないままで。
ボクが見たその論者は、「自分個人の中のイメージ」を、「社会的事実」と結びつけてしまっているのだ、としているのです。
社会を論じたがるひとは『意味』を個人から切断し、『社会構造』だとしないで、(あなたの語る)『意味』は社会的実在ではなく、自分の『認知』にすぎない、と知るべきだ、と結論付けていますね。
理科。どう思いますか、この話。
『社会構造』とはなにか、って話ね。私見を述べて、このお話は終えましょう。「あの話」ね。
「場」と言ってしまうとハーバーマスの公共やら、フェミニズムと言うとフーコーの話を引き合いに出してしまいたいのもわかるのですが、構造と言えばあのひとの話をしたほうが良いのですよ。あきらかにこの主義のルーツの理論のひとつはあのふたりの理論がまたしても絡んでいるわけですし。
だって、『構造』ですよ?
構造主義ではなく、上部構造と下部構造ね。
そういうことなのです!
   と、いうわけで、つづく!!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

【田山理科】

 主人公にして家主。妹のちづちづと知らない町に引っ越し、二人で暮らしを始めたが、ちづちづがどこからか拾ってきた少女・みっしーも同居することに。趣味は絵を描くこと。ペインティングナイフを武器にする。

【みっしー】

 死神少女。十王庁からやってきた。土地勘がないため力尽きそうなところをちづちづに拾われて、そのまま居候することに。大鎌(ハネムーン・スライサー)を武器に、縁切りを司る仕事をしていた死神である。

【ちづちづ】

 理科の妹。背が低く、小学生と間違われるが、中学生である。お姉ちゃん大好きっ娘。いつもおどおどしているが、気の強い一面をときたま見せる。みっしーとは友達感覚。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色