変わる意識と走れ、メロンパン(下)
文字数 1,574文字
この文章、よく目を凝らすと、ダーガー自体のセクシャリティについては、触れていないのですよ。一瞬、「裸を見たことがなかったから知らなかった。ダーガーは男性なので、女性にもおちんちんがあると思っておちんちんを描いた」という風に解釈されそうですが、それはミスリードを誘っているだけ、と考えるのが普通だと思うのです。
さらに言えば、天使に性別はない、ということを指すかもしれないですね。ですが、アール・ブリュットということを強調される作家・画家なので、ダーガー本人のセクシャリティの問題に焦点が絞られて観られているのでしょう。
だいたい、ダーガーというひとは、知的障害だ、と診断され、施設に入れられて、そこから脱走を繰り返している、ある種の無頼漢な部分があり、女性と付き合いも遊びもしなかったのは、本人が判断してして、そういうお店にも行かなかったのだと考えられますね。お金なくてもそういうお店に行く人間は多いのです。なのですが、ダーガーは画材を買うのに、お金を使った。時間を、小説と絵画にだけ費やした。
そうそう、ダーガーのDVDですが、ダーガーのアパートに住んでたおばちゃんだか大家さんだかが出演していたのですが、そのおばちゃん、めっちゃ腐女子で、直接は言いませんでしたが、どうやらダーガーは男性が好きなのだろう、と取れる風に話していて、しかも興奮していたのです。
そこからも、通説の言葉、つまり、今、流通している、ダーガーは〈知らないので描けなかった〉という言葉では、ダーガー自身のセクシャリティの問題は「詮索しないで想像してても黙っててね」という意味合いがあると考えられるわね。そして、実際、そうなってる。わたしが知らないだけで、極めて政治的な理由がありそうだから、あまり大声では言えないけどね。
メロンパンの味はなんらかの理由があってあの味だったのですが、理由をすっ飛ばして、流布した結果、つまり、「メロンパンていうのはあの味だよね」という結果だけが残り、あとは、メロンパンはあの味である、となってしまったのですよ。そこに、メロンパンはメロン味じゃない、と言ってしまうのは、ダーガーのセクシャリティをひとに話して偉大な作家・画家に傷をつける(これは傷じゃない、という立場については今回は保留です)行為に等しかったのです。
メロンパン。Q.E.D.