変わる意識と走れ、メロンパン(下)

文字数 1,574文字

わたし、名推理しちゃうよ! おちんちん! おちんちんに問題が生じたのね!(ズバーン!!)
あの、このチャットノベル『死神はいつも嘘を吐く』が、今回で記念すべき第100回話目なんだけど、いきなりおちんちんで始まってしまったわね……。
さて。ヘンリー・ダーガーは女性の裸を見たことがなかった、というのが一般的な通説。しかし、この言葉、よく読んでほしいのです。「ヘンリー・ダーガーは女性の裸を見たことがなかった」。
繰り返すと、「ダーガーは女性の裸を見たことがないが故に、おちんちんの生えた女性を描く」という話ね。
この文章、よく目を凝らすと、ダーガー自体のセクシャリティについては、触れていないのですよ。一瞬、「裸を見たことがなかったから知らなかった。ダーガーは男性なので、女性にもおちんちんがあると思っておちんちんを描いた」という風に解釈されそうですが、それはミスリードを誘っているだけ、と考えるのが普通だと思うのです。
まさかのTS(トランスセクシャル)の可能性ね。要するに、「男の娘」!! もしくは、女性の裸を見たことがなかったのは、女性が嫌いだったから、という可能性
さらに言えば、天使に性別はない、ということを指すかもしれないですね。ですが、アール・ブリュットということを強調される作家・画家なので、ダーガー本人のセクシャリティの問題に焦点が絞られて観られているのでしょう。
だいたい、ダーガーというひとは、知的障害だ、と診断され、施設に入れられて、そこから脱走を繰り返している、ある種の無頼漢な部分があり、女性と付き合いも遊びもしなかったのは、本人が判断してして、そういうお店にも行かなかったのだと考えられますね。お金なくてもそういうお店に行く人間は多いのです。なのですが、ダーガーは画材を買うのに、お金を使った。時間を、小説と絵画にだけ費やした
そう聞くと、クソ偉いわね、ダーガー。芸術にその身を捧げたのね。
そうそう、ダーガーのDVDですが、ダーガーのアパートに住んでたおばちゃんだか大家さんだかが出演していたのですが、そのおばちゃん、めっちゃ腐女子で、直接は言いませんでしたが、どうやらダーガーは男性が好きなのだろう、と取れる風に話していて、しかも興奮していたのです。
そこからも、通説の言葉、つまり、今、流通している、ダーガーは〈知らないので描けなかった〉という言葉では、ダーガー自身のセクシャリティの問題は「詮索しないで想像してても黙っててね」という意味合いがあると考えられるわね。そして、実際、そうなってる。わたしが知らないだけで、極めて政治的な理由がありそうだから、あまり大声では言えないけどね。
ミスディレクションさせられてしまっているその結果が流布して、無知が生み出したのがおちんちんだった、ということにさせられている、というお話でした。
で。メロンパンはどういうお話だったの?
メロンパンの味はなんらかの理由があってあの味だったのですが、理由をすっ飛ばして、流布した結果、つまり、「メロンパンていうのはあの味だよね」という結果だけが残り、あとは、メロンパンはあの味である、となってしまったのですよ。そこに、メロンパンはメロン味じゃない、と言ってしまうのは、ダーガーのセクシャリティをひとに話して偉大な作家・画家に傷をつける(これは傷じゃない、という立場については今回は保留です)行為に等しかったのです。
メロンパン神話は今や崩れ、そしてダーガーにしても、日本の(特に同人の)小説やマンガでトランスセクシャルやボーイズラブが流行っている今、その〈無知神話〉は崩れるのです!!
今回、かなり推理小説っぽくなってしまったわね。わたしが作者だったら一般小説にして、新人賞に送るわ。
おちんちん!! とてもおちんちんだったね!!
   メロンパン。Q.E.D.
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登場人物紹介

【田山理科】

 主人公にして家主。妹のちづちづと知らない町に引っ越し、二人で暮らしを始めたが、ちづちづがどこからか拾ってきた少女・みっしーも同居することに。趣味は絵を描くこと。ペインティングナイフを武器にする。

【みっしー】

 死神少女。十王庁からやってきた。土地勘がないため力尽きそうなところをちづちづに拾われて、そのまま居候することに。大鎌(ハネムーン・スライサー)を武器に、縁切りを司る仕事をしていた死神である。

【ちづちづ】

 理科の妹。背が低く、小学生と間違われるが、中学生である。お姉ちゃん大好きっ娘。いつもおどおどしているが、気の強い一面をときたま見せる。みっしーとは友達感覚。

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