第76話 鬼蜘蛛

文字数 3,268文字

鳴海城 北曲輪 林組教室
真田昌幸を教師として、道徳の授業が行われている
強大な力を持ってしまった子供達にとって、その力を誤った使い方をしないように道徳、
人の道を学ぶ事が、もっとも大事であるという事から、様々な人物を教師として行われている 授業である
「君たち一人一人が、この世界の人間とは、かけ離れた能力を持ったわけだが それは、簡単に人を殺める事の出来る力であり、簡単に人を救う事の出来る力でもある
これから君たちは、人の為、友の為、家族の為、国の為に力を行使する事があるだろう
しかしその時に常に考えなければならないのが、その力を行使する事により 不利益を被る人は居ないのか? 誰かを犠牲にはしていないのか? 人の為と言っているが、本当は自分の為なのではないか 難しい話だが、常人を超える力を持ってしまった君たちが常に心に留めて置かなければ問題だ 良いな!」

「「「「「「「「「「はい!! 真田先生!!」」」」」」」」」」

「真田殿 ありがとうございました では皆 午後からは、火組教室で錬成の授業だ」

「「「「「「「「「「はい!! ブルート先生!!」」」」」」」」」」
食堂へと駆け出す 子供達

「皆、良い子供たちばかりですな ブルート殿」

「本当に、そう思います しかし人というのは、わずかな心の弱さから、思いもよらない行動に出ることを沢山見てきました 特に巨大な権力や力を持った者は、自分を戒めねばなりません」

「まったく、その通りですな。。。我々が、あの子供達の手本となれるよう まずは己を戒めねばなりませんな。。。」


鳴海城 北曲輪 火組教室
「今日は、初めての錬成魔法の授業になる 他の魔法同様に適正を持つ者、持たない者がいる訳だが 今は、適正が無くとも後々手に入れることもあるかも知れないからな 
しっかり勉強して理解するように まず錬成とは何か? 異なる2つ以上の素材を、結びつけて異なる素材を作り上げるのが錬成だな 例えば、身の回りで、どんな物が錬成で作られていると言えると思う?」
織田信忠が、少し迷いながら手を上げる 信忠を指差すブルート

「焼き物、陶器等がそうではないでしょうか?」

「うん 陶器もそうだ 土と水を練り上げ焼く事によって、陶器となるわけだな
錬成魔法と言うのは、練り上げ焼くという作業を魔法で行うわけだ」

「「「おぉ〜」」」と言う、感嘆の声が漏れる

「じゃあ今日は、紙を錬成魔法で作ってみようか アランに手本を見せてもらうので
魔力の流れをよく見ておくように」


アランの目の前の机に、黒みがかった樹皮と水が用意されている
「この。。。樹皮を。。。煮る、解す。。。漉く。。。乾かす。。。」
ちょっと休憩する 毎日の授業により話術の上達を見せている アラン

「この工程を。。。魔法で。。。行う。。。」
そう言うと、眼前の机に手を翳すと魔法陣が浮かび上がる 助けを求めるようにブルートを見るアラン

「このように錬成魔法では、錬成陣と言われる魔法陣を使う事が一般的だ 一度魔法陣を構築してしまえば、何度でも魔力を流してやるだけで同じ作業が繰り返されるからな
このアランの幾何法陣を、そのまま倣うもよし、自分なりに工夫して変えてみてもいい」
魔法陣の上に素材を置き アランが何かを口籠ると、金色の淡い輝きを見せる魔法陣
黒い樹皮と水が、たちまちのうちに上質な紙へと変わる

「「「「「「「「「「おおおぉぉぉっ!!」」」」」」」」」」
感嘆の声を上げる最中も、積み重なっていく紙

「では、皆もやってみるか」
各々の前に並べられる 黒い樹皮と水 各自が机の上に魔法陣を作る事に悪戦苦闘する 子供達


「じゃあアラン すまないが、頼んでいたのを出来るか?」
頷くと、教室の後方の空けてある床に大きな魔法陣を描き出していく アラン
直径2mほどの複雑な幾何法陣が描き出され それよりも一回り小さな幾何法陣が10cmほど浮いて重なり描き出される その作業を5度繰り返し 魔法陣の塔が出来上がる
ふぅ ふぅっと額の汗を拭う アラン
その中央に両手分の、黒い手甲と土蜘蛛の宿った【鬼丸】をブルートが置く
いつの間にか、見学に集まった子供達の前で、魔法陣に金色の魔力を流す アラン


鮮やかな、金色の光に包まれる5重の魔法陣 その中央で、その光により溶け合わされていくように見える【鬼丸】と黒い手甲 やがて弱く小さくなっていく金色の光の中で
一際、その存在を主張するかのように黒光りする一対の手甲。。。

「アラン、手に取ってもいいか?」 静かに頷く アラン
まず1つを手に取り、しげしげと見つめるブルート

「両方とも同じ形状で、どちらが右か左かもわからないんだが?」
それは、湾曲した黒い板状で、留め具も無ければ左右を示す為の指通しも無い
仕方なく、右手の甲に手甲を置いてみると、シュルシュルっとまるで黒い生き物のように触手が伸びていき、たちまちのうちにブルートの右手の肘から手の指までを覆い尽くす
指先が鉤爪のように鋭く伸び、手首から腕に沿って魚類のヒレのような形状のものが肘にまで張り出している

「何処かで見たことがあると思ったら、ルイの部分鬼化に似ているな、僅かだが土蜘蛛の意識も感じ取れる なるほど。。。わかった」
左手をもう一つの手甲に向けると、右手の手甲と同じように触手が伸びていき
左手の肘から指までを覆い尽くす 右手の手甲と異なるのが、手の甲から肘までにヒレのような隆起物が無く、蜘蛛の腹部を模したような円形の蛇腹が小型の盾として存在する
ブルートが軽く右腕を振るうと、シュンッという音と共に、一瞬でヒレのような隆起物から【鬼丸】であったであろう漆黒の刃が現れ 左手の盾を胸の前で翳すと蛇腹の関節部分がギチギチッと蠢く

「「「「「「かっこいい!!!!」」」」」」男の子達から、歓声が飛ぶ

「「ちょっと気持ち悪いです。。。」」女の子には、不評なようだ

「ありがとうアラン これは凄いよ」ブルートが薄く笑い 両手の指を広げる
まるで墨汁でも、ぶちまけたかの様に黒い糸が指の先から噴出され教室全体が己の縄張りだと言わんばかりに、立体的な蜘蛛の巣が張り巡らされる
驚いて動いてしまった 何人かの子供達が絡め取られる

「「「「ブルート先生 助けて下さい!!」」」」

「そうだな。。。錬成の授業中だったが、急遽変更して 魔力で出来た蜘蛛の糸から逃れる実習にしよう!」
そう言い、指を一握りすると、たちまち絡め取られる 子供達

茶々が雷撃を通すが、蜘蛛の糸に吸収され 
真田幸村が水刃を飛ばし数本を切断するが、新たな糸が伸び幸村の手足を縛る
伊達政宗の業火が糸を焼き尽くそうと発火するが、粘性の糸の前に容易く鎮火する

しばらくの間、悪戦苦闘する子供達 そんな中、唯一人だけブルートの蜘蛛の巣から逃れたのが千代である
誰一人も気づくことなく、アランの横にちょこんと立っていたのである

「えっ!? お千代どうやって逃れたんだ?」目を丸くして驚く ブルート

「あの。。。私にも、良くわからないのです ただこの糸から逃れアラン先生のそばに行きたいと願っただけなのですが。。。」私が聞きたいですと キョトンとした表情の千代

「夢の精霊 サンドマンか、お千代 何が出来るのか、解明していかないとならないな
ちなみに他の人を助けて、抜け出させる事は出来るか?」隣のアランを見る 千代
最初は力任せに糸を引きちぎっていたが、さらなる糸に絡め取られ 今や両足が床から浮いている状態でもがくアラン

「やってみます!!」
それから、しばらくが経ち 教室中が黒い糸で埋め尽くされ お千代もアランを逃がすことは叶わず ブルートがパチンッと指を鳴らすと、なんの痕跡も残さずに霧散する糸
ふぅーと疲れ果て息を吐く 面々

「皆 ありがとう、面白い統計が取れたよ なんの属性に強く、逆に弱いかとかね 
千代の夢の精霊サンドマンによる、興味深い事象も見れたしね」

「「「「「「「「ありがとうございました ブルート先生!!!」」」」」」」」

「アランありがとう とても気に入ったよ これには【鬼蜘蛛】と名付けるよ」



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