第124話 御嶽山大噴火

文字数 2,975文字

2人が1組となり、横に広がりながら エヴァによる強化と、お雪の鼓舞により
この世界の地を駆ける生物としては、歴史上もっとも速く、山を駆け 丘を飛び越え
風よりも早く、足を体を前へ前へと押し出す 6人
高空5000mに達した大岩が、弧を描きながら、ゆっくりと御嶽山を目指し下降を始める

「直政君!急ぎます!!」
井伊直政の手を取り、羽衣に風魔法を纏わせ、さらに速度を上げる エヴァ
少し頬を赤らめながら、必死に付いていく 直政

雲の切れ間から、大岩が顔を出す 寸分の狂いもなく御嶽山の火口に大岩が着弾するよう
風魔法を駆使して、誘導する エヴァ
「みなさん、まもなく御嶽山の火口に大岩が着弾します 準備は良いですか?」
ブルートの念話を通じて、全員に呼び掛ける
「ああ 始めよう!」

「はい天女様!準備は出来ています!!」

「エヴァ!ネボアを頼むな!満腹丸を助けるぞ!!」

「問題ない。。。」

「天女様!頑張ります!!」
御嶽山の麓で、雲を突き抜け加速していく大岩を見上げる 6人

玉龍の穂先を大岩に向け、さらに強烈な突風を作り出すと、螺旋を描き唸りをあげながら大岩へと向かい 大岩の落下速度を加速させる
「着弾します!!」
大気を切り裂き、御嶽山の火口に吸い込まれるように突き刺さる!!
一瞬の静寂の後で。。。。。。。
“ドゴオオオオオオォォォォッンンンンンンンッ!!!!!!!!!!!!!!!”
爆音が耳を(つんざ)き 地中のマグマの胎動が足の裏に伝わる
噴煙が周辺に降り注ぎ、ほんの1m先の視界を奪う
火口の奥深くで眠っていたマグマが、大岩の圧力で目覚めると真上の火口に向かい
溶岩を吹き出す 大小様々な石が、火山灰とともに飛び出し 宙を舞う

「威力が強すぎたようです。。。」

「天女様。。。地形が変わるほどでは、ないと思います。。。たぶん」

火口の縁から、溶岩が流れ出すが、凍結魔法の効果なのか、たちまちの内に冷え固まり 
その上をまた溶岩が流れ冷え固まっていく 
噴煙で霞む火口付近から2体の黒い影が、巨大な翼をはためかせ、悠然とその姿を表す
「信忠!左が赤い竜だ!行くぞ!!」

「はい!ブルート先生!! 土の精霊ノームよ僕に力を!!ゴーレムを顕現させよ!!」
全長5mを超えるゴーレムが、赤い竜へと一直線に飛び、ブルートと信忠がつづく


「アラン!黒いのは右の奴だ!!遅れるなよ!!」

「ルイ。。。無理をするなよ。。。」
全身を鬼化させたルイの周囲を20本を超える童子切安綱の複製が旋回し、発射を待つ
ルイを守るように、金色の盾を最大限に展開したアランが、ルイのすぐ前を駆ける


気配探知を研ぎ澄まし、ネボアの魔力を探るエヴァ
噴煙で霞む火口付近に目を凝らす 井伊直政
「天女様!ネボアを見つける事が出来ません!!」

「落ち着いてください 直政君 ネボアは居ます!」
エヴァが火口付近の噴煙を風魔法で払い飛ばすと、左右の手に太刀を持った夜叉が浮遊し
エヴァを睨みつける 
御嶽山を駆け上がりながら ネボアを睨みつける エヴァ

“この忌々しい 天女と呼ばれる女!お前との因縁も今日で終わりとしよう!!”
2本の太刀を体の前で交差させると、エヴァに向かい滑るように駆け下りる ネボア
玉龍の穂先を下段から、ネボアとすれ違いざまに大きく振り上げる エヴァ
それを2本の太刀で受け流し、空中に大きな火花を散らす ネボア
御嶽山の中腹、溶岩の冷え固まった上で、対峙する エヴァと夜叉の姿のネボア
「天女と呼ばれる女よ やってくれたな!この代償は高くつくぞ!!」

「貴方と話をする気はありません 死んで下さい」
後ろに居る直政を念話で制し、氷のように冷めた目でネボアを睨みつける エヴァ



漆黒の手甲、鬼蜘蛛を両手に装着したブルートが、遠隔操作の可能になったゴーレムを盾に赤い竜、フォゴへと迫る
「信忠いいな、俺達の目的は、この竜を倒すことではなく ネボアに近づけない事だからな」

「あれが。。。赤い竜、なんて禍々しい瘴気を。。。はい 解っています ブルート先生ゴーレムも防御力を優先して作り出していますので、存分に盾にして下さい」

「ああ遠慮なく使わせてもらうよ 竜の息吹の射線上には絶対に入るなよ」

「はい 了解しました!」

「まずは、魔法の耐性を見せてもらうか?」
鬼蜘蛛に、青い雷光が(ほとばし)る、両手の十指から、雷撃を纏わせた漆黒の糸が
ゴーレムの背に向けて、フォゴの死角へと放たれる
ゴーレムの背中ギリギリで上下左右あらゆる方向へと枝分かれした 漆黒の糸が雷撃を
伴い、開かれた巨大な手の平のように、赤い竜を絡め取ろうと襲い掛かる
頭部を両腕を両足を漆黒の糸が、操り人形の糸のように、絡みつき
フォゴの自由を奪い 青い閃光を迸らせた 雷撃が、フォゴの全身を襲う
「信忠、動きは抑えた ゴーレムで物理攻撃は出来るか?」
「はい やってみます!」
姿勢を低くし一瞬の溜めの後、強く張られた弓から解き放たれた矢のように、頭から
フォゴへと、その巨大な拳を振るう “ぐしゃっ”
下方から、右の拳がフォゴの顎を打ち抜き 大きく仰け反る 赤い竜·フォゴ
手足を拘束され、肉袋と化したフォゴの引き締まった腹に左の拳をめり込ませ
ゴーレムの巨体からは、想像も出来ぬ程の左右の連打が始まる
“ドカッ!ボスッ!バシッ!ズバッ!ドカッ!ボスッ!バシッ!ズバッ!ズドンッ”
信忠の額に汗が光り 空中で少しずつ、せり上がっていくフォゴの巨体
「このまま、押し切れるのか?」
ブルートの糸にフォゴの抗う力が伝わっては来ない さらに雷撃を強める ブルート

その時、赤い竜·フォゴの尾の先端が、ぴくりっと動くのを確かに見た しかし瞬きを
した瞬間に、ゴーレムの頭部がフォゴの尻尾に刺し貫かれ、爆散するのを見る事になる
「えっ!?」唖然とする 信忠の動きが止まる
引き戻された尾が、ゴーレムの右腕、左腕、右脚、左脚と順番に粉砕していき
残った腹部が、御嶽山の火口へと落ちて行く
四肢に力を入れたフォゴの周囲が赤い波動を発すると、ブルートの鬼蜘蛛の糸がパラパラと霧散していく “赤き竜の覇気” 離れた信忠にまで“チリチリッ”と熱波が襲う

「信忠!少し下がっていろ ゴーレムを新たに出せるのなら、自分の身を守るんだ!!」
フォゴの閉じられた瞼が開き、赤き光りを宿した瞳が、ブルートを睨む

「ようやく目覚めたということか? 身体強化魔法“超反応”!!」
鬼蜘蛛の十指より、捻り合わされた 極太の糸に凍結の魔法を纏わせ、両腕を高く上げると、高空へ放たれた漆黒の糸が、次々と枝分かれをし空間を支配するかのように、立体的な蜘蛛の巣が、またたく間に出来上がる
鬼蜘蛛の十指を地面に突き刺すと、極太の糸を地面に固定させ、その一本に足を掛けると
地面を蹴る ブルート 上下左右へと立体的な機動で、フォゴの高さへと登っていく
ブルートを撃ち落とそうと、炎球を高速で連射する フォゴ
超反応で巧みに交わしながら、蜘蛛の巣の網目に、氷壁を張り炎球を逸らす
フォゴの上下左右へと鬼蜘蛛の糸を張り巡らし、巨大な球形の蜘蛛の巣にフォゴを閉じ込める事に成功する
未だ、火山灰が舞い落ちる御嶽山上空に、陽光をキラキラと反射する 巨大な蜘蛛の巣
「凄いです!ブルート先生!!」

「これで少しは、時間が稼げるだろう」
球形の蜘蛛の巣の中を立体的に飛び回り、フォゴの動きを牽制しながら、氷壁で蜘蛛の巣を強化していく 
ブルート


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