第25話 鳴海城 戦後処理

文字数 3,422文字

鳴海城落城から一夜明け
誓願寺で目覚めるエヴァ 
昨日は、昼に休息をとり 回復した、わずかな魔力で負傷者に治療を施し 
夕刻 誓願寺に入り 泥のように眠った おかげで魔力は全回復したようである

「お腹が空きました。。。」昨夜は夕食も摂らずに眠ったようで猛烈な空腹に目を覚ます
誰が用意したのか 枕元に置いてある煎餅(せんべい)に手を伸ばしボリボリと(かじ)
その音を聞きつけ 本多忠勝が襖越しに声を掛ける

「天女様おはようございます 朝食のご用意が出来ています 本堂まで起こしください」

「おはようございます 忠勝殿すぐに参ります」

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「あの 山県殿、我らもここで朝食をご一緒するのですか?」
本堂に呼ばれ来てみると目の前に膳を用意される 羽柴兄弟

「ふむ ここで(まと)めて食えと和尚に言われているのでな なにか問題でも?」

「いえ わしらは敗軍の将 言わば捕虜では?」

「捕虜でも腹は減ろう? すべての兵に同じものとはいかぬが、みんなにも飯を食わせておるので、心配せずに食え」

「かたじけない では頂きます」秀吉、秀長が揃って手を合わせ箸を取る
そこに忠勝に案内されエヴァが本堂へと入ってくる
本堂に居る、全ての者が箸を止め頭を下げる 
「「「「「「「「「「天女様おはようございます!!!」」」」」」」」」」

「皆さんおはようございます ん!? これは、八丁味噌を使ったお味噌汁ですね 実に良い香りです
八丁村にお願いして、持ち込んで正解でしたね」
エヴァの登場で戦の翌日とは思えない 和やかな空気が流れる

朝食を終えた羽柴兄弟と佐久間信盛がエヴァの食事を終える頃合いを見て エヴァの前に揃って頭を下げる

「天女様 昨日は、我らの兵たちの治療にご尽力頂き 誠にありがとうございました」
さらに畳に額を擦り付けるほどに、頭を下げる

「羽柴殿、救える命に武田も織田もありません 救えなかった命を、生き残った皆さんで背負って生きていかねばなりませんね 同じ過ちを繰り返さぬようにです」

「わしらの処遇が、どのようになるかは、わかりませぬが命ある限り肝に銘じさせて頂きます」

「その処遇じゃが」 いつの間にか本多忠勝の横に並んで座す 山県昌景

「天女様、風車(かざぐるま)をお願いしても宜しいでしょうか? 体調に問題がなければですが?」

「すっかり回復しています 皆さんも早くこれからの処遇が決まったほうがよろしいでしょう?」

「それでは、お言葉に甘えさせていただきます」前もって用意させていた風車を3つ取り出す
それを一つずつエヴァより渡され 風車を持った手をエヴァに両手で包み込まれ
顔を真っ赤にしながら きょとんと顔を見合わせる3人 

「ちょっと試してみますね 私が聞いたことにすべて"はい"と答えてください 良いですね?」

「「「はい」」」

「では始めます 私は、男です」

「「「はい」」」意味がわからず また顔を見合わせる3人

「次です 私は、実は女です」

「「「はい。。。?」」」3人の風車がくるくると回る  「「「えっ??」」」

「次です この天女と呼ばれている女は、どこか信用できない」

「「「はい」」」3人の風車が、またくるくると回る

「これは、嘘をつくと風車が回るのですよ では山県殿お願いします」ニッコリと微笑む エヴァ

「「「そ そのような事が?」」」

「では、拙者から質問します  早く織田信長の元に帰りたい」

「「「はい」」」力無く答える3人の風車が勢いよく回る

「武田信玄に勝てる武将は、この日の本にいない」

「「「はい」」」ピクリとも動かない 風車

「これだけで十分 それぞれ事情もあるでしょう 後ほど1人1人話しましょう 天女様ありがとうございました」

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夜を徹して知多半島を南に走り続けた お雪が大野城の城下に入っていた
大手門の門番に響談の木札と文を預け 城主·佐治信方に手渡すよう頼む

一方その頃 真田幸隆率いる 5000の兵が大野城に向け行軍していた
佐久間信盛よりの文(偽)を受け取った翌日 佐治信方の元に、子飼いの忍びが一報をもたらす

「鳴海城落城、佐久間信盛殿、羽柴秀吉殿は捕らえられ、簗田政綱殿 討ち死 緒川城より真田幸隆を大将に兵およそ5000がここ、大野城に進軍しております」

「2万以上の兵を預かりながら。。。佐久間も羽柴も時間も稼げぬか!!わかった下がってよいぞ 
ご苦労であった」
佐治信方の正妻で織田信長の妹 お犬の方の私室へと向かう 佐治信方

「わしじゃ 入るぞ」

「どうされました?」縫物をしていた手を止め 信方と向き合う お犬の方

「明日にもここが、武田軍5000兵に囲まれることになる すぐに一成を連れ兄·信長殿の元へ。。。
岐阜へ向かわれよ」

「殿は、どうなさるのですか?」

「戦うより他あるまい 水野信元は裏切り 鳴海城は落城 沓掛城も武田の手に落ちておる まさに孤立無援じゃな はっはっは」力無く笑う 信方

「ここに兵は、どれほど居るのです? 明日までに集めても1000にも足りませぬのでしょう? 
相手は、あの武田軍です 降伏しましょう 兄上の事でしたら、お気になさいますな 比叡山を焼き討ち 
徳川家康殿を手に掛けるなど我が兄ではありますが、そのような所業の巻き添えに、殿の兵を犬死させるわけにはいきませぬ」

「本当にそれで良いのか?」

「勿論でございます 貴方も一成も失うわけにまいりませぬ すぐに早馬を出し織田信長とは手切りだと
武田軍にお伝えください」

「わかった そのようにしよう」
心の底から、安堵する 佐治信方

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鳴海城下 
神社仏閣に宿を借りていた武田軍、元織田軍から武田軍へと編入された者たちが沓掛城、緒川城へと
割り振られ東進して行く 織田軍に徴兵された者の中で、農業に従事する多数の者たちが郷に帰ることを許された
問題が柴田勝家の兵であるが、郷に返すわけにもいかず 希望するものには三河、信濃で土地を与え農業に従事させ 武田軍に編入を希望する者は受け入れた
エヴァの治療を受けた者達だけでなく、それを見聞きした者ほぼ全員が武田軍に忠誠を誓うことになる

「それでは、羽柴秀吉殿、秀長殿 我々は一旦、沓掛城に戻りますゆえ鳴海城再建後にまた会いましょう」
そう言う 山県昌景の背を見送る 羽柴兄弟とその配下500名

「天女様と本多忠勝殿は、まだこちらに居てくださるのですか? 再建と言われましても期限も建材の調達も
何も聞いていないのですが。。。?」不安な様子で聞いてくる 羽柴秀長

「皆さんの護衛に忠勝殿がしばらくの間は残ります 期限は、そうですね2週間も掛からないかと思います」

「天女様。。。片付けだけで2週間以上は掛かると思うのですが。。。」

「大丈夫です 間もなくルイが来てくれますので 先ほど鳩を飛ばしましたので、もうすぐ来ます」

「天女様!ルイがこちらに来るのですか!? 久しぶりに手合わが出来ますな」
子供のようにはしゃぐ 忠勝

「いや 忠勝殿とまともに打ち合える者など居りますまい」

「秀長殿、まだ一度も勝ったことがないのです。。。それどころか一度殺されかけています」
目を丸くして驚く 羽柴兄弟

「忠勝殿 貴方は、すっかり回復しています 一太刀くらい入れられるかもしれませんね 頑張ってください」

「天女様! この忠勝 天女様の期待に答えられますよう 命を懸けて挑む所存にございます!!」

「それよりもお腹が空きました お昼にしましょう」
昼食を終え 鳴海城の焼け跡を手分けをして片付けに励む一同



「エヴァ〜じゃない 天女様〜〜 あんた人使いが荒すぎ〜〜〜!!」

「あらっ ルイ早かったですね」

「早かったじゃなくて! 大野城に向かってたんだぞ それをすぐに来いって。。。」

「あ~ それでしたら大丈夫です 大野城は降伏しますから 威嚇の為の進軍ですから」

「。。。。。で? 俺は何をすればいいんだ??」

「まずは、拙者と死合でござるな!」【蜻蛉切り】を握る手に力を込める 忠勝

「忠勝殿 私の用事が済んでからでよろしいですか?」潤んだ目で忠勝を見つめる エヴァ

「勿論でございます 口を挟みまして申し訳ございません 何なりとルイにお申し付けください」
片膝をつき頭を下げる 忠勝

『。。。。。忠勝。。。お前さらに、(こじ)らせてきてるな。。。。』



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