第150話 魔王

文字数 3,329文字

赤いバハムート·フォゴに天武の子供達、アラン、ブルート、ルイの怒涛の攻撃が集まる
ブルートの鬼蜘蛛の糸を足場に凍結魔法を繰り出す 真田幸村 その幸村と連携して
凍結した箇所に刺突を繰り出す 精霊フーカーの装備に身を包んだ 北条氏直
エント·キングの大筒が、ゴーレムの大筒が地上よりフォゴに向かい 火を吹く
上空で攻撃をなんとか凌ぎ続けるが、鱗が肉片が宙を舞う

そこで赤き竜の覇気を放つが、ルイの鬼神の覇気で相殺され フォゴ自身の超回復も
不完全なままで、空中で滞空を続けるのにも支障をきたしだしていた

魔力を限界まで溜めた アランの虎舞羅が金色の魔力弾を発射する
金色の光の尾を引き フォゴの胸元へと吸い込まれるように突き刺さる 魔力弾
「このまま押し切るぞ!! みんな、頑張るんだ!!!」


一方、ネボアである夜叉はと言うと、地獄象蟻の白い粘液に苦闘するナーダの肩に座り
耳元に顔を近づけ、語りかけていた
「ナーダ、我等の母竜を食った時の事を覚えているか?」
“ああ 何となくだがな。。。今、その話は重要か?”

「重要だな あの時に我等の母竜の生前の記憶や想いが我々の頭に流れ込んできたはずなんだが?」
“あの頃の記憶には、どうも霞が掛かっているようでな。。。母を喰ったことで巨大な力を手にした事は理解しているのだが?”
地獄象蟻への対応を諦めたのか、腕を組み ネボアの話に真剣に聞き入りだす ナーダ

「我等の父親と言うのが適切かは解らんが、母竜が我らを受胎するきっかけとなったのは、異国の黒魔術から生まれた怨霊だ 強靭な母の身体を借り、この世界で誰にも屈する事の無い、圧倒的な力を持った生物を1体 産み出すのが、その怨霊の目的だったのだ」
“1体? 我等は、3体だぞ?”

「いや1体なんだよ。。。生物の進化という物は、例えば身長1mの親から身長5mの子供は産まれないだろう? ベヒーモスという種族からバハムートであるナーダとフォゴが産まれるのは通常の進化の範囲だ しかし彼らが望んだのは、何者にも屈しない力だったのだ。。。」
“すまんがネボア、お前の言っている意味が解らんのだが!? 今の我らの力では足りないと言うのか?”

「お前もフォゴも生物を喰う事で、その生物が持っていた能力を取り込んで居るだろう? 人間などをいくら喰ったところで、力にはならぬが、知能や知識が強化された自覚はあるはずだ? 母竜を喰った時に巨大な力を手に入れたようにな」
“何が言いたいのだ!!ネボア!!?? やめるんだ!!!”

「通常の進化では、決して手に入らない力を手に入れるための鍵となるのが。。。
我とフォゴだと言う事だ フォゴを喰らい完全なる肉体を手に入れ、我を喰らい完全なる知能を手に入れるのだ それが我等兄弟が、この地に産まれ落ちた時からの宿命なのだ」
“この世界でたった一人きりになれというのか!?”

「魔の王に兄弟も肉親も必要ないだろう そんな者は、お前を完全なる存在にする為の
鍵でしかないのだからな。。。」
“魔の王。。。この俺に魔王になれというのか?”



ここは、何処までも続く草原 三方ヶ原だろうか?
見事な栗毛の駿馬(しゅんめ)に跨り、足の運びに合わせ揺れる
たてがみを掴む小さな白い手に、言葉にできない愛おしさを感じながら
自分の足の間に座る 3歳ほどの娘をそっと右手で抱き寄せる
肩まで伸びた黒い髪に巫女の衣装を(まと)い、凛と伸びた背筋に
この娘は、紛れもなく自分と本多忠勝殿との子供であると確信している
抱き寄せる右手に、更に力を込め引き寄せながら 娘の顔を覗き込む
旦那様と私によく似た この世の者とは思えない美しい顔立ちに
幼児とは思えない知性をたたえた双眸 微笑みを浮かべた唇
自分は、この娘を守る為だけに生まれてきたのだと
太陽が東より昇り 西に沈む事よりも、遥かに明瞭な世界の摂理であると確信する
ただひたすらに幸せである 今 この時が私の幸せの全てである 
この幸せをこの手に入れるためならば。。。この幸せを守るためならば。。。
私は、恐れるものなど何も無いではないか!?

夢である事を、確信している夢 何者かから与えられた夢
この夢にいつまでも、いつまでも浸っていたい この娘を愛でていたい
この夢が、まもなく覚める事は、わかっている


「「「「「「ああああっ!!!!やめろ〜!!!!やめてくれっ!!!!!」」」」」」

「「「「「逃げるんだ!!!!逃げてくれ〜〜!!!!」」」」」

「天女様〜!! みんな!!みんな死んじゃいました〜!!!」

「お兄ちゃん!!お兄ちゃんが死んじゃった〜!!」

「アラン様〜!!アラン様が死んでしまいました〜〜!!」
床にヘタリ込み、泣きじゃくる茶々と千代 その2人を背中から抱きしめる お雪

「天女様。。。お目覚めですか? なぜ泣いているのですか?」
おりんが、エヴァの顔を覗き込む

「えっ!? 私が泣いているのですか?」
自分の目元に手をやり、濡れた指先を見つめる エヴァ

「みんな死んじゃったと聞こえましたが。。。?」
しーんと静まり返った大食堂内 
壁面の映像に目を遣る そこには、フォゴもナーダの姿も無く 片腕を失った夜叉と
その後ろには、身長3mほどの吸い込まれるような闇、漆黒と言う言葉では足りないほどの闇を纏った異形が、宙に浮いている 彼らから50mほどの距離を置いて酒呑童子と化したルイが、童子切安綱を手に立ち 映像からも肩で息をしている様子が覗える

「フォゴは? ナーダはどうしたのですか??」

「ナーダがフォゴを喰べたのです みんなの攻撃で満身創痍となったフォゴをナーダが肉の一片も残さずに喰べたのです その後に酷く苦しみだしたナーダにみんなで攻撃を試みたのですが、夜叉の決死の反攻にあい、凌ぎ切られてしまいました」

「みんなは?ブルートは?アランは?子供達は!?」

「天女様 落ち着いて聞いて下さい フォゴを喰べたナーダが、酷く苦しんだあとに仮死状態のように動かなくなり、しばらくすると脱皮を始めました そして現れたのが、あの姿になったナーダなのです 
その後、瞬間移動のように一人一人の目の前に現れ、手の平から覇気を浴びせるとみんな一瞬で蒸発してしまったのです 鬼神の覇気でなんとか相殺したルイと時間停止で逃れた直政君だけが無事ですが。。。
いつまで逃げ切れるか」

「待って下さい!?みんな死んだ??」

「あっ!? 茶々ちゃんの即死回避で、練兵場に依代を用意していましたので、復活までに時間は掛かりますが、大丈夫です。。。」
ほっと胸をなでおろす エヴァ

「良かったです 即死回避が使えたのですね。。。やはり即死回避が作動しなかったのは、私が原因だったのでしょうね。。。2人を助けに行かなくては!」

「「天女様!!やめて下さい!!!」」
おりんとお雪が声を揃える

「天女殿!わしも一部始終を見ていたが、あれは強いとかそういう次元の話では無い!
生物の枠の外、伝え聞く神話の神々でさえ、あれほどの力を持っていたとは思えん!!
行ってはならんぞ!!」
武田信玄が酷く憔悴しきった顔で訴える

「それでも、私は行かねばなりません ここに居る全員が殺されるのを指を咥えて見ているわけにいきませんから 私はみんなを救うために遣わされた天女なのですから」
行かせまいと玉龍を胸に抱き、ふるふるっと首を振る お雪を抱きしめる エヴァ
「大丈夫です お雪ちゃん 私は死にません。。。このお腹の子が成長し、ともに過ごす夢を見ました 
ですから私の死に場所は、ここではありません!」
お雪から、そっと玉龍を受け取ると大食堂の扉へと歩きだす

「「「「「本多忠勝!!貴方はどこに居るのですか!!??」」」」」


地上階へと飛び出すと、三角の狐耳をぴんっと立て、九尾に空気をたっぷりと含ませた
エヴァが空中に無数の結界を撒き散らし、ルイと夜叉が切り結ぶ空域へと駆け上る
「ルイ!お待たせしました!!」

「エヴァ!!なんで来たんだ!?ナーダは、もう俺達の手に負える生き物ではないぞ!? どうやら俺達は、魔王を誕生させてしまったようだ。。。」

「ほぅ お前達にも、魔王という存在がわかるのか!? 天女と呼ばれる女よ 尻尾を巻いて逃げたかと思っていたぞ!」

「ネボア 貴方との因縁もここで終わりにしましょう!」




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