第16話 岡崎城 信玄とエヴァ

文字数 3,602文字

一路 岡崎城へと向う 武田本隊5000

関東の北条氏からは、三方ヶ原に援軍として参戦した2000がほぼ無傷で残っており 
引き続き援軍として岡崎城に同行している

遠江 三河の各領土からは、その大小 規模に関わらず
150兵✕2部隊の300兵が徴兵され 糧食を積んだ荷馬車と共に岡崎城を目指す

さらに駿河の各領土からは、1月末日を期限に300兵
甲斐、信濃の各領土からは、雪解けを待っての参戦となり
春には、岡崎城を拠点とした 武田、徳川連合軍が3万
甲斐、信濃から西進する武田別働隊2万
近江からは、浅井、朝倉連合軍が東進し

加賀、越中から椎名康胤が率いる一向一揆衆が状況に応じて
南進することとなる 東西南北 四方から押し潰す布陣である
この信長包囲網を完遂させるにあたり
武田信玄は、義兄弟である本願寺·顕如を通じて将軍·足利義昭公から各大名に、くれぐれも足並みを揃える事と念を押した 書状を依頼しており 将軍義昭公も喜び勇んで 筆を走らせている事までを確認をしている

現在 長篠城にて夜を迎える武田本隊

「天女殿は、健脚であるな 輿も用意させたのに お乗り頂けないと 担ぎ手たちが気落ちしておった」
長旅の疲れを労う 武田信玄

「歩くことには、慣れています 初めて訪れる場所の風景を眺めながら歩くことは、楽しいので」

「ところで天女殿。。。」室内には2人であるのに声を落とす

「すまんが、もう一度聞かせもらえるだろうか?」

「お館様。。。不安なのですね?」 優しく信玄の目を覗き込むように問う

「ふむ わしは今まで共闘という経験が少なくてな、もちろんないわけではない。。。援軍として北条と共に上杉を追い払ったこともある 北条が主導であったがの 3年前に徳川と連合を組んで駿河の今川と戦った事もある 戦には勝ったが 徳川とは喧嘩別れという最悪の結末での。。。よい結果になった試しが無いのじゃ。。。」

「簡単な流れを説明しますね 3日後に岡崎城に入ります 16日には、各領土の部隊が揃うでしょう 
その時点で武田本隊5000 北条の援軍2000 遠江、三河の徳川軍およそ6000の13000が揃います
そこから水野信元の緒川城、刈谷城 築田広正の沓掛城 佐治信方の大野城 佐久間信盛の鳴海城の
5城を2週間で頂きます その後は、この5つの城と岡崎城に、1月末には駿河からの兵3000と北条からの援軍がさらにが3000が入ります 
その後領土を固めながら 2月には家康公の葬儀を岡崎城に近い大樹寺で執り行います 刈谷城には、家康公の母君、於大の方もいらっしゃいますので盛大なものにしたいと思います。。。ここまではいいですか?」

「頂きますと簡単に言われるが。。。そんなに簡単にいくと?」

「そうですね水野信元の緒川城、刈谷城は、無血開城しますでしょう 甥である家康を殺した信長より 武田へと誘導するのは、容易いかと そうなると袋小路となり援軍の期待できなくなった大野城は、大軍で囲えば落ちます 沓掛城を正攻法で落とした後 佐久間信盛の鳴海城ですが 13000で囲みます 多少手こずりますが勝ちますよ」
にっこりと微笑む エヴァ

「ふ〜む 天女殿に言われると、その通りになる気がするから不思議じゃのう。。。」
顎に手をやりながら 唸る

「雪の溶けた3月には、我々は北上して岐阜を目指します 甲斐、信濃の武田別働隊は、東から攻め 浅井、朝倉連合軍が西から 椎名康胤の一向一揆衆が上杉謙信を牽制しながら 北を塞ぎます」

「なるほどのう。。。となるといかに足並みを揃えるかが肝じゃのう」

「その為にルイがお館様の領土のすべての城 及び 遠江、三河の全ての城に双方向での連絡が出来るように鳩小屋を設置しています 今後も浅井の小谷城、尾張で接収した城にも設置しますね」

「その伝書鳩と言うのは、それほど正確に目的地に行くものなのか?」

「ルイが従属していますからね ルイが魔力を通したアンテナに向けて正確に飛びます しかもルイの特性を僅かですが引き継ぎますので 他の鳥類に襲われても負けることはないでしょうし 速度も速いです」

「それは、偉い物じゃのう。。。それ、そんなに旨いかのう?」

「美味しいですね〜このこんにゃくと言う物の食感が癖になります」
信玄との会談中 つねに味噌田楽を両手に舌鼓を打つエヴァであった 

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岡崎城
16日の期日までは、あと2日の14日の昼過ぎであるが城内は、荷馬車や大八車が行き交い大変な喧騒を醸している 1万人を超える兵達の、備品や糧食を蓄えるのだから当然であろう

「大きなお城ですね〜」岡崎城を見て 思わず声が漏れる エヴァ

「この国でも有数の規模です 我が殿の祖父の代から拡張を重ね 殿もここでお産まれになりました」
榊原康政がエヴァに説明をする先ほど入城し、二の丸で徳川の重臣たちと共に小休止にとお茶を頂いている

「信康様で4代目だったのですが。。。浜松へ移封を命じられるとは」本多忠勝が肩を落とす

「それは信康様は、まだお若いですから 織田との最前線となる岡崎城は危険だと判断されたのでしょう
この戦が終われば 戻ることになると思いますよ」

「そうなると良いのですが。。。」他の重臣たちも揃って頷く

しばらくの談話の後 真田幸隆が顔を出す

「皆さん、ここまでの路程 お疲れ様でした」
いずまいを正し、頭を下げる 徳川の家臣達

「まだ2日ありますので、全員揃ってはいないのですが 夕方より本丸にて軍議を行います それと、こちらが本題なのですが家康公の葬儀を来月に松平家の菩提寺である 大樹寺で執り行うようにとの事です 
日時は、2月20日より期間は5日間 喪主は徳川信康様 後見人として武田信玄、将軍足利義昭の連名で日の本すべての大名に報せを送るとの事です その準備を皆さんにお願いすることになります」

「えっ それは、有り難いお話なのですが。。。えっ?。。。後見人? 連名で将軍様が??」
榊原康政が、信じられないという様子で、口をパクパクとさせる

「ええ 信康様は、まだ13歳と言う事ですので 後見人が必要かと言う事でお館様が将軍·義昭公に打診しましたところ 快く引き受けてくださいました」

「恐悦至極にございます」一斉に土下座にて礼を尽くす

「頭を上げて下さい これは皆さんの力でもあります 徳川と武田 誰も軽く見ることは出来ないという事です それと葬儀には、数万人が参列することになります 準備の方 抜かりなくお願いします」
真田幸隆が席を立った後も、興奮が冷めない様子で、それぞれが思いに耽る 

張り詰めた空気の中、ふいにエヴァが口を開く
「ここの名物はなんでしょう? 味噌田楽もとても気に入ったのですが。。。」

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その頃 ルイは。。。走っていた! ただひたすらに走る!
信濃、甲斐をようやく終え 駿河に入っていた
深沢城、沼津城を終え大宮城に向かう 常に富士山を右手に見ながらの移動である

「飯にするか。。。」
河原の大きめの石に腰を下ろし 空間収納から集めておいた小枝を取り出し火魔法で火をつける 海津城に向かう途中に仕留めて切り分けておいた猪の肉に串を刺し 焚き火で炙る 焼き上がるまで暫しの休息である

「こちら側から見る 富士山も綺麗だな。。。でかくて美しい」

小川で魚が跳ねる、それを見もせずに【指弾】で仕留め 猪の肉に並べて焼く

「面白い技だな」
不意に背後から声が掛かる 気配に気付いていたが あの距離から指弾の小石が見えていた事に驚く

「食うか?」百姓の姿をした男に興味を持ち 猪の肉を勧めてみる

「いいのか? 美味そうな匂いに惹かれて来て正解だ」
歳の頃は、ルイと変わらぬ20歳過ぎといったところだろうか 背丈は高く、人相は悪いが
子供のように笑う顔が印象的だ 猪の肉を一串差し出す さらに指弾でもう一匹の魚を仕留め 串に刺し炙る

「すごい技だな! 教えてくれないか!?」肉を齧りながら 身を乗り出し聞いてくる

「親指で小石を弾いているだけだぞ お前 名前は?」ルイが他人に興味を持つなど珍しい事である

「小太郎! 風魔小太郎だ お前は?」親指で小石を弾き指弾を真似てみる

「ルイだ なぜ百姓の格好をしている?」

「目立たないためだな お前もだろ?」徐々に距離を伸ばしていく小石

「お前 面白いな しかも強いだろう?」焼けた魚の串を差し出してやる

「強いけど、お前には勝てないな 逃げることもできないだろ?」魚を受け取り(かじ)りつく

「親指を鍛えろ そして風の流れを読むんだ」強化なしで川面に撃ち込んで見せる

「美味かった! ありがとう」
同じように川面に撃ち込むが手前の河原で弾かれる 悔しそうに舌打ちをして

「練習するよ」と言いながら去っていく



「風魔小太郎か 面白いやつだな」

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