第140話 いざ!新岐阜城へ

文字数 3,071文字

その場にへたり込み、飛び立ったフォゴとナーダを見送る
エヴァ、ブルート、ルイ

「ここから東西南北に500kmと言うと、南北は越中、駿河のすべて。。。東西が武蔵国、摂津国の先までか。。。この国の中心地全てという事だな」
虚ろな目で空を見上げ、雲を睨む ブルート 

「その地域のすべての領主に範囲外へ避難をするように伝えなければなりませんね
ルイお願いできますか?」
玉龍に(すが)るように立ち上がるエヴァ

「ああ 任せておけ それはそうと、ネボアはどこに捕らえているんだ?」

「えっ!? ネボアでしたら満腹丸君のお腹の中ですよ」

「満腹丸。。。どんどん人間から離れていくな。。。そんなの食べて大丈夫なのか?」

「今は、繭の中でネボアを消化しているそうです 数日は掛かると思うのですが。。。
彼らはなぜ2日後なのでしょう? たんにこの瘴気の雲の成長に必要な時間なのか
それとも彼等も魔力に不安があったのか?」

「どちらにせよ、今のままでは、あのバハムート達に勝てる道筋が見えない まずは
出来る事をしよう」

「そうですね、まずは全員が魔力を回復しなければ、何も出来ませんね」
瘴気の雲を避けるように、低空を音速に近い速度で急降下してくる 隼
ルイの頭上で翼を広げ滞空すると、ルイの差し出した腕に停まる

「そう言えば、お前に名を付ける約束がまだだったな。。。う〜ん。。。」

「“サンダー”はどうでしょう?」

「ギルド長の名前じゃないか!?ハッハッハいいな、それにしよう 今日からお前は
“サンダー”だからな すまないが、今日は働いてもらうぞ」
クゥ〜ンと鼻先をルイに擦り寄せる サンダー

沈痛な面持ちで、魔力切れで倒れていた井伊直政をルイが抱き上げ練兵場へと降りていく

「天女様〜みんな〜!!無事だったのですね!?茶々達も頑張ったんですが。。。
ドームを壊されてごめんなさい」

「謝らないで下さい 貴方達みんな、本当に頑張ってくれました 心から貴方達を誇りに思いますよ 本当にありがとう」
天武の子供達を抱き寄せる エヴァ 
緊張の糸が切れたのか、その場に座り込み涙ぐむ 天武の面々

「天女様、おかえりなさいご無事で何よりです 直政君は大丈夫ですか?」
おりんが駆け寄ってくる

「魔力切れで気を失っただけです しばらくしたら気がつくでしょう」
ことの成り行きを、事細かに説明をする エヴァ
全員が真剣に耳を傾け、重たい空気が練兵場を支配する

「お玉様が言われていたように、あの竜バハムートは規格外の魔獣だったのですね
まずは、みなさんの魔力を回復しなければ、何も出来ませんね手が空いている人達で食事の支度をしますね」
努めて気丈に振る舞う お雪

「わしら羽柴組は、地上の補修に取り掛かります! 2日もあれば、これまで以上に
丈夫な床面に仕上げてみせましょう!!」

「そうですね 私達が今出来る事は、魔力を回復回復させることですね 羽柴組のみなさんお願いします 
ところで満腹丸君の様子はどうですか?」

「お兄ちゃん、繭の中に籠もって話しかけても返事もしてくれないのですが
ベラもフロー大丈夫だって言ってくれているから 大丈夫です! 
でも。。。もしネボアを返したら、お兄ちゃんが呪いで死んじゃう?」

「茶々ちゃん、大丈夫です満腹丸君は絶対に死なせませんよ」


春日山城 上杉謙信居室
「お館様、天女様から文が届いております」

「ほう、寄こせ」
隼の足に結ばれていた小さな文を広げ、目を落とす

「2日後に火竜共との決戦があり、この地まで被害が及ぶ可能性があるので2日以内に
北方へと出来るだけ遠く逃げろだと。。。伊達家、最上家にも話を通してあるので
出来るだけ多くの領民を連れて行けと言う事だ」

「そのような小さな紙にそれほどの報せが書かれているのですか?」
紙片を覗き込むが、小さな点々が羅列されているだけである

「うん? なぜ読めるんだ? まぁそれは良い、火竜共との戦い見逃すわけにはいかんな! 
ありったけの米と酒を持て! 陣中見舞いだ!!」

「景勝 お前は、主だった者を連れて避難するように 市中、すべての集落の領民にも
触れを出せ 強制ではないが、命の惜しい者は北の伊達家か毛利家を頼れとな」

「そんなっ!拙者も義父上と共に、天女様の元へ行きとう御座います!!」

「まぁ〜そう言うな 天女殿達が負けるとは思わぬが、万が一と言うこともある
もっとも天女殿達が負ければ、この国の何処にも逃げ場など無いがな。。。
そうなったら1日でも長く上杉家を存続させるのが、お前の仕事だ」

「拙者も火竜を見てみたかった。。。天女様にもお会いしたかった。。。」
しゅんっと肩を落とす 上杉景勝

「そうだな 火竜に勝ったら鱗の1つも、土産に貰えるように天女殿に頼んでみよう
楽しみじゃのう」
50名ほどの従者を連れ、早朝に出立するために忙しなく旅支度を始める上杉謙信の
後ろ姿は、その背中から抑えきれない高揚が滲み出ていた



京の都 下鴨神社 葵生殿

「お館様!天女様より文が届きました!!」

「おおっ!久しぶりじゃのう!早速読んでくれ」

「では失礼して“お館様、要件だけ伝えます 今より2日後の夕刻に火竜達との決戦となり 
京の都まで被害が及ぶ事が予想されます 毛利を頼り、すぐにでも避難して下さい 
朝廷にもそのようにお伝え下さい”と書いてありますが。。。
天女様が、このように言われるのは、初めての事で御座いますな よほど厳しい戦いに
なるということでしょう」

「そうであろうな。。。幸隆、誰か2,3人市中の菓子屋に行かせて 天女殿の好物の
羊羹だの餅だのを買いに行かせてくれ お前は、内裏へ行ってこの事を伝えよ
避難するかどうかは朝廷の判断じゃな わしは早朝に岐阜城へ立つぞ」

「お供いたします 孫たちを戦わせて、老い先短い爺が逃げるわけにもいきますまい」

「ふっはっはっはっは 孫が見たいだけじゃろう! 民たちはどうする?」
豪快に笑う 武田信玄

「一応触れは出しますが、あの火竜と天女様達が戦っている時に、京を捨て逃げる民は
居りますまい」


岡崎城 徳川信康 居室
「この文が誠であれば、毛利家を頼るにしましても、安芸の国まで2日となりますと
すぐにでも出立せねば間に合いませんな」

「岐阜城では、僕と年端も変わらぬ 織田家の嫡男や浅井、伊達、北条、真田の嫡男に
将軍·武田信玄の孫まで戦っているのだぞ 僕を笑い者にしたいのか?」

「信康様は、徳川家の跡取り たとえ少しでも危険とわかっている場所に行かせるわけには参りません
徳川家からは井伊直政も本多忠勝も出向させており大層な活躍だと聞き及んでおります 
誰も徳川家を笑い者にする者などおりませぬ」
早口で弁明する 榊原康政

「僕が天武に入りたいと言った時も反対したよね?」

「当然に御座います 信康様が、最前線で戦うなど言語道断で御座います」

「康政、仮に徳川家が再興したとして、誰が戦わずに引き篭もっている主君に付いてくると言うのだ! 
僕が行った所でできることなど何も無いかもしれない、それでもこの国の領主として、一人の男としてこの国の行く先を決めるであろう戦いを見ておかねばならぬのだ!! 異論は認めぬ。。。わかってくれ 康政」

「。。。。。。。殿、それがしがお供いたします」


隼サンダーの驚異的な移動速度で日付の変わる前に、ルイがアンテナを設置した範囲内すべての城に文を届け、毛利、最上、上杉へは避難民を受け入れる要請の文まで届け終わる
2日後にいよいよこの国の未来を左右する事になる戦いが始まると、国中が色めき立つことになり、天女達との縁のある者達が陣中見舞いと称し、旅支度を始めるのであった 


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