第69話  殺界

文字数 3,792文字

鳴海城 
長かった梅雨も明け、エヴァ達4人にとって初めての茹だるような暑さの夏を迎える

「この国の四季ってのは、極端すぎるだろ。。。冬の寒さと、夏の暑さの差が異常だろ」

「同じ土地にいても、季節によっての様々な側面を楽しめると思えば、風流ですよ」
水を張り、山のように氷を入れた、たらいに足を浸しながらエヴァが微笑む

「見てみろエヴァ この炎天下の中、俺もアランも子供達も体術の修練に汗を流しているんだぞ! 
そんな所で涼んでいて恥ずかしくないのか?」

「ルイ。。。どうやら私は、暑さに弱いようなのです せっかく幸村君が氷を出してくれたのに
その好意を無駄にする訳にもいきませんし。。。」
耳が痛くなるほどの蝉の声に顔をしかめる エヴァ

「まぁいい これから6人対6人の試合をするから審判を頼むな」

「試合? なんの試合でしょう?? ここから動きたくないんですけど。。。」

[白組]
ルイ
お雪
浅井茶々
武田信勝
大谷屋千代
井伊直政

[赤組]
アラン
真田幸村
伊達政宗
浅井満腹丸
北条氏直
織田信忠

「それでは、第一回天賦蹴鞠大会を開催するぞ!!勝者には、俺が隠し持っている最後のバナナを進呈する」

「「「「「「「おおおおおぉぉぉバナナ!!!!!!」」」」」」」

「待ちなさい!!! ル〜イ!!!! バナナとはどういう事ですか〜!!!!!!」
絶叫するエヴァに、聞こえないふりをする ルイ

「よく聞いておけよ これが(ボール)だ、この鞠を相手陣営の、あそこに見えている木枠(ゴール)
[幅7m高さ2·5m]の中により多く入れた方の勝ちだ 手を使っていいのは、あの木枠を守る護人(キーパー)1人だけで、残りの5人は足と頭だけで鞠をあの木枠に入れたら得点だぞ
時間は、前半30分·休憩10分·後半30分な、じゃあ、それぞれ戦術を決めたら始めよう」

「白組は、こっちに集まれ まず護人は、俺がやる お雪ちゃんと信勝が攻め手で、ひたすらに相手の木枠に鞠を蹴り込め 茶々と千代と直政は守り手だぞ、こっちの木枠に鞠を入れられないように守るんだ! 鞠を奪い取ったら、すぐさま前に居るお雪ちゃんか信勝に渡すんだ いいな!」

「ルイ 魔法は使っていいんだよね?」

「ああ魔法もスキルも使っていいけど 魔力切れで倒れるのは、やめてくれよ」


その頃、赤組は。。。
「木枠は。。。僕が。。。護人。。。」

「「「「「はい アラン先生!!。。。。。戦術は??」」」」」

「幸村。。。政宗。。。信忠。。。が前。。。満腹丸。。。氏直。。。が後ろ」

「前? 後ろ?」
幸村の耳元に顔を近づけ、何やら耳打ちをするアラン

「ああ なるほど、前というのは、攻め手で、後ろは守り手だそうです 私と、政宗君、信忠君で相手の木枠に鞠を入れ 満腹丸君、氏直君、アラン先生で木枠を守るという事だそうです」
うんうんと首を縦に振る アラン

「よ〜し 始めるぞ エヴァ合図をしてくれ!」
ピィーーーーと草笛を吹きながら、鞠を投げ入れる エヴァ
その鞠にいち早く追いついた 真田幸村が右足を振り上げ白組の木枠を狙う

「痛っーーーー」井伊直政の石化魔法で重くなった鞠につまずき転がる 幸村

「なるほど、魔法も有りなんだな!」
石化を解いた直政が、前方のお雪に鞠を蹴り渡す その鞠を胸で止め 落ちてきた所を
強化した右足で木枠の右上に蹴り入れる! アランが横に飛び上がり左手一本で掴み取り
すかさず浅井満腹丸へと投げ渡す 鞠を獲ろうと足を伸ばした瞬間 大谷屋千代の風魔法が鞠の軌道を変え
武田信勝の足元に鞠が転がるが 伊達政宗の土魔法が信勝の行く手を阻む
織田信忠により旋風が吹き荒れ そこかしこに浅井茶々の雷魔法が乱れ落ち
満腹丸の土魔法と武田信勝の火炎魔法が、ぶつかり合い火柱が上がる
そのすべてを飲み込もうと真田幸村の水魔法が高波を創り出し、津波となって押し寄せる
前半終了の草笛に気づく者も、鞠の所在に気づく者も居らず 広場内が地獄絵図とかしていく中 
ずぶ濡れとなったお雪の胸元に見惚れていたルイの横を鞠がコロコロと転がり
(ゴールネット)を揺らす。。。

「赤組1点!!!」 「「「「「おおおおおぉぉぉ!!!!!」」」」」木霊する歓声

「なにやら、大変な騒ぎになっているな ほ〜殺界(サッカー)とは懐かしいな」
自室で研究に没頭していたブルートが顔を出す

「ブルート良いところに来ました 残り時間も僅かですが、貴方は白組に私は赤組に入れてもらいましょう!」

「そうだな新術を試すのに丁度よいか」

「私が赤組!ブルートが白組に入りま〜す バナナを忘れないで下さいよルイ!!」
 中央からブルートが蹴り出した鞠の前方の空間が歪み 鞠が吸い込まれる
全員がキョトンッとしているとアランの後方の空間が歪み 鞠が現れ出て網を揺らす

「白組に1点!!!! 同点です!!!!!」 「「「「おお!!!????」」」」

「ふむ 時空魔法で空間を歪めてみたが、使えそうだな」

「そんなバナナ。。。」
あ然とするエヴァにより、この世界にバナナを使った駄洒落が生まれた瞬間である

そして終了間際、さらなる地獄絵図と化した広場内で
とことこと千代がアランに近づいて行き
「アラン様 千代は怖いです。。。」その瞳に涙さえ浮かべる 千代
アランが慰めようとその手を千代の頭に伸ばした瞬間
千代の空間収納に隠し入れていた鞠が転がり落ち 網を揺らす
「アラン様 バナナ半分あげますからね!」

ピィーーーーーーー 「終了です 白組の勝ち!!!!」
「「「「「「おおおおおぉぉぉ!!! バナナ!!!!!!!」」」」」」

ぐったりと倒れ落ちるエヴァ


そして翌日
天武の全員に魔法の種の植え付けも無事に終わり それぞれが4大属性の内1つ、または4つすべてをを取得した者もいる
魔法を行使するための“魔力感知” “魔力循環”は気を練る修練のおかげで、全員がすぐに習得し“魔力操作”が日々の修練に加わった
魔法の授業に魔力操作の修練は、もっとも魔法に対して造詣の深い 
ブルートが時間の許す限り担当することになる


鳴海城 北曲輪 山組教室 そんなブルートの授業風景
「午後からの魔力操作の実践に備え、魔法の基礎を学んでもらう 出来るだけ解りやすく説明するが
解らないことがあれば聞いてくれ 全員が4大属性である、火水土風のいずれか、あるいは、武田信勝のように2つ、さらに井伊直政のように4つすべての属性を持つ者もいる これは決して複数持っている方が優れている訳では無いから勘違いをしないように
個人が行使できる魔法の特性というのは千差万別で基本的には、4大属性とこれから皆が、召喚する精霊魔法の組み合わせになる」

「つまり4大属性だけでは出来ない事が、精霊魔法との組み合わせによって出来るようになるという事ですね?」織田信忠が手を上げて質問する

「簡単に言うと、そういう事だな 例えば殺界(サッカー)で直政が使った石化魔法は、4大属性の土と火の組み合わせで行使できるのだが、石の精霊を持つ者も行使できるようになるし、火属性に石の精霊の組み合わせで極めると究極魔法·彗星爆砕(メテオ·ストライク)が使えるようになるかもしれない。。。というように個人によって行使できる魔法は、まったく違うという事だな 
では午後の実践授業でやる4大属性の魔力操作を説明する·················」
全員が熱心に耳を傾け、魔法の授業の終わりを告げる鐘がなる


鳴海城南 天白川辺り
城外へ出て、天白川の河原で午後の授業となる
「では、魔力操作の基礎からやっていこうか まずは、それぞれの属性の“矢“を正確に放つ修練からだ やってみるからよく見ておくように」
天白川の上流から、小さな紙製の船が流れてくる 河原から20mほどの距離でブルートが手の平を向け、赤い魔力が手の平に集まり矢の形を作ると、一切の反動もなく船に向かい飛翔する ぼっ!と音を立てて紙の船が燃え上がり沈んでいく
「これが“火矢”だな それぞれの属性で、土矢·風矢·水矢となるわけだ 皆ならすぐできると思うぞ」
ブルートがそう言うと、上流から20を超える船が放たれる
動く小さな的に正確に矢を当てることに悪戦苦闘する子供達 1時間ほどが経過し
全員が船を沈める事に慣れてくると、徐々に向こう岸へと距離を伸ばしていく

「今日は、この辺で終わるか この矢というのは、遠距離を攻撃できるが威力は、さほど高くない 
この威力を上げるには魔力量を底上げするか、魔力の質を上げるかだな
明日からもここで授業となる、火矢、火球、火盾、火槍、火壁の順に実践練習していく 
じゃあ また明日な」

「「「「「「「「「ありがとうございました!!」」」」」」」」」

「お疲れ様、ブルート 子供達の魔力操作は、どうですか?」

「ああエヴァか、俺達の子供の頃より、遥かに優秀だな 末恐ろしいほどだ。。。」

「先生が良いせいですね」

「全員が自分の身を守れる壁を作れるようになるまで、それほど時間が掛からないかもしれないな」

「明後日には、また京に向かわねばなりません 予定通り明日に【精霊降臨の儀】を行なって良いですね?」

「ああ エヴァにしか出来ないからな 明日にしよう」

翌日の天女堂
“汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ 誓いを此処に。 我は常世総ての善と成る者、 我は常世総ての悪を挫く者。 万物に宿りし神々、 抑止の輪より放たれ、この常世に顕現されよ―――! “

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み