第48話 アラン覚醒

文字数 3,170文字

ほどなくして、内裏を後にする3人
「宮中の皆さんは、毎日あのような物を頂いているのですかね? お上品で薄味でなんとも物足りないです
ほうとうのようにガツンッとくるお味が好みでおじゃる ふっふっふ」何故か上機嫌なエヴァ

ー『帝に何をお願いしたのじゃろう。。。?』ー
聞きたいが、怖くて聞けない2人であった

「それでは拙者は、一度浅井邸に戻ります お市と義兄の捜索に出る約束をしておりますゆえ」

「ふむ そうか見つかると良いが。。。しばらくは、下加茂神社に世話になるつもりじゃ
今後の事を話し合わねばならぬ 夕刻にでも来てくれ」

「はっ では、後ほど」

「 長政殿、残念ながら 信長殿は亡くなられております  私の気配 探知に反応がありませんので」

「天女様  それは、私も解っておるのですが。。。お市の気のすむまで、付き合ってやろうかと」

「長政殿。。。貴方は、素敵な殿方ですね」
信玄の警護に待機していた本多忠勝が崩れ落ちる、強化した聴力が仇となった

「忠勝殿、鴨川で赤子を救われたそうですね とても誇らしいです 素敵ですよ」

「はい 天女様、この京の町で無駄な、人死は出しませぬ」一瞬で立ち直った 本多忠勝が胸を張る

ベヒーモスの襲撃から1日経った京の町
戦火に慣れた民が多いとはいえ 初めて見る圧倒的な破壊の象徴に心にトラウマを負ったであろう
者達も少なくない そのような中、傷ついた者達を天女の奇跡で癒やし 
焼け出された者たちに食料を与え、市中の治安維持にと見廻りの者達を組織した 
武田、浅井の両軍は京の民に非常に好意的に受け入れられている

下加茂神社
京の町の見廻りや、生存者の捜索、焼け出された者たちへの炊き出し、瓦礫の撤去等に1000人以上居る武田軍のほとんどがかり出され 静かになった境内に武田信玄と真田幸隆が並んで歩く

「まだ断定は出来ぬが、義昭公に細川藤孝、織田信長、織田の主だった家臣の生存は絶望的なようじゃ
馬場、山県がまだ戻らぬからわからぬが 岐阜城の生き残りが、どれほど居るのか? 
嫡男·信忠の行方も探さねばならぬのう」

「すぐに手配いたしましょう 帝との話は、どのような件で? おおよその見当はつきますが」

「ふむ 京の守護に浅井長政が就く正三位 大納言じゃ」

「おお!!それは、予想を上回る大出世にございますな、となりますとお館様は、ついに。。。」

「ふむ 日の本の守護じゃ! 征夷大将軍に源氏長者、正二位だそうだ ふっはっはっは」

「それこそ、前例がないほどの大出世 ついに幕府を興せまするな。。。この幸隆、長生きしたことを
これほど感謝したことは、ありませぬ」
普段冷静な男が興奮して捲し立てる

「それだけ、火竜が脅威ということであろう 一息で朝廷も幕府も消えて無くなるところであったからのう。。。 なんか、天女殿が絡んでいる気がするんじゃがのう。。。」

「都がこのような状態では、宴も出来ませぬが 今夜は、飲み明かしましょうぞ 天女様には、内緒で」

「躑躅ヶ崎館(つつじがさきやかた)に帰りたいのう皆を、喜ばせたいのう。。。
まだしばらくは、帰れそうにもないのう あの火竜を退治せんことには、幕府を興すことも叶わぬからな」


鳴海城 
医療棟の一室に寝かされているアラン
規則的な寝息を立て、なにかの夢でも見ているのだろうか。。。
時折、額に皺を寄せ息苦しそうに唸る なにかを掴もうとしているのか、引き寄せようとしているのか
右手を上げ中空を彷徨わせる、その手を優しく両手で包み込み
僅かな異変も見逃すまいと、注意深く観察をする
アランの(まぶた)がぴくっと動き 静かに開いていく

「おはようございます アランさん」
いたわるように、優しく話しかける 焦点が合わないのか、2度3度と瞬きを繰り返し
お雪の顔を見上げ 微笑んだ気がした

「アランさん やっと会えましたね どこか具合の悪いところは無いですか?」
両手を静かに持ち上げ、自分の手の平を見つめ、握る開くを繰り返し お雪の顔を見て首を横に振る

「ちょっと待ていて下さいね すぐに戻ります」
扉を開き、廊下を駆け出すお雪
練兵所で修練中の真田昌幸、諏訪勝頼等の元に駆け寄り「アランさんが目覚めました!!」


「アランさん 私は、お雪と言います 天女様にアランさんのお世話を任されました」

「あ。。。あ。。 エヴァ。。。匂い」

「本当ですか!? 嬉しいです ふっふっふ」自分の襟元の匂いを嗅いで ニヤつくお雪

「エヴァ。。。どこに?。。。」

「ベヒーモスが現れたと、京の都に行っています」

「€¥№§&。。。!?

「どうですか? 起きれそうですか?」
2度、3度と頭を振り 上体を起こす

「ああ。。。大丈夫。。。」
自分の体を見下ろし 着ている作務衣の襟を不思議そうに引っ張る

「天女様が用意された服ですよ アランさんに似合うだろうって 本当によく似合っています」
アランの頬が赤く染まった気がした

「じゃあ 城内を案内して みんなにも紹介しますね」

「ここが、食堂です 天女様が大型の冷凍·冷蔵庫を備えて下さったので、24時間好きな物を頂けるんですよ お腹は、空いていませんか?」
お腹に手を遣りながら、首を傾げる アラン

「じゃあ お茶とお団子でも頂きましうか?」

「お雪殿 そちらが、天女様のお仲間のアラン殿ですか?」

「はい 先ほど、ようやく気が付かれたんですよ」

「お初にお目にかかります 羽柴秀吉と申します」

「羽柴秀長と申します 天女様には、この上ないほどのお世話になっております」
照れ臭そうに、頭を掻きながら 軽く頷く アラン 

「アランさん こちらのお二人が、ここ鳴海城の管理をされているんですよ
困った事があったら、何でも相談されたら良いです」

「はっはっは ただの雑用係ですが なんでもお困りの時は、言ってください」

「はい。。。ありがとう。。。これ。。。うまい。。。」
6本目の団子を口に運びながら 空になった皿を寂しそうに見つめる アラン


「ここが練兵場で隣が弓道場です この国で一番の規模の道場です」

「アラン殿ですな! 真田昌幸と申します 天女様には、お世話になっております」
木刀を持ちながら、深く頭を下げる 昌幸

「こちらの昌幸殿は、天女様の勉学の先生なんですよ 私もたまに勉強会に参加させて頂くのですが 
とても解りやすく教えてくださるんです アランさんも教えて頂くと良いですよ」

「お恥ずかしい 祖父や父から教えられた事を、そのまま伝えているだけです」

「おお〜貴方が、アラン殿ですな 拙者は諏訪勝頼と申します よろしくお願いします
アラン殿は、天女様やルイの長と聞いております お強いのでしょうな〜
体調が戻られましたら 是非とも一手ご教授のほど願います」
勝頼の背に隠れながら 顔だけ出す 服部半蔵

「服部半蔵です。。。私とも。。。是非。。。」何か親近感を覚える 半蔵

「アランです。。。よろしく。。。エヴァもルイも。。。良い仲間に。。。」
目頭を熱くする アラン

「エヴァに。。。会いに。。。行かなくては。。。」

「天女様には、アランさんの体調が戻れば 京に案内するように言われていますが。。」
鍛錬用の100Kgの錘を軽々と片手で持ち上げる アラン

「明日にでも京に出立しますか。。。?」


御嶽山の麓を京に向い、ひた走るルイと妖狐 
昼間だというのに、どんよりとした重い靄(もや)が辺り一帯に立ち込める

《気がついているかい?》

「鳥一匹飛んでいないな。。。野生の動物の気配も無い」

《そりゃあ、これだけの瘴気を撒き散らしていたらね。。。卵を産んでいるよ》

「わかるのか!? ベヒーモスも中に居るのか??」

《火竜も居るね、その近くに小さな鼓動を3つ感じる。。。まだ卵からは孵っていないようだけどね》

「そうか。。。覚悟はしていたが、早急に手を打たないといけないな」

《明日には、京に帰るよ 急ぎな!!》

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