第20話 出陣

文字数 3,458文字

「沓掛城から、1000人ほどが鳴海城に向かっているな そのうち兵士は、700ってところか」

「またトンビの目を借りているのか?」山県昌景がルイに問い掛ける

「うん? 今回は、鷹だな より高高度で視野も広い」

「これで、鳴海城には、25000の戦力ということか。。。
ここから、すぐに動かせる戦力は、13000 戦力差が有りすぎて向こうも すぐに動くとは思っていまい」
真田幸隆が集まった面々を見渡し 意味ありげに笑みを浮かべる

「ふむ 予定通り明日の早朝に出陣じゃ」
武田信玄の一言に全員が背筋を伸ばす

真田幸隆が、前に出て明日の進軍先を発表する

山県昌景、馬場信春2000を率いて 沓掛城(くつかけ)
榊原康政、本多忠勝2000を率いて 同じく沓掛城
なお沓掛城は、我らの進軍を予想してすでに空城となっている模様です
その場合は、専有して頂く事になります

続いて それがし真田幸隆、諏訪勝頼3000を率いて 緒川城
徳川信康、酒井忠次2000を率いて 同じく緒川城
山角殿の北条よりの援軍2000も緒川城へお願いします
なお緒川城は、水野信元殿より自由に使って良いと 
我が方に助力をするとの言を頂いております
これも信康様と天女様の調略の成果になります

残り4000は岡崎城にて守備となります
守備隊長は、真田昌幸、服部半蔵となります

なお天女様は、沓掛城 ルイ殿は、緒川城にご同行くださります
それぞれ準備の方 抜かりなく願います

            〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

渡り廊下で真田幸隆に呼び止められるルイ

「ルイ殿 近況を各城主に報せたいのですが、伝書鳩でお願いしても宜しいでしょうか?」

「ああ もちろん! 苦労したからな使われなかったら報われない」

「こちらに同じ内容の文が62通あります それとこれが、小谷城、石山本願寺、一乗谷城宛になりますので
宜しくお願いします」

「うん いいぞ任せてくれ」 伝書鳩初出動に少し嬉しそうな ルイ

「ルイ殿 少し話をさせて頂いても?」

「なんの話だ?」

「いえ たいした話では無いのですが なぜここまで天女様とルイ殿が我が武田にご助力をいただけるのか
お館様の命まで救って頂き その理由が気になりまして」

「う〜ん 俺は、裸で放り出されたこの地で助けてもらったからな みんなの事も気に入ったし
助けられたから、助けるだけだけど あとエヴァ。。。いや天女様の指示だからな」

「天女様の? 天女様は、何故?」

「天女様は、いずれ自分の世界に帰るまで 武田をこの国で1番の勢力にして平定させるのが自分の為にも
俺の為にも、まだ見つかっていない仲間の為にも、最良とか言っていたな」

「それを聞いて安心しました 歳を取ると色々と心配性になりまして」

「まだまだ長生きすると思うぞ 本当なら、もうじき寿命だったけどな 天使様の奇跡の術に立ち会ったろ?
あの時についでに治療しといたって天女様が言ってたぞ」

「本多殿の死に戻りの義? 確かにあれ以降、体調がすこぶる良いのですが。。。そんな事が、感謝してもしきれませんな」

「まぁ 気にしなくってもいいと思うぞ 天女様もみんなの事を気に入ってるからな」

「ありがたい事です それと単刀直入に聞きますが この戦は、勝てますでしょうか?」

「勝てるさ 俺と天女様がいて負ける方が難しいだろ?」得意気に胸を張る 

「出陣前夜だというのに、初めて熟睡できそうです 足止めしてしまい申し訳ない」



翌朝 日の出とともに、各々が指定された城に向け出立していく

「徳本先生は、岡崎城でお留守番をされていたほうが 良かったのでは?」エヴァが意地悪く笑う

「何をおっしゃいます 天女様の旅路のお供は、この徳本と決まっております それより本多殿 お主の部隊は、ずいぶん後ろの方に居るようじゃが? 手綱はわしに任されよ」

「いえ 天女様の手綱を他の者に任せることなど この忠勝 絶対に出来ません!」
手綱を握る手に力を込める

「その手綱は、三方ヶ原よりのわしの仕事じゃ! わしに任せて後ろに下がっておれ!」

「大人気がありませんぞ 徳本先生 この【蜻蛉切り】が黙っておりませんぞ!」

「お主のほうが、よっぽど大人気ないわ!! じゃあ〜わし天女様と一緒に騎乗するかのう。。。なんか疲れたし」 だらしなく鼻の下を伸ばす 徳本  鬼の形相で徳本の後ろに立つ 本多忠勝

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鳴海城 二の丸 羽柴秀吉、秀長兄弟が与えられた部屋にて遅い昼食をとっている

「兄者、やはり水野信元は裏切りましたな」

「徳川の縁者が多すぎる故な。。。家康殿の生母がいて伯父が城主ではのう 殿の予想通りってこっちゃ」

「先ほど沓掛城より築田政綱殿が到着されたようですな」

「佐久間信盛殿も頭の痛い事だろうに、この城下に25,000は多すぎるじゃろ さっさと攻めてもらわないと
兵糧だけでもえらいこっちゃのう」

「斥候の報せでは、沓掛城に4000 緒川城に7000が向かっていると言う事ですが 少なすぎますな。。。
それと面白い噂を聞きました」 箸を止め 秀吉の顔を伺う 秀長

「天女と龍神殺しじゃろ?」

「さすが耳が早い なんでも武田信玄の病を治したとか 三方ヶ原の負傷者をすべて治療したとか
500人を30分ほどで殲滅したとか 本当ならば是非とも会ってみたいものですな」

「驚くほど美しい巫女が居るのは、本当のようじゃ それが天女様などと呼ばれておるのじゃろ。。。
さっさと食え 築田政綱を迎えて軍議じゃ」


鳴海城 本丸 佐久間信盛私室

「先ほど殿より早馬にて報せが届きました」佐久間信盛が信長の花押の入った文を広げる

「どのような内容じゃ?」読み書きが心許ない秀吉が小声で弟の秀長に聞く

「水野信元の居る、刈谷城を攻めよと言うことですな」
秀長が一同を見渡しながら口を開く

「岐阜も手薄になっている故 早々に決着をつけて浅井、朝倉に備えよと言うことでしょう」
佐久間信盛が少しホッとしたように見解を述べる

「我らも戦支度は整っております 一晩休ませていただければ 明日にでも出れますぞ」
先ほど到着したばかりの築田政綱にそのように言われては、反論する者は居ない

「さすが、桶狭間の功労者ですな 頼もしい限りです この秀吉 築田殿を差し置いて 総大将を仰せつかっておりますが お力をお貸しください」 羽柴秀吉が、恭しく頭を下げる

「信長様には、色々と気遣って頂いております いったん沓掛城を捨て こちらで合流した後 改めて取り返せと言う事でしょうな 寡兵ですが、何なりと申してくだされ」

「では、明朝の出陣でよろしいですな」 佐久間信盛が、この場を閉める



沓掛城城下
「ご丁寧に堀に架かった橋を、すべて落として鳴海城へ向かったようですな」
山県昌景が呆れたように笑う

「ここでいったん腹ごしらえをして、予定通り鳴海城へ向かいますか」
榊原康政もつられて笑みを浮かべる

「ここを素通りして、鳴海城を攻めるとは、さすがに思わんじゃろう がっはっはっはっは!!」
心から楽しそうに大笑いする 馬場信春

「ここからの動きを敵に悟られるわけにまいりません 怪しい者は、全て捕らえますよ」
エヴァが本多忠勝に向かって頷く

「はっ 心得ております」

「では、食事にしましょう お腹が空きました」
簡易な陣を張り大鍋にてほうとうが炊かれる エヴァの要望でエヴァ専用小荷駄隊が用意されていた
木陰に腰を下ろす エヴァ 本多忠勝 徳本 

「徳本先生 もう一杯 頂きたいのですが。。。」
エヴァが徳本に器を差し出し 上目遣いに微笑む 器を受け取り、足取りも軽く徳本が陣までおかわりを取りに行くと 本多忠勝の方へ向き直り

「忠勝殿 貴方に新たな加護を与えます」

「はっ ありがたき幸せ」箸を置き 片膝になり頭を下げる

杖を掲げ念じる 「視覚強化、聴覚強化」杖から放射される、薄青色の光に包まれる本多忠勝

「えっ?」一瞬めまいに襲われ眉間を押さえる 忠勝

「初めてですと、慣れるまでにちょっと時間がかかります 徐々に慣らしてください 少しずつ焦点を遠くに
あそこの木に止まっている鳥を見て 向こうの丘の黄色い花。。。どうです? 見えますか?」

「見えます! お〜 あの鳥の鳴き声も聞こえます!! 500メートルほどもありますのに」

「今のあなたは、2km先の人の顔も識別出来ます ただしこの加護の効果は2時間ほどで切れてしまいます その都度 掛け直しますので 絶対に織田方の斥候をすべて捕らえてくださいね!」

「はっ 命に換えましても」


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