第143話 龍虎 火花を散らす!

文字数 3,091文字

一般の兵士にとっての0,3秒という時間は、まさに瞬きほどの時間であるが
エヴァ達のような人間の理を遥かに超越した存在にとっては、10m以上の距離を詰め
命を狩る一撃を繰り出すのに十分な時間だという事になる
「そう考えると直政の時間停止は最強のスキルだよな 時の精霊ハロルか羨ましい」

「ルイ、お前の大地の精霊グラマドだって、みんなの羨望の的だったんだぞ 縮地術で
地中を潜行出来るなんてルイだけだったからな」

「こっちの世界にまでは付いて来てくれなかったからな。。。スキルも半減だろ?」

「その代わり、こっちには濃厚な魔力が溢れているからな 出来る事も随分と増えたし
ある物で戦うよりないな」

「そろそろ。。。みんなの所に。。。行こうか。。。」

「エヴァ 懐妊の事は、みんなにも言うのか?」

「そうですね。。。?どうしましょう!?なんだか恥ずかしいですね。。。」

「みんなも喜んで祝ってくれると思うぞ 暗い話題ばかりだからな エヴァさえ良ければ明るい話題を提供したらどうだろう?」


新岐阜城 地下3階 大食堂
「みんな〜 今からエヴァが、みんなに話があるそうなので、聞いてくれ!」
壇上に立ち、声を張り上げる ルイ

「ルイ。。。壇上に上がらなくても良いと思うのですが。。。」
小声でルイに耳打ちをするエヴァ

「何を言っているんだ!懐妊の報告なんか一生に一度かもしれないんだぞ!!」

「まぁ確かにそうかも知れませんが。。。」


何やら不穏な雰囲気に、固唾をのんで見守る 500数10名

「あの。。。その。。。私事なのですが。。。$%#@&*しました」
最後があまりにも小声な為に聞き取れない

「「「「「「「「天女様〜聞こえません〜〜〜!!」」」」」」」」

「あっすいません。。。あの私。。。妊娠しました。。。」

「「「「「「「「「。。。。。。。。。。。。。。」」」」」」」」」

「「「「「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」
しばらくの静寂のあと割れんばかりの喝采に包まれる、大食堂

「「「「「「「「「天女様おめでとうございます!!!」」」」」」」」」

「「「「「「「「「俺の天女様が〜おのれ本多忠勝め〜〜〜〜!!!」」」」」」」」」

「「「「「「「「「絶対に火竜を倒すぞ!!!!」」」」」」」」」

「「「「「明日は、天女様は後方で見ていて下さい 僕達が火竜を倒します!!」」」」

「「「「「「「やばい!嬉しくって涙が。。。」」」」」」」

「「「「「「「天女様の子供を見るまでは、絶対に死ねないな!!」」」」」」」

「なっ!!エヴァみんな喜んでくれるだろう」

「そうですね 言って良かったです」

「ああ みんなも戦う理由がまた増えたな 絶対に勝とうな!」

「エヴァ。。。本当に。。。おめでとう。。。」
滂沱の涙で顔をくしゃくしゃにする アラン

「アラン ありがとうございます その右手、不便ではないですか?」



その後、大食堂にて明日の戦いの段取りが説明され
魔力の回復に努めるため、もしかしたらこの国で最後になるかもしれない 
静かな夜を迎える 
明日の事を考え、不安で眠れない者も居たかもしれない
あまりの恐怖に、逃げ出したい者も居たかもしれないが
エヴァの懐妊の報せを聞き、勇気を与えられた者、改めてこの国を守るために奮起する者 
それぞれの夜が過ぎていく

翌朝は、灰色の雲に覆われ薄暗い屋外で、補強された床面の確認に出ていた ブルート
魔力の温存の為に魔法的な補強を控え 羽柴組の手による補強が今も続けられている

「羽柴殿、このくらいで十分だと思います 本当にご苦労さまでした」

「ブルート殿、わし等に出来る最高の仕事をしました!必ずこの城を守りましょう!!」

「もちろんです 誰一人死なせずに明日を迎えましょう」

北の地から、近づいてくる数騎の馬影が見える

「あの【毘】一文字の旗印は、上杉家の物ですな この時間に到着するとは、夜を徹して駆けて来たのでしょうな」


新岐阜城 最下層 練兵場
「天女殿! 久し振りであるな、酒と越後の米を山ほど持ってきたぞ 陣中見舞いだ受け取ってくれ」

「それは、ありがとうございます 上杉謙信殿自らが来られるとは。。。
なぜ高坂昌信殿までご一緒に?」

「海津城は通り道だからな、一緒に連れてきたのだが?」

「もう上杉も武田も関係ない、この国最後の大戦を見に行くぞと無理矢理に連れて来られました ご迷惑でなければよいのですが。。。」

「迷惑と言うことはないのですが、あちらにすでに馬場信春殿も山県昌景殿に内藤昌豊殿等が、明け方からどんどんと到着されまして。。。」
エヴァの指差す方を見ると、馬場信春達が楽しそうにルイ達と談笑しているのが見える

「あいつ等、お館様の許可など取っていないのだろうな。。。拙者もだが。。。」

「良いではないか、どうせこの戦いで負けたら守る国など無くなるのだ 最後に天女殿の顔を見て死にたいと思うのはみんな一緒だ それはそうと本多忠勝殿は、どこに居るのだ?」

「旦那様は、尊天の加護を得るために京の鞍馬寺に。。。」
寂しそうに目を伏せる エヴァ

「尊天と言うと、毘沙門天と千手観音と護法魔王尊の三位一体の加護の事なのか!?」
身を乗り出し、喰いついてくる 上杉謙信

「はい そのように聞いていますが?」

「わしは生涯をかけて、毘沙門天の加護を授かる為に嫁も娶らず、子も作らず精進してきたのだが、忠勝殿は毘沙門天のみならず尊天の加護を授かろうとしているというのか」

「つらい修行だそうです。。。」

「いや、つらいとか苦しいとか、この世の言葉で表わせるものでは無いと思うがな
太古の昔から、唯の一人も授かった者など居ないのだからな」

「天女様 将軍·武田信玄公が到着されたようです」
おりんが、エヴァに耳打ちをする

「おりんちゃん こちらが越後の上杉謙信公です」

「あ 貴女はもしや毘沙門天の(ゆかり)の方ではないでしょうか!?」
エヴァを押しのける勢いで、一歩前に出ると、おりんの手を握る 上杉謙信

「はい 母の代から毘沙門天と千手観音の加護を授かっております」

「おおぉぉっ!!まさかこのような所で、これほど強く毘沙門天の加護を授かる方に
お会い出来るとは!!まさしく毘沙門天のお導き」


「おいっ!越後の悪童狐!!我等のおりん殿から、その手を離さぬか!!」

「ほう これはこれは、甲斐の耄碌(もうろく)狸殿ではないか 久しいのう」

「火竜の前にお主から成敗せねばならぬようだのう」

「川中島での決着を、この場でつけるのも一興よのう」

「いつまで手を握っておるのじゃ!!おりん殿から離さぬか!!」
バチッバチッと火花を散らす 越後の龍と甲斐の虎

「お館様も上杉殿もその辺で。。。子供達が見ています」
高坂昌信が仲裁に割って入る

「高坂!?なぜお前がここに居るのだ!?」

「わしが海津城より攫ってきた ほれ向こうにも大勢居るぞ?」
人影に紛れるように身を低くする、馬場信春達

「お前たちまでか〜!!天女殿の迷惑になると考えられんのか!!??」

》》》》》》》
心の中でツッコむ 一同

「「天女様!!天武のみんな久し振りじゃのう!!陣中見舞いじゃ!!」」
鳴海城から到着した 武田勝頼と山県昌満

「お前たちまでもか!!!???」

「げっ!!なぜお館様が??」
後頭部をしたたかに殴られる 勝頼
「まったくどいつもこいつも領土を留守にしおって!」

「まぁまぁお館様、我が領土に攻め入る者など居りますまい 上杉殿もここに居る事ですし みんな居ても立ってもいられなかったのでしょう 我等と同じです」

「ほう それは、どういう意味だ?真田幸隆殿」
おりんの手を、しっかり握ったまま 首だけを巡らす 上杉謙信


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