第130話 バハムート襲来!!

文字数 2,988文字

「満腹丸君の様子は、どうですか?」

「大丈夫ですよ 呪いの進行は、止めています 満腹丸君の事よりも、今は自分の心配をして下さい」

「私は、ちょっと疲れているだけです 少し休めば、大丈夫だと思うのですが。。。?」

「天女様。。。右腕の複雑骨折に肋が4本折れています、そのうちの1本は、肺を傷つけています 
さらに裂傷は数知れず ですが、私が、30分で治してみせます」
横になったエヴァの患部に右手を翳し、左手で通力を送り続ける おりん

「おりんちゃん ありがとうございます でもバハムート達が、ここまで来るまでに
おそらく10分ほどだと思います 取り敢えず動けるようにしてくれますか?」

「駄目です!死んでしまいますよ?」

「それは、困りますね。。。まだ死ぬわけには。。。」

「みんなを信じましょう!!頑張っていれば、きっとルイ達も戻って来ます」

天武の子供達が、エント·キングの動作確認を熱心に行い
数名の子供達は、なにやら技の命名で揉めているようだ
「だから!この技は風魔法で、加速させるから“風神降臨·金剛烈斬”なんだよ!!」

「氏直君、可愛くないので却下です!“エント·花の舞”でお願いします!!」

「氏直君も、茶々ちゃんも、ただの上段からの振り下ろしですから。。。」

「幸村君、こういうのは、雰囲気が大事なんだよ!」

そしてドームの内壁を巡る回廊には500名の弓の精鋭兵が狭間から上空を凝視し
最上部の強化硝子の張られた突起部分からは、羽柴秀吉が望遠鏡で東の空に目を凝らす

上体を起こせるまでに回復したエヴァが、天武の子供達を呼ぶ
「みんな、私が戦えるようになるまで、もう少し時間が掛かるようです 
それまでの時間、みんなにここを守ってもらう事になります、しかし間もなく現れる2匹のバハムートという竜は、あまりにも強大です 
決して油断しないように防御に徹すると約束して下さい それぞれの特性ですが、今わかっているのは
赤いバハムートは、火属性です 炎の上位精霊エフリートにも匹敵する火炎を操ると考えて下さい 
竜の息吹の他に覇気を使います 覇気というのは自分を中心に数10mの範囲に衝撃波を与えます 
なんとか前兆を読み取って離脱して下さい
そして黒いバハムートですが、雷属性と闇属性を持っているようなのです
息吹も覇気も雷撃などの攻撃と、全身に闇属性の覇気を纏わせ腐食魔法を使ってきます
腐食魔法というのは、遣い手の少ない希少な魔法です 私の回復魔法も効果がありません もしも腐食魔法を浴びてしまったら そこから身体の中心に向かってどんどん侵食してきますので、患部を切断するよりありません それほど危険な攻撃だと覚えておいて下さい このネボアである 夜叉を取り返しに間もなく現れるはずです くれぐれも無理はしないで下さいね」

「「「「「「はい、わかりました 天女様!!!」」」」」」

「天女様が回復する前にやっつけちゃうから 大丈夫!」

「茶々の言う通り、エント·キングと僕達でみんなを守ります!!」

治療を始める、エヴァの元を離れ地上階へと登る 一行
「じゃあ、ドーム内にいるみんなに鼓舞を掛けますね」
お雪が鼓舞を唱える

「じゃあ茶々は、全員に即死回避を掛けますね」

「えっ!? 茶々ちゃん即死回避って??

「お雪ちゃん先生、ベラとフローが、全員に即死回避を掛けなさいって。。。即死回避ってなんでしょう?」

「たぶん一撃で死ぬような傷を受けても、死なないという事かな?」

「良さそうですね、じゃあみんなに“即死回避”を、ベラ、フローお願いします」

回廊の最上端で、鐘を打ち鳴らす 羽柴秀吉
「東の空が真っ赤に染まっているぞ〜」

東の天が紅に染まる
遠距離より、赤いバハムートが放った息吹が、新岐阜城ドームに長い尾を引き襲い掛かる
「炎の攻撃が来るぞ!! 狭間の扉を閉めるのじゃあ!!」
“カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!”
羽柴秀吉が叫び、鐘を打ち鳴らす

「もう来ましたか。。。思ったよりも早かったですね 治療を急ぎますね」

「おりんちゃん無理をしないで下さいね 満腹丸君を診てもらって、私の治療だけでなく通力まで頂いて。。。大丈夫ですか?」

「今、無理をしないで、いつするのですか?? 無事に事が済んだら ご褒美を期待していますから」
怪しく笑う おりん

「はい 私で出来る事でしたら。。。」
同時に治療室の天井を見上げる エヴァとおりん

“ドォォォォォォーーーーーン” という炸裂音と衝撃にドームが揺れる
損傷は見当たらない 屋外では、盾に身を隠していたエント·キングがドーム内の天武の子供達と共有した
視界で東の空を見上げ 視線を下ろしエント·キングの損傷を確かめる
鉄の精霊フェローの装甲の下を流れる 氷の精霊フラウの冷却氷が本体である木人を守り
遠距離からの息吹には、十分な耐久性を持つ事を証明してみせる
“ブッシューーーッ!!” 各関節から白い冷気を吹き出しながら ゆっくりと立ち上がる

「エント·キング初陣だっ!!」武田信勝が掛け声を上げる

「「「「「おおおぉぉぉっ!!!!」」」」」 ネボアを抑えつけている 
幸村以外の5人が、手を握り輪になって、やや顎を上げ、まるでそこに画面があるかのように一点を注視している

東の空から2匹の竜の影が次第に大きくなり、それぞれがドームを挟むように滞空する
「撃てぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!!!!!!」
羽柴秀吉が叫ぶと、足元にある狭間の開閉ペダルを踏みこむ
一斉に狭間の扉が開き、東西側の射手が殺生石の鏃の付いた 弓を引絞る
強化された弓に、強化された射手、鼓舞の恩恵を受け 唸りを上げて、それぞれの目標に
吸い込まれるように空気を裂き突き進む
“ピシッ!バシッ!ピシッ!ピシッ!ズゴッ!ピシッ!”
鏃に凍結の込められた矢が、次々と着弾していく 表皮を突き破る事は叶わないが
鏃の触れた箇所、矢を払うために鏃に触れた尻尾までが“パキッパキッ!”と白い霜に覆われ凍結していく 

「2射目、爆裂 撃てぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!!!!!!」
予定通り、爆裂が付与された鏃を番え、次々と矢を放つ 
1射目以上の精度で、次々に着弾していき、凍結した表皮付近に着弾すると、ぼろぼろと
鉱石のような表皮が削れ落下していく

「おおぉっ!!!その調子じゃ!!凍結、爆裂と交互に射るんじゃあ!! 落とすぞ!! 
一気に畳みこむんじゃ!!」


「みんな凄いです!!エント·キングの出番が無いかもしれません!?」

「落ちてきたら、息の根を止めるぞ!!」
徐々に高度を下げていく、2匹の竜が、ドームに足が触れようとした瞬間、2匹同時に
身体を仰け反らせる、嫌な予感に最上部に居る、羽柴秀吉が足元のペダルを踏み込み
すべての狭間を閉め、頭を下げる
2匹同時に竜の覇気が発せられ ドームが大きく揺れる 回廊の手するに捕まり揺れが収まるのを待つ弓兵に、揺れの大きかった最上部の羽柴秀吉が、危うく転げ落ちそうになる
盾に身を隠していたエント·キングにも赤と黒の衝撃波が襲いかかり 踵を土にめり込ませながら20mほども後退する
「びっくりした〜〜〜!?」

「ああ驚いたけど、ドームもエント·キングも無傷だよ」

「バハムート達も無傷みたいだ 天女様が言っていた あの竜の覇気を使うと、傷が完治するっていうのは、本当のようですね」

「でも竜の覇気を使う、前兆は見れた 次は避けるぞ!」





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