第67話 魔法の種

文字数 3,066文字

鳴海城内 天女御殿
「久しぶりに4人が揃いましたね」

「そうだな、アランがあれほど、子供達に懐かれているのは意外だったよ」

「ルイは、知らないかもしれないがアランは子供好きだからな」ブルートがアランを見る

「千代ちゃんが、アランの膝の上にずっと座っていましたね。。。?」
不思議そうに首を傾げる アラン

「まぁそれは置いておいて、私が壇ノ浦まで行って持ってきた物を見せておきます」
太刀を包んでいた さらしを解いていく

「これはまた。。。なんとも禍々しくも、神々しい剣なんだな」

「この剣は、草薙剣といいます 別名を【天叢雲剣】《あめのむらくものつるぎ》といい、この国の神話にも出てくる神剣です」

「ちょっと触ってもいいか?」
ルイが手を伸ばし、握った途端にその手を離す

「気をつけて下さいね」

「言うのが遅いよ。。。とんでもないものを宿して居るんだな 人が制御出来る存在では無いだろう?」

「神の剣に神そのものを宿して居るようなものですね」

「ちょっと待てエヴァ そのようなものが、なんの見返りもなしに宿るわけがないだろう!?
その代償は、いったい何なのだ?」

「ベヒーモスを討ち取る代償は、私の命です」

「「「なっ!!!」」」

「そんな事を、させられるわけがないだろう!!!」

「私達が倒れたら、この国のすべての民が蹂躙されます 私一人の命で済むのでしたら安いものでしょう
もちろん草薙剣を使わずにベヒーモスを倒せるのならよいのですが。。。まぁ保険のようなものですね」

「絶対に使うなよ! 俺たちで必ず倒すからな!!」

アランが、おもむろに立ち上がり ルイの耳元に顔を近づけ何事かを囁く

「アランが、見ろって言ってるぞ」
左の手の平を突き出し、金色の光が、その手の平に向かい集まり始める みる間に大きさも厚みも増していく光の壁 4人を守れるほどの光のタワーシールドが出来上がる
金色の光の粒子が盾の表面を縦横無尽に走り続け、窓から差し込む陽光に反射する

「なになに? ふむっ 子供達のように魔力無しで気を練る修練を毎日していたら、出来るようになったんだと 元々の魔力量も大きくなって出来る事が増えたってさ」

「そうなのか! 魔力無しで気を練るなど考えた事も無かったが。。。これほどの劇的な効果があるのなら、やるしかないな!!」
そう言いながら、アランの大盾をコンコンッと拳で叩くブルート

「ちょっと本気で攻撃して見てもいいか?」ブルートに頷いて答える アラン
右手の指から5本の黒い糸を出し、中空で束ねる くねくねっとまるで生き物のように部屋中を走らせ、反動とともに束ねた先が、音速を軽く超える速度で大盾の中央に着弾する
バッチンンンンンンンンンッ!!!!!!!!! 物凄い破裂音が建物中に響く
微動だにしない アラン またルイの耳元に囁く

「自分が絶対に守るから、エヴァは絶対にその剣を使うなって言ってるぞ 大盾を左手に装備して右手で攻撃も出来るから一人で火竜を屠るってさ」

「それは、頼もしいですリーダー、では右手の装備にこれを使ってください アランは錬成のスキルをお持ちでしたね ブルートと相談されて自分達に合った形に錬成して構いませんので」
そう言い【鬼切·鬼丸】の2振りを渡す

「この鬼丸の方には、土蜘蛛という物の怪が宿っているようだぞ ブルートの新術にぴったりじゃないのか!?」

「それは、楽しみだな 色々と考察しなければならないな」
鬼切りを手にしたアランの左手の大盾が輝きを増し、厚みを増す

「なんだか、相性が良いようですね アラン」

「なぜか解らないが【童子切安綱】も、先日から妖力を増しでるんだよな 酒を供えたのが効いたのか!?」

「いずれにしても、明日から子供達と一緒に修練ですね」


八岐大蛇 《しかし。。。我も随分と嫌われたものよのう。。。》
酒呑童子 《いや古龍様が、嫌われてるのではなく、あの天女という娘が皆から愛されているということじゃろう》
八岐大蛇 《となると、我があの娘を喰らうと悪者ということか がっはっはっは》
酒呑童子 《古龍様を悪者にしない為にも、わしらが頑張らねばなりませんな》
八岐大蛇 《大鬼よ 一つ教えてやるが、あの火竜が産んだ一体は、少々厄介だぞ》



鳴海城 練兵場
「今日は、久しぶりに天女様が見てくださいますからね これまでの成果をお見せしましょう」
お雪が、声を張り上げる 先生役が随分と板についてきたようだ
開始早々に、気を練り白と桃色の光の玉を浮遊させ、キャッキャとお互いに投げ合う 茶々とお千代
一際大きな青い光の玉を両手の平の間に作り、内部が高速で渦を巻く 真田幸村
額に汗を浮かべ、緑色の光の玉を球体から、立方体、円錐状など次々と形状を変化させていく 武田信勝
皆の注目をもっとも集めたのが、紫色の光の玉を作り、それを次々と分裂させていき、いくつもの小さな光の玉を作ると、突き出した両腕の周囲をぐるぐると周回させるという
気の制御に特化した修練の結果を示したのが 伊達政宗

「政宗君ずる〜い そんなのここで見せたことないのに!」茶々が頬をふくらませる

「天女様に始めにお見せしたくって 部屋で練習していたんだ 上手くできて良かった」

「茶々も出来るもん!!」

満腹丸以上の年長組も、それぞれが光の玉を浮遊させることを成功させ 各々がさらに大きくさせたり
回転させたりと試行錯誤を繰り返している
そんな子供達に混ざり、魔力を通さずに体内の気だけを練る事に悪戦苦闘する ルイとブルート 
「これほどに難しいとは。。。ちょっと尊敬するよ。。。アラン」

「生まれた時から自然に使っていた物だからな、魔力が無ければ、なんの役にも立たないという事か?」

「大丈夫ですよ!! 私もまだ浮遊させることが出来ませんから!!」
仲間が出来た事を喜ぶ お雪

「でも、お雪ちゃん 両腕が尋常じゃないくらいに光ってるぞ!?」

「そうなんだけどね ルイ。。。手から離れてくれないんだ。。。」

「お雪さん そのままルイの腕を思いっきり掴んで見て下さい」

「ブルートさん こうですか?」

「痛ったったったったったった〜 離してお雪ちゃん!!」手の跡がくっきりとルイの腕に浮かぶ

「どうやら 体から切り離す事は出来ないようですが 気を溜めた部位を強化する効果があるようですね」

「皆さん、正直に驚きました この短い期間にこれほどの成果を見せてもらえるとは
勉学や体術も一層の精進を期待しています」

「「「「「「「「「はい!!天女様!!!!!」」」」」」」」」


壁際にブルートと並び 皆の修練を見守る エヴァ
「このまま、この子達が成長すると間違いなく普通の生活を送れなくなりますよね
常に戦いの最前線に狩り出され 時の権力者に良いように翻弄されるかもしれません」

「エヴァ それに抗うことのできる知識と力を身に着けさせればいい そもそも戦いなど無い国を
将軍·武田信玄と共に作るのだろう?」

「そうなんですけどね。。。この子達を自分の手で試練の道に放り込むような気がして」

「エヴァ もしも俺たちが、この世界から居なくなっても 俺たちの意思を継いでくれる存在にこの子達は、なってくれるさ 沢山の人達を救う存在にな」

「そうですよね ブルート それで【魔法の種】を植え付けるという事ですが 副作用とか心配無いのでしょうか?」

「前にも話したが、人間に試したことがないからな 魔力を持たない人間が居なかったし そもそもこの魔法は、従属させた魔物や魔法を行使できない亜人種に使う物だからな」

「つまり人間に行使して、副作用がでないという保証は無いという事ですね。。。」


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