第149話 地獄象蟻

文字数 3,210文字

当初の予定通り 満腹丸の呪いが解呪されている為にブルート、ルイ、アランの3人が
フォゴを全力で仕留める 
その間、残った全員でナーダとネボアを牽制する という作戦が実行されている
ただ一つ予則と異なるのが、ネボアである夜叉の損傷が予定よりも大きく フォゴが
夜叉を胸に抱きかかえながらの応戦となっている事なのだが、ブルート達が優位な
要因であるにも関わらず、ネボアが開放されたという安心感からなのか?
あるいは、腹が満たされているためなのか? フォゴにもナーダにも過信も油断も無く
すべての攻撃に(ことごと)く、まるで子供をあしらうかの様に対応されていく

ルイの数十本の黒い太刀が、唸りを上げながら 地上に居るフォゴへと突き進む
フォゴの手前数10mで四方に膨らみ、上下左右からフォゴへと襲い掛かる
それをネボアを庇いながら、尻尾を振り翼で体を覆う事ですべてを払い落とす フォゴ

ブルートの鬼蜘蛛の糸が、フォゴを絡め取ろうと空間を支配するかのように張り巡らされる、火炎耐性の極太の糸にも関わらず 【赤き竜の覇気】1つで脆くも霧散していく

アランが【虎舞羅】と名付けた、右腕に取り付けられた 黒く光る銃身、殺生石を媒介にし、アランの魔力を電磁波に変換し指向性の魔力弾を発射する事が出来る という銃なのだが 連射も可能で操作性にも優れているのだが、魔力を直接エネルギー弾に変換するため燃費が悪く、バハムートを相手にするには、出力不足と言わざるおえなかった

「先日の戦いより、こいつら明らかに強くなっているんじゃないか?」
早くも全身を鬼化させ、酒呑童子の力を取り込んだルイが、吐き捨てる
「枷の無い、本気のバハムートと言うことだろうな。。。天武のみんなも長くは持たないぞ いったん合流するか!?」
「全員で一体づつ対応したほうが良さそうだな!」


防御力を重視した遠隔操作のエント·キングと、同じく防御力重視の織田信忠のゴーレムでナーダを2体で挟み込む形で、フォゴには近づけさせないようにと牽制し続けるが
開戦から、数発の息吹と黒き竜の覇気に耐え抜いただけで、耐久性を強化したはずの盾が
腐蝕の効果から、ボロボロに朽ちてしまっていた

井伊直政は後方で戦況を見守り 自身のスキルである【時間停止】や【時間遅延】を使用しても自身の攻撃力が乏しく、決定打を持たない自分には、逃げる以外に使い途がなく
ー『天女様が戻られるまで 魔力を温存するべきだな みんなと同じように天女様に戦場に立って欲しくはないが。。。本気を出してきたバハムート達には残念ながら
こっちの攻撃が一切通らないのだから。。。天女様に頼るしかない。。。』ー

満腹丸は以前、新岐阜城周辺を散策中に黒い甲虫を誤って踏みつけた事があった
ごりっという感触に、恐る恐る足を上げたが、その黒い甲虫は何事もなかったかのように
悠然と歩き続けていた ビシューの眼で観察したところ、この虫の名はクロカタゾウムシと言い、呆れるほどの強度を誇り、鳥さえも消化できないために手を出さないと言われるほどに硬い虫らしい この里山に無数に生息する この甲虫と強力な攻撃手段を持つ虫を
交雑して最強の虫の軍団を作ろうと企んでいた
「エント·キングとゴーレムを下げていいよ〜 僕が黒いバハムートを押さえるよ!!

【ビシュー交雑 クロカタゾウムシ+自爆アリ=地獄象蟻】出動!!」
満腹丸の足元から、わらわらっと全長30cmほどのアリの姿をした甲虫がナーダに向かい数百匹も行進する 意にも介していなかったナーダの周囲をぐるりっと囲み
ぞろぞろと脚や尻尾からよじ登り始める ようやく足元に視線を落としたナーダが
脚を上げ踏みつけるが、歩みを止めることもなくガシガシっと登り始める
その間も続々と満腹丸の足元から、産み出される 地獄象蟻
ナーダの脚を伝い、腰にまで達した数十匹がさらに上を目指す
上空へと逃れようと翼をはためかせるが、地獄象蟻の尻から粘着性の糸が排出され
その糸を下にいる蟻が咥え、糸を出す 下にいる蟻が咥え、糸を出す
上空に浮かんだ ナーダの足元から地上までを、まるで鎖の様に地獄象蟻が繋がっていく

そして満腹丸が命じる「自爆!!」

満腹丸の[自爆]という命令が発せられると、ナーダの腰から胸にかけて、まとわりつく全長30cmの甲虫が爆ぜる 背中がきれいに縦に割れ、中からドロッとした白い液体が滴る 
両手を使い器用に払いのけようと叩くのだが 甲虫クロカタゾウムシと自爆蟻との
交雑である【地獄象蟻】は物理的な打撃では、容易に潰されることも、払い落とされる事もなく ナーダの身体の至る所で自爆し 白い液体を付着させる
この白い液体の正体であるが、例えるなら速乾性の接着剤である 物理的なダメージも
毒や麻痺といった効果も何も無いのだが ただ単に動きが阻害される 乾き始めた液体に足を取られた地獄象蟻が自爆し、新たな白い液体が上塗りされる
関節部分が白く固まると、どのような屈強な生物でも歩行さえも困難となるだろう
事実、低空を飛行していたナーダも背中の翼の根本が、白く固まり始め 飛行を断念し
地上へと降り立ち、赤い兄弟竜フォゴにこの虫に絶対に触れないようにと念話を飛ばす

途切れることなく、なおも続々と自分に迫りくる地獄象蟻に雷撃の息吹を放つが、しばらくの間、動きを止めたあと また何事もなかったかの様に動き出す
消滅させようと腐蝕の覇気を使うが、地獄象蟻達は、その場で爆ぜてナーダ自身の動きを阻害するだけで、なんの解決にもならなかった 身体に付着した白い液体には、腐蝕の効果も見られない

“ネボアよ 聞こえるか? 私の姿が見えているか? 少々困っている 人間にはこのような戦い方もあるのだな。。。? フォゴを絶対にこの虫に近づけないでくれ”

“聞こえるぞ ナーダよ 人間の戦い方と言うより、我を捕らえていた獣使いの小僧の
戦い方じゃな そのまま放っておくと身動きが取れなくなりそうじゃな”
上空を飛ぶフォゴの胸に抱えられたネボアが、地上のナーダを見ながら顎に手をやる

「フォゴよ もう大丈夫じゃ、1人で飛べるぞ お前は絶対にあの虫に触れるでないぞ
あのナーダでさえ難儀しているようじゃ 逃れる法を考えてやらねばならんな」
夜叉の眼を見ながら、頷くフォゴ


織田信忠達と合流した、アラン、ブルート、ルイ
「どうなっているのか、よく解らんが  ナーダの動きを封じたようだな!?」
エント·キングの補修をする 武田信勝に問いかける ルイ

「満腹丸の産み出した蟻が、ナーダにまとわりついて爆発するんです するとトリモチのような物が出てきて、ナーダの動きが鈍くなってきたので 急いでエント·キングの改良、補修をしています」

「それは、満腹丸のお手柄だな!? 前回の戦いに参加していなかった満腹丸の戦術に敵も度肝を抜かれたわけだな!! ナーダの動きが鈍くなっている間にフォゴを仕留めるぞ!!」

「ああ そうだなルイ! 戦える者は、全力でフォゴを倒そう!!この好機を逃すわけにはいかない、いくぞっ!!!」

改良を終え、耐熱処理を施したエント·キングが大筒(改)を抱え フォゴへと走る

2体のゴーレムを同時に操作ができるようになった信忠が、1体には巨大な盾を1体には
エント·キングと同じ大筒を肩に担がせフォゴに照準を合わせる

真田幸村は、足場として空中に張り巡らされたブルートの鬼蜘蛛の糸を氷の精霊フラウと鉄の精霊フェローで強化しながら 鬼蜘蛛の糸を駆け上がり、氷の精霊フラウの凍結魔法でフォゴを縛り上げていく

全身の八割を、酒呑童子へと鬼化させたルイが100本を超える、黒い妖刀·童子切安綱を
空中で自在に操り、上下左右あらゆる角度からフォゴを切り刻む

アランは、右腕の虎舞羅に魔力を送り込む 試した事は無いが、虎舞羅の限界ギリギリまでの魔力を溜め、フォゴに撃ち込むために ひたすらに己の魔力を注ぎ込む
次第に黒い銃身が、金色の光をたたえ始める


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