第162話 亜空間

文字数 3,177文字

「それでしたら、私が行きます!古龍様 力を貸してください!!」
«。。。。。。。。。。。。ふむ。。。。。。。。。。。。»

「古龍様?」
«お前の身体を隅々まで調べたが、無理じゃな ここがお前の居た世界で精霊に護られていたのなら、あるいは可能だったかもしれん。。。お前の精霊は、この世界にまでは着いては、来れなかったようだな»
胸と下腹部を押さえ なぜか頬を染める エヴァ

「それでも行かねば、旦那様が負けてしまうのでは?」
«奴とて尊天の加護を授かった者だ、簡単に負ける事はなかろう 少しでも魔王を弱らせた所で、我がとどめを刺してやろう!»

「それでは、旦那様は犬死にではないですか!?」
«この国の民を守る為に死ねるのだ 奴も本望であろう?»

「死ぬのは、私だけで十分です お願いします!力を貸して下さい!!」
«お前は、大事な贄だ 殺されると解っていて行かせるわけにはいかん!»
黒い瘴気が漂う、不明瞭な壁面の映像に目を凝らす エヴァ


忠勝をいたぶるかの様に、尾を振るい 魏頭魔を生み出す ナーダ
体内に残った神威を放出させぬよう 体内を循環させながら
次から次へと押し寄せる 魏頭魔に蜻蛉切りを振るう 首を胴から切り離し
脳天から唐竹割りに両断する しかし魏頭魔は自爆することなく 
黒い瘴気を残し、消滅していく、忠勝の周囲が濃度の増した瘴気に覆われ
次第に忠勝の体内をも蝕んでいく

「うむ。。。? 息苦しくなってきたな、しかしこれしきの窮地、魔王殿での苦行に
比べれば、ぬるま湯に浸かっているようなものだ! それにしても、なんとかここから脱せねばならんな」
自分を捕らえている、黒い球体の外殻を目指し 魏頭魔を薙ぎ払いながら飛ぶ
しかし忠勝は、常にこの球体の中心に据えられ 上下左右にどれだけ飛ぼうが、外殻に
届く事は無い
そして、球体内での攻防も数時間が経過し、蒼かった大天狗の表皮も徐々に黒ずみはじめ
天を指すような勢いで怒張していた天狗の鼻も、萎れ俯きかけていた。。。


「古龍様!旦那様が!!」
«ふむ あの黒い球は、思っていた以上に厄介なようじゃのう»

「助けに行きます!!」
«落ち着け お前は、ここで待っておれ 草薙剣を、あの時を操る小僧に渡すのだ»

「直政君にですか? あの子だけを危険な戦場に行かせるわけにはいきません」
«案ずるな あの小僧の能力は、戦闘には向いておらん しかし支援に回れば、我の知る限りでも天下一の能力だ お前の旦那を救えるのは、あの小僧しかおらん»


「おい幸隆、さきほどから天女殿が、あの草薙剣と向き合ってゴニョゴニョと話しておるように見えるのじゃが?」
「お館様。。。おそらくは、草薙剣に宿る 八岐大蛇と話をしているのでしょう。。。」
「神話の古龍だぞ??。。。見なかった事にしておこう。。。」
「それが良いかと思います。。。」
大食堂の隅で、何事かを囁き合う 武田信玄と真田幸隆


草薙剣を持って、井伊直虎と共に居る井伊直政に歩み寄る エヴァ
「直政君、お話があります」

「はい なんでしょう 天女様?」

「あの。。。直政君にお願いがあるのですが、旦那様を助けて欲しいのです」

「はい 僕に出来る事でしたら、何でもしますが みんなと比べても攻撃力に乏しい
僕が役に立てるのでしょうか?」

「八岐大蛇が言うには、旦那様を救えるのは、直政君しか居ないというのです」

「「えっ!?あの伝説の古龍様がですか!!??」」
親子揃って驚く 直政と直虎

「それは、とても光栄です と言うことは僕の時を操る能力を買われたという事ですね」

「相変わらず 聡い子ですね 直政君は。。。貴方に初めて会った浜松城の事を思い出します」

「はい あそこに義母上に連れて行って頂き、天女様に治療をして頂かなければ
僕は今こうして生きてはいなかったかも知れません その、恩を少しでも返せるのでしたら 
僕に出来る事でしたら、何でも言って下さい」
草薙剣を両手で差し出す エヴァ

「これを受け取って下さい」

「こ、これは三種の神器の一つ、草薙剣なのですよね? 僕などが手にしていい物なのでしょうか?」
受け取ろうと差し出した手を引っ込める 直政 
それを聞き、隣で「ひっ!?」と短い悲鳴を上げる 直虎

「それは大丈夫だと思います 古龍様本人が、直政君に渡せと言っていますし。。。
将軍もあちらで、見て見ぬふりをしていますから 問題ないでしょう ただ古龍様は
スパルタが過ぎますから、覚悟して下さいね。。。」
厳粛な顔立ちで、エヴァの手から草薙剣を受け取る 井伊直政

「では、私と一緒に上へ行きましょう」

氷壁の解除された 新岐阜城地上階に立つ エヴァと直政
上空を覆う 禍々しい瘴気を放つ 黒い球を仰ぎ見る

「直政君 その剣に貴方の魔力を通してみて下さい さっきも言いましたが、古龍様は、とても厳しい方です、無理そうでしたら言ってくださいね」

「はい。。。」
短く答えると、目を閉じ 徐々に魔力を通し始める
«小僧 もっと魔力を通しても構わんぞ»
はっと目を見開き エヴァを見る

「古龍様が、話しかけて下さいましたね」
頷きながら、さらに魔力を通していく
直政の身体が金色の覇気に包まれ、髪が逆立つ
閉じていた眼を静かに開けると、金色の龍眼が鈍い光を放つ

「これが、古龍様の力ですか。。。」
«小僧 周りにある我の妖力を取り込み、お前の魔力と我の妖力を、同時に丹田で練る事を意識してみよ»

「はい 古龍様」
直政の纏う 古龍の覇気が質量を感じさせる 重厚さが増す
«ふむ 天女よりも筋がいいようじゃな»

「とんでもありません 古龍様!僕なんか。。。」
«小僧 お前に足りないのは、自分に自身を持つことだ 右の手の平に我の妖力だけを集めてみよ そして左の手の平には自分の魔力だけを集めるのだ ちと難しいぞ»
眉間に皺を寄せ、集中する 直政の右手の平に金色に光る玉が、左手の平に紫色の丸が
ゆらゆらと揺れる

「出来ましたっ!?」
«思った通り お前は我との相性が良いな 天女では数時間の時を要したからな»

「古龍様 私にも古龍様の声が、まだ聞こえるのですが?」
«おおっ!我の欠片をお前の中に残してあるし、妖力も残っておるじゃろう?»

「先ほどから、私の悪口ばかりが聞こえるのですが?」
«ふむ 欠片がきちんと機能しているという事じゃな いざという時には、お前とお前の腹の子くらいは
守ってやる»

「それは、大変有り難いのですが。。。それで旦那様を救って頂けるのでしょうか?」
«焦るでない 小僧、よく聞くのだ!»

«お前の時を操る精霊は、時間を支配する精霊の中でも唯一無二、亜空間までも支配する
精霊なのだ お前とも親和性が高く、お前自身が亜空間に入る為の、許可を出している筈だ語りかけてみよ»

「そうなのですか?僕の精霊ハロルが?。。。わかりましたやってみます」
目を閉じ、脳内でハロルに語りかけ 頷いたり首を傾げる 直政

「どうですか?直政君。。。ハロルは答えてくれましたか?」

「はい許可を出してくれていたそうなのですが、僕が認識できない事は、実行出来ないようなのです 
目に見えていない別の次元の世界があると言われても。。。」

「確かに。。。そんな事を言われても。。。」
首を傾げる エヴァと直政

«良いか よく聞くのだ頭で理解せよという事だ、お前も瞬間移動は解るな?»
「はい ネボアやナーダが使っているのを見ました」

«奴らの使う瞬間移動と言うのは、この見えている空間を捻じ曲げて、自分のいる地点と
行きたい地点の面を接地させ潜り抜けるのが瞬間移動だ その間に、あの黒い球のようなな障害物があると
空間を捻じ曲げる事が出来ぬし 目に見えていない範囲にも瞬間移動は使えん 
しかしお前の精霊の能力は2つの点の間に亜空間を挟むことによって繋げることが出来るというものだ 
ここまでは、解るか?»
「はい 解ります!」

「えっ!?解るの直政君!?」

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