第90話 婚約を報告する

文字数 3,141文字

あっという間に羽交い締めにされ、初対面の女性の前で愚息を晒すという 
醜態から、数分後。。。3人は食堂に来ていた
「ルイよ。。。気にするでないよ、聞くところによると、アランのが立派過ぎるらしい」

「そうです ルイ殿のも可愛くていいと思います!」
満面の笑顔で慰める おりん

「お玉様は、いつの間に人型に変幻出来るようになったんだよ?。。。て言うか、この娘は誰なんだ?」

「あらっ?お風呂の中で自己紹介したはずなのですが。。。?」

「聞いてない!それどころじゃない!!」未だ拗ねている ルイ

「この娘は、昔にこの国で大嶽丸という鬼神を封じた鈴鹿御前という天女と人間の間の娘だよ
今は、鈴鹿山で改心した大嶽丸と共に、この国の安寧を見守っている 天女さ」

「そのように大層な者では、ありませんが 人同士の争いであれば介入する事は、有りませんが。。。
本来ならこの国には居ないはずの人外により、この国の民が被害を受けているようなので、数百年ぶりに
この世に顕現したわけです」

「それって。。。原因は、俺達だよな。。。」

「あんた達じゃないよ、あの火竜共だよ! そう言えば、聞いたかい? さっき話した大嶽丸がね
火竜を討ちに行ったんだけどね、結果は痛み分けだが、天女が火竜の尻尾を切り落としたんだよ 」

「ああ 無茶をしたらしいな、御嶽山の付近の村を襲っているのも聞いた 奴らは、この俺が必ず討つ!!」

「なっ どことなく大嶽丸に似ているだろ?」

「本当ですね。。。危なっかしい匂いがします」
クンックンッと鼻を鳴らす おりん

「お前らの方が、よっぽど危なっかしいからな!! 男が風呂に入っているのに2人で全裸で入って来るとかおかしいだろ!!」
おもいがけず大声で叫んだようで、食堂中のみんなの好機の目に晒される事になる 3人


下鴨神社 葵生殿
「お館様、ただいま戻りました」
エヴァと本多忠勝が揃って、武田信玄に帰京の挨拶をする

「天女殿、長旅ご苦労であった 越後の事は、聞いておる 本来であれば、ゆっくりと休んで貰いたいところじゃが 火竜共の動きが活発になっているようでな 早急に手を打たねばならぬ」

「実は、天女様 御嶽山周辺の集落で数十人もの老人が、定期的に失踪するという報せが入りまして 先日には集落、丸ごと。。。80名の行方が解らなくなっています」
真田幸隆が補足して説明をする

「予想しなければならなかった事ですね。。。今は、どのような対応を?」

「はい 御嶽山の周辺の集落には、避難を呼び掛けていますが 田畑を離れられない時期ゆえ
遅々として避難が進んでいないのが現状です」

「わかりました、御嶽山に動きがあった時に、すぐ動けるように、まずは拠点を移したいと思います 
大垣城は、いかがでしょうか?」

「あそこでしたら、京と御嶽山の丁度中間になりますし、鳴海城からも近いですな
今は、前田利家殿の預かりとなっておりますが、快く助力してくれるでしょう」

「日程、人選などアラン達と詰めますが、明日、明後日にも移動したいと思います
あっ! それから。。。」
もじもじと言い淀む エヴァが縋るように忠勝を見る

「あっ あ。。。あのお館様! このような時にあれなのですが。。。この本多忠勝!
けっけっけっけ。。。ごほんっ! 結婚いたします!!」
顔を真っ赤にして、今にも倒れそうな 本多忠勝

「ほ〜 それはめでたいのう! このような時だからこそ、明るい報せは皆の心を和ませるというもの 
火竜の件が済んだら、大々的に婚礼の義を摂り行おう
しかしまったく気付かなんだのう。。。で? お相手は、どこの娘だ??」
信玄の横で、ニヤニヤと笑う 真田幸隆

「はっ!? お相手? あっ!!こちらに居られます 天女様にございます!!!」

“バタンッ!!!”戸障子が外れ 倒れ込んでくる 徳本先生
呆気にとられた皆の注目を集めながら、ゆっくりと立ち上がり、血の気の引いた面持ちで
踵を返し、ゆっくりと歩き去る 久々に登場の永田徳本であった

「ふむ 正直、驚いたぞ しかしよくぞ天女殿の気持ちを射止めた! 戦いにしか興味のない朴念仁かと思っておったが、わしの目が節穴だったわけじゃな! いやめでたい」
自分の事のように喜ぶ武田信玄

「お館様、折角ですので例の件を、本多殿にお話されたらいかがでしょうか?」

「おおっ そうじゃな、真田幸隆から聞いたとは思うが、おぬしに一つ城を任せたいと思っておる 
望む領土があれば申すがいい」

「はい 天女様とも話したのですが、岐阜城をお任せ頂ければと思います」
居住まいを正し、深く頭を下げる 本多忠勝

「しかしあそこは焼け野原じゃぞ? まぁおぬしらならば、すぐに再建するのじゃろうがのう 
良かろう本多忠勝!おぬしに岐阜城以東の尾張国すべてを任せよう 
天女殿を嫁に貰うとなれば、益々励まねばならんのう」

「はっ 有難き幸せに御座います」


天女様、御結婚という吉報が、あっという間に京の都中を駆け巡り
大勢の人達が、下鴨神社の境内に設置されている天女小堂にお祝いの参拝に訪れる
暗い話題の続いていた、都の民に明るい笑顔と活気が戻り、行き交う人々の足取りまでもが軽く感じられる

「「「「「「「「「本多殿、天女様おめでとうございます!!!」」」」」」」」」
天武の子供達が、エヴァと忠勝に走りより、口々に祝の言葉を述べる

「皆 ありがとう こんな時にどうかとも思ったんだけど。。。」

「天女様、こんな時だからこそです!皆に希望を与えてくれますし 負けられない理由が、また一つ増えました!!驚きましたけど」
お雪が、天女の手を取り微笑む
エヴァと並んで立っていた、本多忠勝の襟首が強い力で引かれ、たたらを踏んで後退る
忠勝の首に手を回し、羽交い締めにする アランが忠勝の耳元に囁く
「エヴァを。。。泣かせるな。。。死ぬなよ。。。」

「はい!アラン殿。。。拙者。。。死に。。。ましぇん。。。苦しい。。。」
戦闘ではなく、アランに殺されそうになる 忠勝

「エヴァは、男に興味がないのかと思っていたよ おめでとう」

「ありがとうブルート、興味が無いわけでなく、縁がなかっただけです」

「言い寄ってくる男達は、大勢いたが俺とルイでことごとく追い返していたからな」
当然という風に言い切る ブルート

「はっ!? 初耳なんですけど? 今まで私は、男性からまったくモテないのかと思っていました。。。」

「いや 物凄くモテると思うけどな〜 でも自分より弱い男は、要らないだろう?」

「ブルートとルイが決めることでは、ありませんけどね! まぁいいです」
そこに浅井長政とお市様夫婦が、玉砂利を踏みしめ近づいてくる

「天女様、おめでとうございます!」
抱きつかんばかりの勢いで手を取る お市

「ありがとうございます お市様、お腹も随分と大きくなりましたね、触ってもいいですか?」

「はい 是非触ってやってください! 天女様に触っていただけば、きっと丈夫な子供が産まれるに違いない! あ。。。失礼した 本多殿、天女様この度は誠におめでとうございます」
軽く頭を下げる 浅井長政

「わたくしからもお願いします この子に触ってやって下さい」
少し腰を下げ、両手でお市のお腹を支えるように触る 目を閉じ、両手の平に神経を集中するように
「とても順調だと思います 後50日といったところでしょう」

「お〜そうか! 順調か! 名を考えておかねばならんな」

「殿、男の子ならば殿が、女の子ならば私に名をつけさせて下さいな」

「ふむ 良いが、女の子の名前を、もう考えているのか?」

「はい“江”と、大陸では、海のように大きな河を江と言うそうです 沢山の国を繋ぎ
沢山の人を繋ぐ そんな人になって貰いたいと。。。」

「ふむ お江か。。。良い名であるな、きっと大きな人間になるであろう 楽しみじゃ」


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