第115話 エント·キング大地に立つ!

文字数 3,112文字

「大きくって、強そうだけど、火竜は、火炎を吐くんだよ?全身丸太で大丈夫なの?」
千代の冷静な正論に、一瞬目が泳ぐ エント·キング

「なになに。。。? 4大属性で火が最も苦手らしい。。。」
信勝の召喚に応えたエント·キングは、簡単な意志の疎通ができるらしい

「大丈夫だよ!茶々が自動回復の魔法を掛けてあげるからね ちょっとくらい燃えても
茶々の魔法で治してあげるよ!!」
エント·キングが、その場に腰を下ろし、丸太の右腕を茶々に差し出すと、先端から蔦がスルスルッと伸び、茶々を絡めとると自分の肩にそっと乗せる 
「うわ〜〜〜高い!!ありがとうエント·キング!!」

「火に弱いという弱点、僕の鉄の精霊·フェローと氷の精霊·フラウで克服できると思いますよ 試してみてもいいですか?」
全員が“うん!うん!”と期待を込めた目で幸村を見る

「鉄の精霊·フェロー!フルアーマー作成!!」
エント·キングの頭の上に巨大な兜が浮遊し、顔の前方に面が浮遊する

「装着!!」
兜がエイト·キングの頭部に装着され、面が顔にガチャリッと嵌まる 巨大な戦国武将の頭部が出来上がる

「可愛くないです!!」

「茶々、可愛い必要があるのか。。。?」

「確かに、私達の呂棒なのですから ちょっと無骨過ぎますよね アラン先生そっくりにしたら、とても愛着が湧くと思うのですが」

「それは、どうかと思うが。。。じゃあ西洋風の鎧にしてみようか?」
頭と首を覆うバシネット 顔面を覆うバイザー 胴体の前後を覆うフォールズにバックプレート 胸当てとなるブレストプレート 腕を覆うバンブレースにガントレット
脚部にサバトン、脛当てにグリーブ、膝当てにポリン、太腿にキュイス、踵を覆うスプールと全身を覆い尽くす

「西洋の鎧を勉強していて良かったよ じゃあ“装着!!”」
ガッシン! ガッシン! ガッシン!と各部が、丸太の全身に装着され 鈍く光る鋼の巨人が大地に立つ!!

「強そう! だけど、可愛くない。。。幸村君、お願い赤いリボンを着けて〜」

「じゃあ私は、ピンクのハートマークをお願い致します」

「茶々も千代ちゃんもエント·キングは、男なんだからね そんなの着けたらエント·クイーンになってしまうよ」

「じゃあ せめて!せめて!色を着けさせて!!」

「お〜それはいいな! どうも寂しいと思っていたんだ お腹と背中に僕の魔力の色 黄色を頼む」

「私は、頭!頭を赤にして!!」

「千代は、胸当てを桃色にして欲しいです」

「じゃあ腰回りは、緑だな。。。」

「解った それならやってみるよ“着色!”」
脛当てとガントレットを、自分の魔力色の青とし、白を基調として、全体の造形を未来的にして
ここに居る5人に視界を共有する為のV字型のアンテナを装着する
「茶々の赤、額当てと顎の部分だけなの??」

「頭全部を赤って。。。どうしても僕の美意識が許せなくって、エント·キングに持たせる盾を赤にするから、それでいいだろう?」

「それならエフリートの業火の剣を持たせよう!!」

「千代のサンドマンにお願いして、遠隔での操作も可能にしてもらいましょう」
フルアーマーの内部には、氷の精霊フェローが冷気を循環させることにより、炎熱耐性まで備える
こうして内部が丸太だとは、とうてい思えない未来的な呂棒が完成する

練兵場の出入り口に、織田信忠達の気配を察知しエント·キングの召喚を瞬時に解除する
「何か、ここに巨大な魔力を感じたんだが。。。何かあったのか??」

「「「「「いえっ!?魔力操作の修練をしていただけです!!」」」」」

「それにしては、巨大な魔力だったが。。。まぁいい昼食にしようか?」

「「「「「はい お腹が空きました 行きましょう!」」」」」


「エヴァ。。。頼まれていた。。。錬成。。。終わった。。。」

「ありがとうございますアラン 殺生石と独鈷杵の錬成は、上手く行ったのですね!?」

「ああ。。。どれほどの。。。力が。。。あるか。。。エヴァ次第だ。。。」
テーブルの上に、穂先を布に包まれた 長物をごとりっと置く

「薙刀ですか!?」
柄の長さがおよそ120cm、穂先が90cm ()と呼ばれる、血流しが深く刻まれ
(はばき)には、狐の尻尾のような房が結わえられてある
刀身は、青白い輝きを放ち 柄には青龍の鱗を思わせる紋様が光を反射している
ごくりっとつばを飲み、薙刀の柄に手を伸ばす

「アランこれ。。。凄いです。。。」
とその時、エヴァとアランのテーブルに近づいてくる子供達

「天女様、アラン先生 食事中にすいません 今日の午後の修練なのですが、稽古をつけて頂けないでしょうか?」
織田信忠を先頭に頭を下げる 満腹丸、北条氏直、井伊直政
「そうでしたね、昨日も自主修練でしたね 今日は、ちゃんと見せてもらいますね」

「はい ありがとうございます それでお願いがあるのですが、僕達と、実戦形式の試合をお願いしたいのです!」
緊張しているのか、顔を紅潮させ、懇願する 織田信忠

「それは、武器も魔法もなんでも有りと言う事でしょうか?」

「はい!僕達の実力を見て頂いて、火竜との決戦に帯同させて頂ければと思っています」
「そうですね。。。信忠君も、もうすぐ16歳でしたね いつまでも子供扱いは失礼だったかもしれません 
わかりました、では午後の修練で貴方達の実力を見せて下さい」

「本当ですか!?ありがとうございます!!」

「でも困りましたね ルイは、未だ本調子ではありませんし アランやブルートでは
強すぎますから では、最弱の私が相手をしましょう!」

『エヴァが。。。最弱。。。??俺もブルートもルイも。。。エヴァに戦い方を。。。
教えてもらったのに。。。』


新岐阜城 地下5階 練兵場
天武の子供達全員が見守るなか おずおずとエヴァの前に進み出る 満腹丸
「天女様、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げる 満腹丸

「はい よろしくお願いします 私にも満腹丸君にも防御魔法を掛けていますので
遠慮なく攻撃して下さいね」

「では。。。はじめ!!」
アランが試合の開始を告げる
長く鋭い爪の付いた手甲を装着した 両手を広げる 満腹丸

「ビシュー変幻“亀+ハチドリ=亀羅(がめら)”!!」
亀の甲羅の中に収まり わずかな隙間から爪だけを外に出すと“ぶーーん”という羽音
と共に、空中へと浮遊すると回転を始める 満腹丸

「ハチドリって、何かしら? 鳥なの??」
誰にとも無く、問いかける千代

「あのね、家にいたんだよ 異国の商人から父上が買ったんだけどね すごく小さくって可愛いの 
でもね、すごく頑張り屋で1秒間に70回も羽ばたいて翼が見えないくらいでね
鳥類で唯一、空中で止まって花の蜜を吸ったり 後ろに進む事も出来るんだって!」

「そんなに早く羽ばたくから“ぶーーん”って音がするんだね 滞空も後退も出来るって
空中を自在に飛び回れるって事か〜 凄いね」
そんな千代の予想通り 高速で回転をしながら空中を縦横無尽に飛び回る “亀羅”

「2種類の生物を融合して変幻が出来るなんて、素晴らしい成長ですね 満腹丸君」
回転速度を上げながら、上空よりエヴァに襲い掛かる
羽衣に風魔法を纏わせ、ふわりっと飛んで“亀羅”を躱すと、薙刀の石突きを甲羅の中心に
“カツンッ”と落とす ただ軽く置いただけのような突き
誰もが、回転に巻き込まれ、エヴァが弾け飛ぶところを想像した。。。が
引絞られた弓から矢が放たれるように、床に叩きつけられる 満腹丸
甲羅の中にまで衝撃波が襲い 上下左右にと脳を揺さぶられた 満腹丸は“亀羅”も解除し
大の字になって伸びている

「茶々ちゃん、満腹丸君に回復魔法を、お願いしますね 目を回して伸びているだけですから 
すぐに気が付きますよ」

ー『この薙刀の名は“玉龍”にしましょう』ー


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