第119話 満腹丸の大冒険2

文字数 3,274文字

上空から、満腹丸を観察していた ネボアだが、満腹丸の能力を探る事は叶わず
踵を返し、慌てた様子で岐阜城へと向かう標的に接触することを決断する
よく見れば、人間種の子供のようだが、人間共は子供に対して、無償の犠牲を払う事を
厭わない種族だ 人質として捕獲すれば、何かの役に立つかもしれん
奴らの魔力探知が、届くのか微妙な距離だが、抵抗するならば 殺してしまえばいい


階段を駆け上がり、地上へと出たエヴァの魔力探知に北へ8kmの地点で満腹丸の魔力を探知する
その瞬間にエヴァの顔が青ざめる 

「この魔力は、ネボア! 急ぎます!!」
エヴァと同時に満腹丸の魔力に重なるように、巨大で邪悪な魔力を感知した 
ルイ、アラン、ブルートも同時に走り出す それに釣られるように後を追い駆け出す
天武の子供達だが、お雪が手を広げ、それを制する
「みんな待って!満腹丸君は、天女様達に任せて 私達は、童夢を守りましょう
中には、羽柴組のみなさんも、弓兵のみなさんもたくさん居ます 私達が守るのです
天女様達が行けば、何があっても大丈夫! みんな良いですね」

「お雪先生〜 お兄ちゃんが〜〜!」
今にも泣き出しそうな茶々を抱き上げる お雪

「茶々ちゃん 満腹丸君は、大丈夫 天女様達を待っていましょうね 大丈夫!」
自分に言い聞かせるように大丈夫と繰り返す お雪

「そうですよ 茶々ちゃん 私は、時詠みの力があります 満腹丸君は、大丈夫ですよ」

「おりん様。。。時詠みってなに?」

「少しだけ先の事が、解ってしまう力です」

「本当にお兄ちゃんは大丈夫なんだよね!?」

「茶々ちゃんは、天女様を信じていないの?」

「。。。。。信じてる! みんなと一緒に童夢を守る!!」


高空より 右手に“麻痺”を纏わせ、標的の子供の背後に瞬間移動して攫う
標的の能力は不明だが、この右手で触れるだけの簡単な仕事だ
検証の結果、自分より質量の小さな物は、一緒に瞬間移動ができる事も解っている
ここに向かっている、大きな魔力が到着する頃には、標的を連れて御嶽山に帰れる
瞬間移動発動! 満腹丸の移動速度を考慮して、標的の前方の空間が歪む
きっちり1秒後に瞬間移動の出口が開き 前を走る標的に右手を伸ばす 
その時、右手後方より飛来する 柄の長い銀色に輝く物体 槍か!?投擲武器!?
伸ばした手を引き、後方へと後退る ネボア
地面に突き刺さる 銀の虫取り網、その音に何事かと振り返る 満腹丸

「は。。。般若っ!?」驚きと恐怖で、その場に尻餅をつく 満腹丸
そんな満腹丸を守るように囲う 5匹の河童


「ほう お前らが河童とかいう下等な生物か? なんのつもりか知らぬが、その子供を
こっちに寄越せ!」

「キュキーーキーキューーッキーキュキュキッーキュー!!」

「河童さんたち、僕を助けてくれるのかい?」

「キキューキーキュキューッキーキュキキッーキューキキー!!??」

「言葉が解るのかって? 僕の精霊ビシューのおかげで、動物たちとも話が出来るんだ」

「キキューキーキュッキューッキーキューキキッーキューキキー!」

「木曽川であった、変な女みたいだって? わからないけど、あの般若は強いよ、気をつけて!」

「キーキューキーキュキューッキーキュキキッーキューキキーキュッ!」

「水神様の命令で、異界の魔獣から人間を守るように言われているのか?お願い!死なないでね!!」

「邪魔をするなら、殺すだけだ! そこを退け!!」
夜叉の右腕が伸びる 鞭のように腕をしならせ3mも伸びたところで
先頭の河童に張り手を浴びせると、地面に転がり麻痺の効果で痙攣を始める
金の虫取り網を手にした河童が、飛び跳ねると伸びた夜叉の肘に虫取り網を叩きつける
虫取り網が喰いこんだ、肘を基点にありえない方向に折れ曲がり、河童の喉元を掴み
喉輪で釣り上げると ブクブクと泡を吹き痙攣を始める 河童
残った3匹が、一斉に夜叉の本体に向け 強烈な水圧の水鉄砲を浴びせると
わずかに後退したものの、のしのしと前進を始める 夜叉

「キキューキーキュキューッキーキュキキッーキューキキー!?」

「身を守る術? あるよ!僕も戦えるよ!! ビシュー変幻“亀羅”!!」

亀とハチドリの合成変幻で、2m近い亀の甲羅に籠もり ゆっくりと回転をしながら浮上する 満腹丸

「キーキューキーキュキューッキーキュキキッーキュキーキュッ!」

「お前は、子供なんだから、後ろで見ていろって!? 僕も戦えるのに。。。」


満腹丸の元に、1匹の河童を残し 四股を踏んで、夜叉へと頭を低くして突進していく
2匹の河童 《キキューキッキ キーキーッキキュー!!(あの右手が危険だ、俺が抑えるから、お前は思いっきりぶちかませ!!)》

《キッキキュー!キッキ!!(わかった!任せろ!!)》
夜叉の左から、低い姿勢のまま突進していた1匹が急制動から、上体を起こし夜叉の目の前で
両の手の平を打つ“バッチンッ!”猫だましから一瞬怯んだ夜叉の右腕にしがみつき
手の平に触れぬように、手首を固定し肩に足を絡める 
そして夜叉の腰に、思いっきりぶちかまし、腰に手を回す もう1匹
夜叉の踵が、土にめり込み わずかに後退する

「身の程をわきまえろ 雑魚が!!」 夜叉が吠える
瞬間移動で100m上空に2匹の河童をまとわせたまま現れ“どんっ!”と竜の覇気を発する
あまりの衝撃にしがみついている事さえ出来ずに、空中へと投げ出される 2匹
「「キーッキキューキッキーキ〜〜〜!!」」

「今、助けるからね!!」
上空に向け、急上昇する 亀羅 上空で1匹目の河童を、甲羅で受け止めると、もう1匹に向けて、急降下し
地面ギリギリで甲羅で受け止めることに成功する
「危なかった〜〜!今度は、僕が戦うから見ていて 僕も戦えるんだよ 天女様に褒めてもらったばかりなんだよ!!」

「「「キーッキキューキッキーキ!!」」」 「うん 気をつけるよ」
残った仲間の元に2匹を降ろすと、再び上昇していく 満腹丸
回転しながら、上空に居る夜叉へと一直線に迫ると、さらに速度を上げる
甲羅の隙間から手甲の刃が突き出すと“ブーンッ ブーンッ”というハチドリの羽音に
刃が風を切る音が混じる 夜叉の伸ばした手が、亀羅の甲羅を“バッチーーン!!”と鞭の
ようにしなり叩きつけられる 強烈な破裂音が響き渡るが 勢いを殺される事なく
直進し、夜叉の胴を掠める 夜叉の着ている襤褸が引き裂かれ、宙を舞う
「麻痺が効かぬのか? おとなしく捕らえられていれば良いものを、ならば死ね!」
右手の“麻痺”を解除し“呪い”を発動させると 夜叉の右手が黒い(もや)に包まれる
さらに赤い兄弟竜との同調を強めると、夜叉の口裂から白煙が上がる

「避けられたか〜 こいつをやっつけて天女様やみんなに褒めてもらうんだ!」
夜叉の後方で旋回すると、さきほどの鞭のような腕の攻撃を警戒して上下左右と不規則な軌道で
夜叉との距離を詰めていく 満腹丸

一方の夜叉は、広範囲に竜の息吹を放ち、これ以上近づける事を嫌っているように見せる 
よく観察していれば、気づけているはずだった 夜叉の右手の肘から先は、瞬間移動の
入り口の中に消え 満腹丸の上方に開いた出口からは、夜叉の肘から先が、長く鋭い爪を
くねらせ、満腹丸を待ち構えていた
広範囲な息吹を吐くことにより、空中には噴煙が広がり 瞬間移動の出入り口を隠蔽する
竜の息吹を上昇して避ける亀羅の下腹を、息吹の業火がちりちりと焼く その動きを見て
肩までを瞬間移動の入り口に差し込み、上昇してくる 満腹丸を待ち構える 夜叉
広範囲な息吹を避けながら、その空間、その場所へと誘導されていた 満腹丸
自身の右腕を限界まで伸ばし 亀羅の甲羅を、夜叉の鋭い爪が掠める ほんのわずかな
髪の毛1本ほどの傷
「危なかった!?あんな所から腕だけが出てくるなんて!」
甲羅の中央の傷から、黒い靄が立ち昇る 次第に広がり始め、目に見えて失速していく
「な。。。何が起こっているんだ!? 真っ直ぐに飛べない!!」
挙動の不安定になった亀羅に、竜の息吹が襲いかかる
ボオオォォォーーーーッ 炎の尾を引きながら、長良川へと落ちて行く 満腹丸




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