第157話 窮地

文字数 3,010文字

鮮やかな金色となった古龍の覇気が、木曽の山脈より顔を出した朝日に反射する
氷壁を蹴り、羽衣に受けた風をなびかせ 怒愚魔の密集している地点へと滑空する
左手の五指から古龍の覇気を射出し、右手の草薙剣を横へ払いながら 着地する
怒愚魔の自爆より早く、その場を疾風で離れながら、続々と群がってくる怒愚魔を薙ぎ払っていく
エヴァの、駆けた後に連鎖して続く爆発
怒愚魔の肩を蹴りながら、頭頂部に古龍の覇気を撃ち込む 一拍の後に自爆する 怒愚魔
舞うように怒愚魔の肩を飛び移り 古龍の覇気で草薙剣で息の根を止めていく エヴァ

「ブルートさん!これが最後の殺生石の鏃です!」

「そうか。。。お雪ちゃん、矢の切れた弓兵から地下に誘導してもらえるか?」

「わかりました! ではみなさん撤退します!!大食堂まで移動しますので、こちらの階段から降りて下さい〜〜!!」
 
「お前ら!聞いたとおりだ、手持ちの矢を撃ち尽くしたものから大食堂へ降りるぞ!!」
前田慶次郎が叫ぶ

「しかしブルート殿、一晩中 怒愚魔を削り続けた500名の弓兵が退いて貴殿等は持ちこたえられるのか? こやつら一向に減る気配も無いのだが?」

「正直、殺生石が無くなったのは、かなりキツイです。。。我々の魔力も残り少なくなっているので
順番に休んで魔力の回復をしなければいけませんが、そうも言っていられる状況ではないので
なんとかこの場だけ死守します 前田殿、早く地下に避難して下さい みんなによく頑張ってくれたと
お礼を伝えておいて下さい」

「子供達に戦わせて。。。無力な自分が恨めしい。。。本多忠勝は、いったい何処で何をやっているのだ!? 天女様もあんなにぼろぼろになりながら戦っているというのに!」

夜を徹して戦い続けた 精鋭弓兵500名と風魔党員20名が、後ろ髪を引かれる思いで
地下の大食堂へと降りて行く
安定して怒愚魔を削り続けた彼らが離脱していくのは、全員の魔力が心細くなってきた
この状況では、あまりにも過酷な戦況になることは目に見えていた

全員に念話を送る ブルート
『殺生石が終わり、弓兵全員が避難した ここ新岐阜城を守るぞ 全員ただちに氷壁内に戻ってくれ!!』
遊撃に出ていた者達が、ブルートの念話を聞き 氷壁へと戻る

「ブルート!殺生石が終わったのか!? きつくなるな。。。」
縮地術でいち早く戻ったルイが氷壁を飛び越える 
「ああ かなりまずい状況だな ナーダの魔力には限りが無いのだろうか?」

しばらくの後、魔力回復のために地下に降りている 真田幸村と茶々以外の全員が揃う
「上空の魏頭魔をルイと満腹丸とアランで頼む 氷壁の維持を直政君に頼みたいのだが、出来るか?」

「はい!休ませてもらって魔力も回復したので大丈夫です!!」

「残りのみんなで怒愚魔を倒すぞ、氷壁にたどり着く前に倒すんだ!!新岐阜城を守るぞ!!」

「「「「「「「はい!!頑張ります!!!」」」」」」」
氷壁の縁に登り、空中から迫る魏頭魔を、稲葉山を押し寄せてくる怒愚魔をそれぞれが
残った魔力を考えながら仕留めていく 

「エヴァ このままでは、全滅するのも時間の問題だ。。。ナーダを倒す事は、出来ないか? 
エヴァ一人に頼って悪いとは思うが頼む」

「ブルート わかっています ようやく八岐大蛇の妖力にも慣れてきましたので行きますね 
それまでここをお願いします」

「エヴァ。。。すまない、無理をするなと言いたいが。。。」
悔しそうに奥歯を噛み締め 震えるブルートの手を取る エヴァ

「ブルート わかっています大丈夫です」
上空で、そして地上で爆音が轟き白煙が上がる中を背を見守られながら飛び立つ エヴァ


«天女よ、正直に言うが。。。今のお前では、ナーダに勝つのは至難の技じゃな»
「わかっています それでも諦めるわけにはいきません 私が、この戦いを諦めると言う事は、この国のすべての民の命を諦めると言う事ですから」

«ふむ 今のお前で、我の力をようやく五割ほど引き出せておる 八割じゃ!八割で勝機も見えてこよう»
「つまり万全の古龍様なら、ナーダに勝つことも容易いと?」

«ふっはっは 当然の事を聞くでない しかし我の力を万全に引き出せるのは、我の肉体しかないがな! さて行くか!?»

氷壁 新岐阜城の地上階を囲う、精鋭弓兵500名を守る為の直径200m、高さ10mの
巨大な氷壁 真田幸村が大量の魔力を消費し、氷の精霊フラウの力を借り作り出した
氷壁であるが その後
魔力の切れた幸村に代わりブルートが氷壁を維持し、現在は井伊直政が引き継ぎ維持
をしているのだが、殺生石をすべて使い切ったことにより精鋭弓兵が退却避難したため
氷壁上で防衛する天武の7名とアラン、ブルート、ルイのわずか10名で巨大な氷壁を守らねばならないという 過酷な状況に陥る

織田信忠の昨夜から7体目となるゴーレムと武田信勝の精霊エントの作り出した
9体目となる木人が怒愚魔を蹴散らし
伊達政宗のエフリートの豪炎球が怒愚魔を焼き払い 北条氏直の刃の精霊フーカーの
スキル投擲を使い投じた槍が怒愚魔をその場に串刺しにしていく
もっとも怒愚魔を減らし続けるのは、鬼蜘蛛の巣を地上に張り巡らし、掛かった獲物に
雷撃でとどめを刺すブルートであるが、押し寄せるすべての怒愚魔を止めきれる筈も無く
氷壁に辿り着くと、貼り付き自爆する 
氷壁の周囲あちらこちらで爆音が上がり、大きな火柱が立つ、十分な厚みと強度を持っていた氷の壁が、徐々に削れ始め その修復に多大な魔力を消費していく井伊直政であった

そして上空からは、怒愚魔に比べると数は劣るものの機動性に優れた 魏頭魔が急降下し
床面に接すると自爆するという凶悪な戦法で新岐阜城·地上階の床面を削っていく
それを阻止するのが、ルイの幻影散棘で数十本もの童子切安綱の複製が空を飛び交い
魏頭魔を切払い アランの魔力弾が魏頭魔の急所を貫き 満腹丸のビシュー交雑から
生み出された地獄雀蟻が次々と魏頭魔に取り付くと自爆し誘爆を誘う
相当数の魏頭魔を空中で撃破するが、取り逃がした魏頭魔を氷壁外に落とすために
おりんと千代の障壁が、氷壁の上空に展開する
しかし直径200mと広大な氷壁内すべてを覆う障壁を展開する事は叶わず
すり抜けた魏頭魔が床面まで辿り着き、徐々に削られていく


そのさらに上空で激しい剣戟を交わす エヴァとナーダ
«天女よ 焦るでない!力押しではナーダは倒せぬぞ!!»
「しかし古龍様!急がなければ、みんながそれほど長く持ちません!! 
それにこうして攻め込んでいればナーダも新たな魏頭魔や怒愚魔を生めないようです」
ナーダが竜鱗から作り出した両刃の大剣を草薙剣で受けると、手の平から古龍の覇気を放つ エヴァ 
ナーダの横腹をわずかに焦がすが、またたく間に回復されてしまう
それに構わず、覇気を纏わせた風刃を放ち、目にも止まらぬ速さでナーダの頭に首に胸に腹にと
草薙剣を振り続ける 
周囲の山々に両者がぶつかり合う剣戟が木霊する

その神々の戦いを凌駕するような両者の対決を、自分達のすぐ頭上で繰り広げられている
氷壁を隔てた攻防に手に汗を握り 喰い入るように、祈るように壁面を見つめる 人々
「みんなが、これほどに頑張っているのに本多忠勝は、何をやっているのだ!」
前田慶次郎が漏らす
「そうだ!!あの馬鹿は何をしているのだ!?可愛い嫁さんが、ぼろぼろになりながら戦っているんだぞ!!早く帰って来い!!!!」
風魔小太郎が叫ぶ!!


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