第144話 陣中見舞い

文字数 3,301文字

続々と到着する 各領主と従者により、徐々に人口密度を増していく練兵場
山のように積まれていく、陣中見舞いの土産
京の甘味に天武の子供達が群がり それを嬉しそうに眺めている 武田信玄

そこに羽柴秀吉が、自ら案内してきたのが、浜松城より駆けつけた。。。 
「お館様、天女様 徳川信康殿と榊原康政殿が到着されました」
大量の糧食を手土産に練兵場へ姿を現す 徳川家康の遺児·徳川信康

「将軍·信玄公、天女様ご無沙汰致しております この信康、陣中見舞いに馳せ参じました」

「ほう 信康殿しばらく見ぬうちに立派になられたのう 家康殿にどんどんと似てきおる それにしても康政、お主がよくここへ来る事を承諾したものよのう?」

「信玄公 ご無沙汰致しております この国の武将として、この戦の行く先を見届けるのは
当然の務めでございます」

ー『出立の間際まで反対していたがな。。。』ー と心の中でつっこむ信康

「天女様、亡き父の事では、あれほどの尽力を頂きながら 天武の招集に駆けつける事が出来ずに日々心を
痛めていました お許し下さい」

「信康殿、貴方には、お館様に与えられた大事な使命が有ります 天武のみんなには
それぞれの使命が。。。この国の為に、力を尽くす場は違えど気持ちは一緒です
何も心を痛める必要など無いのですよ」

エヴァの背後から、進み出た織田信忠、信康の前に片膝をつく
「お初にお目にかかります 織田信長の嫡男·信忠に御座います」
この信忠の所作に周囲の者たちから、緊張が走る
今年の正月に信忠の父、織田信長が信康の父、徳川家康を手に掛けたことを知らぬ者は、この場に居ない
その後、信康には将軍·武田信玄が後見人となり、浜松城を与えられ 
徳川復興の旗印として、また武田・徳川同盟の象徴として務めを果たしていた

「信忠殿、頭を上げて下さい 同じ武田家の庇護を受ける者同士 聞けば天武では敬称も禁止と聞いております 残念ながら天武には入れませんでしたが この国を思う、志を共にする者として接して下さい」

「私の父が、信康殿の父、家康殿への所業を考えると。。。」
さらに頭を垂れる 信忠

「それも天女様から聞いています 織田信長殿には、怨霊が取り憑き悪さをさせていたとか、例えそうでなくとも父親の責を子が負わねばならぬと言うのであれば、我が父も武田と一戦を交え、誰かの父親を手に掛けているでしょう 戦の世で、それを責めても詮無き事でしょう」
信忠の目線まで腰を落とす 信康

「そのように言ってくれると、この1年の間 心の中でもやもやと燻ぶっていた物を晴らしてやる事が出来ます」
「信忠君。。。でいいですか?天武のみなさんを紹介してくれますか? 色々と話を聞いてみたい」

「もちろん! 井伊直政君は知っていますよね 他のみんなを紹介しましょう 信康君あっちです」


「聡明な子供達ですね。。。信康君が、もし天武に入っていたら どんな能力を身に付けていたか見てみたかったですね」

「あそこは榊原康政が超過保護じゃからな許さんのだろうな」

「そう言えばお館様、みんな知っていますので言いますが。。。私、子供を授かりました。。。」

「そうか、子供か。。。ええええっ!! 天女殿に子供!! 天女殿も若いおなごであるから、これほどに驚くのも無礼じゃが。。。天女殿に子供か。。。当然忠勝は、まだ知らぬということか、ちと心細いのう」

「はい ですが、無事に戻ると信じています」

その後も真田昌幸、井伊直虎、浅井長政、お市の方夫妻ら近郊の武将らが続々と駆け付け、天武の子供達との久々の対面を果たし、久し振りに見た、長男·満腹丸が繭に引き籠もっていると知った時の浅井夫婦の顎が落ちんばかりの反応に爆笑が起き
練兵場全体が大いに盛り上がり、活気を漂わせる

2匹のバハムート襲来まで あと7時間 

「母上 江は連れてきてはいないのですか?」

「茶々 江は産まれたばかりですからね 二条城で初(お市の方の次女)と留守番です 次に都へ戻った時には、可愛がってあげてくださいね」

「はい母上!お兄ちゃんと一緒に精一杯可愛がります!!」

「それよりも天女様、満腹丸は本当に大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫です 心配いりません 呪いの進行は完全に止まっています 上空の瘴気の雲を、解除させるためにネボアと言う怨霊を一度開放しますが、私達の総力を上げて必ず倒しますので呪いは解呪されるでしょう」

「お市 満腹丸も武家の子供だ、何があろうと狼狽(うろた)えるでないぞ」

「貴方の、あの満腹丸を見たときの顔は、私よりもよほど狼狽えていましたよ」
周囲に居るみんなが、うんうんと肯く

「それでは皆さん ここでいつまでも立ち話は何ですから、上階の大食堂にお昼を用意しています 
休みたい方には、部屋も用意できますので羽柴組の者に言いつけて下さい」
声を張り上げる 羽柴秀吉

エヴァ達の作る建築物を初めて目にする武将達は、地下だというのに殺生石で煌々と照らされた室内や廊下
空調の整った石造りの壁や床 見る物すべてが珍しくキョロキョロと
首を巡らせながら、階上の大食堂や居住空間へと移動して行く
大食堂へと入ると 想い思いの席へと着いていく
ここでもテーブルに椅子といった 初めて見る様式に戸惑いながらも腰を下ろし
その快適さと食事の質に感嘆の声が上がる

「伝説の竜と戦うと聞いて来たが、こんな立派な建物を破壊できる生き物が居るのか?」

「なんでも一昨日の戦いでは、ドーム状の上っ面と地上階の床は、破壊されたらしい」

「そんな生き物が本当に居るのなら、冥土の土産に見ておかなきゃならないな!」

「天女様達が居る限り、まだまだ冥土に行くことは無いだろ! もしも負けちまったら
みんなで仲良く冥土行きだけどな がっはっは!」
そんな会話が、そこかしこで飛び交い 火竜達の驚異的な強さを聞きながらも
悲壮感など微塵もなく、エヴァ達の勝利を信じて疑わないという事もあるが
戦乱の世をここまで生き残ってきた者達にとって、自分達の想像も及ばない強者が
居ると聞けば、命を賭けてでも見なければならないという衝動は抑え難い物のようだ

「伊達政宗君も、こっちで一緒に昼食にしよう」

「そうそう政宗君、ここに座って 茶々の父上と母上を紹介するね」

「茶々 そう言うかしこまった話は無しにしよう 政宗君の領土は離れているからな
2日では間に合うはずも無かろうが、しかし気持ちでは我等と同じように駆け付けたかった事だろう」

「はい伝書鳩にて文を頂きました 出来る事を精一杯やるようにと」

「そうだな、人間どれほど強く願っても、結局は出来る事しか出来ない、どのような結果になろうとも
誰も君達を責めたりはしないぞ、君の今出来る事を精一杯やってくれ」

「叔父上、叔母上 挨拶が遅れ申し訳ありません」

「ああ信忠、随分と活躍していると聞いているぞ」

「僕などまだまだです 先日の戦いで天武で一番活躍したのは間違いなく茶々ちゃんです 
何百人の命を救ってくれたのは茶々ちゃんですから」

「ベラとフローの言う通りにしただけだよ 一人も死なないで良かったです」

「そうか 茶々も頑張ったのだな、怖くは無かったか?」

「みんなと一緒だから大丈夫です!」

そして隣のテーブルでは、千代と千代の両親、そしてアランがテーブルを囲む
「アラン様は相変わらず気持ちの良い食いっぷりですな ささっこちらの焼き魚もどうぞ!」

「アラン様、は〜い、あ〜んして下さい」
利き腕を失ったアランにかいがいしく世話をする 千代

「自分で。。。食べれる。。。。」

「ほらっ千代 これも食べて頂きなさい 腹が減っては戦は出来んと言いますからな!」

「そうですね。。。戦いの様子をみんなに見て頂く事は出来ないでしょうか?
外に出て見る事は出来ませんからね。。。エント·キングの視覚共有の応用であの壁に映し出すとか? 
お願い!サンドマン!!みんなに見て欲しいの」

「おお〜私らも是非にも見たいですな」

「夢の精霊サンドマンは、みんなの願いを叶えてくれるの みなさんもここから戦いの様子を見てみたいですよね!?」
椅子の上に立ち、大声で問い掛ける 千代

「「「「「「「「「「そりゃ見たいさ!!!」」」」」」」」」」



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