第26話 鳴海城再建

文字数 2,905文字

「ではルイ、早速ですが これを作って欲しいのです 魔力は大丈夫なのですよね?」
エヴァから差し出された設計図を受け取る

「魔力は大丈夫だけど、どこかで見た覚えが。。。あ〜マンダカル要塞か! あそこの攻略には苦労したな」

「鳴海城を見た時に、あの要塞に似ているなと思ったんです 裏手が海で東西に長い形がですね
土魔法でパッパッとお願いしますね」
すべての人を魅了する微笑みを浮かべるが ルイには効き目が無い

「ちょっと待て! 深さ5メートルの総堀に、さらに全周囲に高さ6メートル内部が2階建ての曲輪 3階建ての二の丸、三の丸に 5階建ての本丸 高さ8メートルの櫓が8台。。。5万人収容予定と。。。パッパッと作れるか!!」

「じゃあ3日くらいでお願いします 強化は私がしますから」
ルイの後ろから設計図を覗き込む 羽柴秀吉

「いやいや これを3日間って。。。どこから石を持ってくるのですか!? しかも全て土壁ですか?」

「堀をほった土でいけると思うぞ 足りなければ、掘りの幅が広がるだけだな 考えていてもしょうがない
始めるか ちょっと揺れるぞ気をつけろよ」

そう言うと、堀の中へと飛び込み地面に両手を翳す 目を閉じルイの体が紫色の光に覆われ、その光が渦巻く

ごっごっごっごっごっ!!!と低く重い音が、地中より鳴り響き 深さ5メートル幅5メートルの堀が海へと向かい伸びてゆく

強烈な横揺れと縦揺れが交互に鳴海城周辺を襲う

「おっおっととと!!」 「うわ〜〜地震だ逃げろ!!」
尻もちをつく者 頭を抱えてうずくまる者 腰を抜かす者
すると鳴海城のあった南側がみるみるうちに盛り上がっていき綺麗な台形の丘が形作られていく
啞然と見上げる 羽柴秀吉の配下500名

「ちょっと待ってくれ! 一体何が起こっておるのじゃ!!」秀吉が、盛り上がっていく丘を見上げ 叫ぶ

「ですから 鳴海城の再建ですよ この調子でしたら3日も必要ありませんね さすが土の精霊に愛されているルイです まぁ この世界の魔素のお陰ですけど」
海の手前 3メートルほどで堀を止め 海を背に東に向かい堀を伸ばす

再びごっごっごっごっごっと地鳴りが襲う ものの30分ほどで海から東に向かい長さ400m幅5m深さ5mの堀が出来上がる

「わしらは、このような連中と戦おうとしておったのか? 兵をいくら集めようが勝てるわけもない
これが龍神殺しのルイ」
秀吉の脳裏に織田信長の顔が浮かぶが、頭を振って彼方へと追いやる

ひとっ飛びで堀の縁へと着地し、両手の平を盛り上がった丘に翳す
先程と同じように、紫の光が渦巻き 盛り上がった土の丘が、垂直な壁へと成形されていく

「あれが曲輪になるのですか。。。6メートルの高さで全周囲!?」
夢でも見ているのかと頬をつねる 秀長

「そうですね 西側にも作りますので海からの攻撃も防げます」

「このような城 誰が落とせるというのじゃ!?」
南側の曲輪の外壁が完成しルイがその場で尻もちをつく

「3時間ほど休憩な なにか食わしてくれ」

「あちらに食事を用意していますので そこをどいてください強化しちゃいますね」
そう言うと 杖を掲げ 石化の強化魔法を無詠唱で唱える
杖の先から橙色の光が照射され、その光に触れた土の部分がどんどんと石化していく

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「天女様〜〜 ただいま戻りました〜〜〜」そう叫びながら お雪がエヴァに向かい駆けてくる

「お雪ちゃん おかえりなさい ちゃんと文を届けてくれたようですね」

「はい 私、自分でもびっくりするほど早く走れて、全然疲れないんです!!

「私が、加護を授けましたからね またお願いするかもしれません」

「はい 天女様の為でしたら どこまででも走ります!」

焼け野原と化していた鳴海城が、ルイの土魔法とエヴァの石化の
魔法により全方位を掘りと曲輪に守られ 高さ20メートルの石の本丸が(そび)える
難攻不落、凶悪なまでの様相を呈した要塞が完成しようとしていた

「魔力が残りわずかだな 休憩にする」

「おぉっルイよ 休憩か!? 死合おうぞ!!」
本多忠勝が愛槍を手にこっちに駆けてくる

「忠勝!お前は、休憩の意味を知っているか?」

「魔力とやらを使わなければよいではないか なんなら手を抜いてやっても良いぞ」
挑発するように笑う 忠勝

「まぁいい 相手をしてやる、かかってこい」
そう言いながら、風魔党から拝借したクナイを両手に握る 
この世界の人間では、ありえない速度で間合いを詰め 忠勝が愛槍【蜻蛉切り】を右手下段より、一気に払い上げる
その初動に合わせ 一歩を踏み込み 蜻蛉切りの胴金に左手を置き 回転に逆らわずにふわっと浮かび上がる
空中で1回転すると 忠勝の突きによる追撃をクナイで受け空中で逸らす
ルイの着地と同時に3メートルと短く切った蜻蛉切りを上段から振り下ろしながら【縮地】を使うと
ルイの頭上に穂先が現れる ガキッ!! クナイを十字にして受けるルイ 両足が地面にめり込むほどに重い一撃

「忠勝! 指弾だけでなく、縮地まで盗んだな!!」

「天女様にコツを教えて頂いたのでな」
その後も10分ほど切結ぶが クナイを左肩に受けた 忠勝の負けで終わる

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岡崎城 本丸

「お館様、たった今 天女様よりの文が届きました」
真田昌幸が襖越しに武田信玄に声を掛ける

「入れ 読んでみよ」

「はっ 大野城、佐治信方が我が方に寝返ったとのことです それと
鳴海城の再建が、あと10日ほどで整うので、調度品、糧食を送って欲しいとのことです 
これで知多半島のすべて、鳴海城以東を手に入れた事になります」

「もう大抵のことでは、驚かぬが これを死傷者を皆無で手に入れたのだからのう 信じられぬ話よのう 
さらに焼け野原と化した 鳴海城を2週間足らずで再建とは。。。」

「お館様に日の本を平定せよと、天が望んでいるとしか思えませぬ」

「岐阜へと攻め込むのは、雪が溶けるのを 春を待つより仕方あるまい その前に家康殿の葬儀を終えねばならん 徳川のおもだったものを呼び戻さねばならぬな 昌幸よ 頼んだぞ」

「はっ 直ちに」

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これまでに、この世界が経験したことのない現象
3日間に及び魔力が吸収され、放射されるという異常な現象 人の目で捉えることは出来ないが
ここ鳴海城を中心に魔力の渦が大気を伝わり 遠く離れた土地にまで干渉していた
西に80kmほど離れた 日の本最大の湖 琵琶湖
その湖底で、この星の生物の進化では、けして生まれることのない生命 存在してはいけない生物が
それを封印していた者の魔力に抗い 目覚める兆候を見せていた

その琵琶湖の東岸に佇む 長身の男 髪をボサボサに伸ばし 着ている着物からも浮浪者にしか見えない
その男が、湖底を見つめながら 時折 両手を不規則に湖面に向かい漂わせる

「東の方から、膨大な魔力の奔流を感じてから3日 湖底にいる奴に干渉してしまっているのは間違いない
もし目覚めたら 俺一人では封印を保つことは出来ない さてどうしたものか。。。。」

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