第133話 死闘!伊達政宗

文字数 3,070文字

ドームの東側の壁が、円状に真っ赤に染まり、黒い竜の覇気を浴びて爆散する
ゆっくりとドーム内に脚を踏み入れる 2匹のバハムート、フォゴとナーダ

「みんなの避難が間に合って良かった 天女様が戻られるまで、絶対に奴等を階下には行かせないぞ!!」
階下への重く厚い扉に手を掛けた信勝が、階下から飛び出してきたエフリートの化身と化した伊達政宗の放つ熱量におもわず仰け反る
シュッボ!シュッボ!シュッボ!シュッボ!。。。。その数10体
「エフリートだ!政宗君が10人!? あっ!千代ちゃん!!」

「茶々ちゃん!よかったみんな無事で、私のサンドマンの“陽炎の夢”を政宗君に掛けたの 
天女様も、もう少しで戻られると思うから、それまでみんなで頑張りましょう!!
それと満腹丸君の意識が戻ったよ」

「お兄ちゃんの!?よかった〜早くここを終わらせて、お兄ちゃんに会いに行かないと! みんな頑張ろうね!!」

ドーム内に脚を踏み入れた2匹のバハムートが周囲を見渡し ネボアの気配を探る
気配が探知できない事に、怪訝そうに顔を見合わせあう フォゴとナーダ
そして、西側の壁面に集まっている 天武の面々を見ると、甲高い咆哮を上げる
「「“ギャアアアアアアァァァァァァァァッ!!!!!!”」」
まるで質量をともなうかのような咆哮 残ったドームの壁に反響し、崩れかけた壁面から
パラパラッと瓦礫が崩れ落ちる
普通の生物であれば、圧倒的な生命力の差に萎縮され、腰が砕けるであろう 威圧に
臆することなく、冷静に立ち向かう 天武の子供達

「政宗君、君のエフリートは、赤いバハムートと相性が悪そうだ 僕が赤で、政宗君が
黒いバハムートでいいかい?」

「はい それでお願いします まずは2体を引き離しますね!では、行きます!!」

「みんなは、防御に徹してくれ!!」

全身から炎を立ち昇らせ 10体のエフリートが、四方に散る
ー『千代ちゃんは、こんなのを制御出来ていたのか!? 視界が10個に10人の位置情報が一気に頭に流れ込んでくる!? 筋肉の動きから。。。魔力の流れまで。。。
情報量が多すぎて頭が割れそうだ!! でも。。。やらなければ!!』ー

2匹の竜に向かい最短距離を走る エフリート 

高く跳躍をしながら上空から迫る エフリート

その場で豪炎球を練る エフリート

挟み込むように左右に膨れながら、2匹の竜に迫る エフリート

南北の壁を走り登り 頭上から機を窺う エフリート
それぞれのエフリートが、走りながら、飛びながら左手を突き出し 豪炎球を放つ!!
“シュバッ!シュバッ!ヒュンッ!シュバッ!ビュバッ!!ギュンッ!!シュバッ!!”
正面から左右から頭上から2匹のバハムートに豪炎球が襲い掛かる
それを、その場を動く事なく尾や両腕で受け切る 赤いバハムート フォゴ
直撃を嫌ったのか、一瞬で右へと移動し 頭上から襲い掛かるエフリートに尾の一撃を放ち霧散させる 
黒いバハムート ナーダ
ドーム西側の2匹のバハムートが居た一面が砂埃と噴煙に包まれる
「氏直君!引き離す事には成功しました!」

「よし!政宗君、危ないと思ったら引くんだぞ!!」
 
機動力の上昇したエント·キングの姿勢を低くし、フォゴに向かい滑るように地を駆ける
左腕にアラン特注の西洋盾を装備し、右手に持ったランス《騎槍》を正面に構え
砂煙の中に見える フォゴまであと一歩! 右足が着地すると同時に爪先にすべての力を
集約させ、地を蹴る!! 膝から腰、腰から肩 力を無駄にする事なく腕まで伝え
捻りを加えながら、一気に突き切る!! 
“ガッ!ガッ!ガッ!ガガガッ!!”
フォゴの首の皮を削りながら 突き抜けるランス
目の前のフォゴの口が大きく開かれ渦巻く豪炎に目を見開く 氏直
素早く盾に身を隠し、後ろへと飛ぶ 正面に赤い息吹を受けながら 爆炎に押し戻され
踵で床を削りながら 着地するエント·キング  身体の損傷を確認し、盾を見る

「大丈夫だ!まだ戦える!! アラン先生から頂いた この盾は、竜の息吹にも十分耐えられる!!」


ドームの北壁へとナーダを牽制しながら、誘導していく 政宗
炎の上位精霊であるエフリートの化身と化した 政宗であるが
ベヒーモスの血を受け継ぎ、文字通り この星で考えられる環境として最も高温である
活火山の火口内という過酷な環境で生まれ育ったバハムートには、炎属性の攻撃は
あまりにも相性が悪く、爆裂による衝撃波や、斬撃による物理攻撃に頼る以外に打つ手が無く 
10体のエフリートを駆使し翻弄するも 決め手に欠ける攻撃に ナーダにより
1体。。。また1体と確実に葬り去られていく 
それと同時に再生するのだが、消えた分身と新たに、現れた分身との情報の切り替えに
脳の処理が着いていけずに、まるで脳が、擦り切れるような痛みに顔をしかめる 政宗

5体のエフリートが距離を取り豪炎球を連射し浴びせ続ける 残り5体のエフリートが
エフリートの炎の剣を抜き 高速で移動しながら、すれ違いざまに斬撃を放つのだが
ナーダの硬い表皮に阻まれ損傷を与える事も出来ずに、じりじりと政宗の体力だけが削られていく
「じり貧だけど、これで良いんだ! 天女様が戻られるまでの時間を稼げれば!」
あまりの頭痛に歯を食いしばりながら、独り言ちる

まるで予定調和のような攻防が続き、このままエヴァが戻るまでの時間を稼げるとの思考が油断を呼ぶ 
ナーダは虎視眈々と機会を待っていたのだろう
この10体の精霊の攻撃は、驚異とは言えないが、消滅させても、すぐに再生し術者の魔力が切れるまで延々と付き合わされるのは得策とは言えなかった
ネボアの消息も気がかりであるし、ネボアの言っていた天女と呼ばれる女が治療を終え
この場に参戦してくる事は、避けねばならない 我等の魔力も無限ではないのだから
ナーダは、10体のエフリートの動きを予測する 1体づつを屠っても、すぐに再生するのならば、まとめて消滅させれば、どうだろう? その中に本体が居れば再生も出来まい
今から、2,2秒後に北側壁面の高さ7m付近に4体の精霊が、直径10mの範囲に集まり
2,4秒後には、ここの真上、高さ15mの空間に3体の精霊が一瞬重なる
冷静にそして緻密に空間を把握し戦略を立てる ナーダ その予測の通りに 空間を移動しながら豪炎球を放つエフリート2体が北壁でナーダの描いた 直径10mの円の中に間もなく入ろうとしていた
そして、たった今ナーダに炎の剣で一撃を与え北壁へと飛び去り、壁を蹴りナーダへと再び向かう1体が
円に入る もう1体は剣を振り上げている目の前の精霊
ナーダの身体が左右にブレる 精霊が振り下ろした剣を右肩で受け、左手で喉元を掴み
北壁に向けて瞬歩で飛ぶ その0,1秒後 4人の精霊が円の中へと入ると体内で練っていた
“黒き竜の覇気”を放つ!
左手で掴んでいた精霊が霧散し、直径10mの円の中に居た3体も消し飛ぶ それを横目で見ながら 
元いた場所の上空15mへと瞬歩で飛びながら、身体を捻り 重なった3体を尻尾の一撃で薙ぎ払う!!
一瞬で7体のエフリートを失った 伊達政宗がエフリートの変幻が解け、ドーム中央で膝から崩れ落ちる
鼻から口から耳から血を流し、失ったはずの眼帯の下の目からも血が流れる

「天女様。。。ごめんなさい。。。」力無く顔面から床へと突っ伏し動かなくなる 政宗
残った2体のエフリートも火力を失い 灰だけを残し風に舞う

「「「「政宗君!!!!」」」」
天武の子供達が、政宗へと駆け寄る

それを見た エント·キング改でフォゴと対峙していた 北条氏直がみんなを守る為に
ドーム中央へと後退する



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