75 2017・2・13(月) 柴咲島弧(トーコ) 評

文字数 1,224文字


 2017・2・13(月)
 浦山さん お久しぶりです。
『王将落ち』を送っていただき、ありがとうございました。

 主人公の稔君や、たっちゃん、律子、雪子に久しぶりに会えたような気がして、懐かしかったです。
 登場人物では、新顔の矢島、小百合さんとおじいさんが登場して、稔君を取り巻く環境に広がりがあります。
 しかも、正月公演に集まる子供達の生活圏には階層差があり、学校では同じ場所に組みこまれていても、小百合の家族の住む家と稔やたっちゃん、律子・雪子たちの住む世界との違いが対照的に浮かび上がるのが面白い。

 今回の子供の世界にアクセントを付けているのは、小百合のお母さんと稔のお母さんの対決場面ですね。
 お母さんが、話しの筋を通してきちんとものを言う言い方もいいし、ちょっと辛辣なことを言ってしまったと落ちこむところも、達也が出たものは戻らないとおならにたとえたところも、思わず笑ってしまいます。

 かれらのカッコよさは、庶民的で、千円をきっぱり拒否しながら、稔は頭の中で、千円がどんな額か、自分の一円の小遣い稼ぎを計算するところなど、かわいいし、おかしい。
 達也のひょうきんであけっぴろげな言動がいい味をだしていますね。

 子供たちが夢中になる、当時の小物もリアル。
 将棋や、宣伝ビラ捲きの飛行機から振り撒かれるビラ、カラーひよこ、ミルクキャラメル、すべてストーリーにからみ色合いを付けています。
 将棋のことは分からないので、どうなるかと思ったのですが、私にも楽しく読めました。

 水責めや火責めで色を付けて売られるひよこの話は、律子が生きる世界の残酷さを象徴的に浮き彫りにし、物語全体を単に昭和35年の子どもたちをめぐる、ほのぼの心温まるお花畑的な話にとどめないことで、胸を打ちます。

 生き生きした子どもの世界を描かせたら、なかなか浦山さんに敵う人はいないんじゃないでしょうか。

 最後に、細かい点で気づいたことを挙げておきますね。
 1ページ 後段最後の行 「メガネのツルをつまんで持ち上げた」 「で」をつける
 2ページ 前段真ん中の行 「正松月公園」 「松」を取る
 4ページ 前段の最初の行 「野良犬三日月のが寝そべっていた」 「の」を取る
 柴咲島弧


 2017・2・13(月)
 トーコさん浦山です。
 早速『王将落ち』を読んでいただき、ありがとうございました。

 稔の世界もこの作品で4作目になりました。
 ぼく自身もこんなに続くとは思っていなかったのですが、
 当時のことがどんどん溢れ出てきて困っています。

 でも、書いている時はいつも悩んでいます。
 根本的なことですが、はたして小説になっているのか?
 そして、ノスタルジーたっぷりの話を若い人たちが興味を持って読んでくれるかなということです。

 まぁ、深く考えないのがぼくのいいところなので(笑)、
 トーコさんの評を励みにして、書けることを書いていこうと考えています。

 ありがとうございました。
 浦山稔



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