49 2015・6・12(金) 阿礼さん 評

文字数 2,625文字


 2015・6・12(金)
『夜が匂う夏』読ませていただきました
 浦山さん
 お元気で書いておられることと存じます。
 遅くなりましたが、感想送らせて頂きます。
 浦山さんの書かれる場面は、どれも情景がよく浮かびます。

 律子ちゃんのことが心配です。"
 阿礼


『夜が匂う夏』 阿礼
 昭和三十六年当時の人々が まだ物の少ない中で丁寧に暮らしているのがよくわかります。

 この作品には テーマがふたつあると思います。
 母の家出 と 女性が体を売る栄町 のことと。

 最後が母の帰るところで終わっているので、メインテーマは母の家出 だと思うのですが、それよりも多くが語られているのが明美と栄町のことです。
 父と明美の2泊目のことが 結果的に 母の帰宅をうながす流れになっていますが、ページ数からしても明美と栄町に多くが費やされています。

 前回の『無花果』を読ませて頂いているだけに、律子に目をつける幸夫のことも気になり、律子と無花果が、どろどろした栄町の描写の中の清涼剤のような救いにも感じられました。

 母の家出 →明美の出現
 1泊目 栄町で3人組に襲われる+幸夫とぎょうざ →無花果をとり律子へ 
 2泊目 父と明美 →稔の怒り 迎えに行けと缶を投げつける →父が母に電話 →母帰る

 もしメインテーマが 母の家出であれば、戦争から戻った父の心の闇や仁王像を彫っている父の様子 多くを語らず、それに悩む母と稔、家族三人の模様を中心に描かないといけないと思います。
 もしメインテーマが 女性を食い尽くす栄町と明美 のことであれば、最後は 明美か栄町 のことで終わらなければいけないのでは? と思います。

 明美のことをしっかり書いておられるので、彼女の持つ苦悩を、父との関係だけではなく、気持ちの安らぐ場所として、もっとここに置いてほしい と請う気持ちを、(人様のもんばっかり欲しがって)というひとことで終わらせてしまうには、もったいないと思いました。

 2泊目、明美が父の肩をもんでいる場面、小学校6年生が その場に出ないで翌日照代に言いつけるような行動に出るかどうかが よくわかりません。
 ふたりの体が不自然に密着しているのに気づけば、父よりも母との絆の強い稔なら、「なにしてるの?」とかその場で詰問するのではないか?
 おねしょするのは少し幼いのではないか? と思います。

 照代の「人様のもんばっかりほしがって」という言葉が、p4の心がなくなると なんでもほしがる餓鬼になる という言葉と相関する形になっているのでしょうが、父に向かって缶を投げつけるほどの激しさを持っているのなら、明美と父のいる場面で その激しさを発散する方が自然ではないか と思うのですが。

 母の家出
 父 背中に大きな傷を持つ。戦争のせいで彫刻ばかりしている。

 栄町 犬猫も殺す。女の人は父も生き血も吸われる。男はだまし取られる。
 小さい頃明美と手をつないで眠った幸夫が、女性を働かせたり、姉が妊娠の心配なく客をとれるようになったりすることを喜んでいる。
 律子を見て別嬪だったと言っている。

 栄町と対照的なものとして無花果が描かれていて、その無花果を律子に届けに行き、窓の外から また一緒にあそぼー と大声で呼びかける場面 とてもいいと思いました。

 踏切が間に介在しているのも効いています。

 仁王さんの表情が見る人によって変化する のもそれぞれの人物の心を映し出していて いいですね。2泊目の後で 明美が像を撫でていく場面もいいです。

p15下段で 稔が 仁王像の目に怒りが無いように見える とあるのはやや不自然、父と言い争った後なら、怒りの表情を見るのではないか?
  
 明美 
 二十歳を超えているくらいで、稔とおにぎりを取り合ったり、テレビの番組を取り合ったりするところから、まだ幼さが残っているのは感じられますが、言葉がややおばさんぽくて、照代と同世代に思える部分もあります。
 栄町で働き、3度も掻爬術を受けているので、すれた感じを出すためかもしれませんが、
 たとえば、
4p下段の 寂しがりやな→寂しがりやね などにかえると 少し若い感じが出るかもしれません。(でも栄町の雰囲気 と違うようなら、もとのままで。)

 3度目の術後であることに、明美の血を吸った蚊を稔がたたく場面やアカシヤの雨がやむとき をありがたや節 にかえる場面などがマッチしていていいなと思いました。

 暮らしの様子、ものを大事に扱いながら生活している様子が丁寧に描かれている。
 トイレの落とし紙に雑誌を使用
  金だらいに水を汲んで日向水を作る
  p6の、氷を洗った水を 水を貯めるバケツに流す

 p6下段 幸夫は鋭い目で色んな場所に目を走らせている。 目の言葉がだぶっている。
     稔は夢中でテレビを観ているふりをした。 

 稔は幸夫の行動をずっと見ているように思うので、夢中でテレビを観ているふり までの行動の変化が必要かも?

p7 1行目 画面に注意を向けていなかった より 画面を目で追いながら、なにも頭に入ってこなかった の方がよいかも?

 下段 ローンレンジャー 幼心に「ローレン、ローレン、ローレン」という歌とインデイアン嘘つかないのセリフを覚えていますが、それは この番組だったのですね!発見!

p11.ギョウザの場面 
 下段 幸夫は稔が痛めつけられた分だけ、自分が得をするかのように喜んだ 比喩がいいなと
 嘔吐物をギョウザに入れて焼いてしまう。
 浦山さんの宿題を思い出しました。何度読まされても免疫ができず、気持ち悪くなります~

 テレビの番組 不思議な少年の 時間よ止まれ のセリフなども印象的でした。

 どの場面も目に浮かぶように残りました。
 独断的な感想を書かせていただき、的外れならすみません。

 2泊目の問題の場面で稔はどう行動すればよいと意見が出たか、教えて頂ければ嬉しいです。

 律子のことをずっと心配しています。 


 浦山です。。
 阿礼さん。
『夜が匂う夏』丁寧な評をありがとうございました。
 阿礼さんの分析をもとに、読み返してみますね。
 来週ぐらいから書き直そうと思っています。

 最近、僕は合評をレコーダーに録音しています。
 文字に起こしたときに、メールしますね。

 今年の目標とした『1000枚書き』
 只今640枚!
 この調子で達成するぞ!!

 浦山稔

                        

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