139 このクラスで毎週

文字数 781文字


  このクラスで毎週、権田俊輔の作品評を聞いていて、気がついたことがある。
 作品の優れた点と欠点とを的確に見抜く眼力を持っているので、いつも二種類の評を用意して、合評に臨んでいるのではないかということだ。
 優れた点か欠点のどちらかをメインにして評を組み立て、その場の状況に応じて使いわけているように思える。
 合評で作品が高評価のときは欠点を、低評価のときは優れた点を指摘するのだ。
 つまり、合評の流れの逆を言うことによって、自分の存在を誇示するパフォーマンスなのだ。
 説得力はあるんだけれど、頭脳明晰が顔に表われすぎるんだよな。

 その権田俊輔が口を開いた。
「難解。バックグラウンドを描いていないので読者に対して丁寧さに欠ける。文章が短いので、組み合わさないとわからない」
 なんだ、ぼくのときは流れに乗っかってるじゃないか。
「少女がひとりで夜の公園にいるのはおかしい。都合が良すぎる。作者の意図が見えてしまう。墓地の墓石を『大きな怪獣の背中のようにうずくまっている。』と描いているが、意味がわからない」
 うるさいなぁ。わかっているよ。
 ……ぼくだって、もう、これ以上、いろいろ言われたんじゃ、つらくなっちゃうよ。

 本当に権田俊輔、どうしようもないよな。
 まぁ、ぼくも、強引に書いてしまったからなぁ。

 他の人の中には成程と、うなずける評もあった。  
「考え抜いた結果をポンと出されても戸惑う。考えた過程を書いて欲しい]
「短文を重ね、テンポよく読み進められた。比喩に個性があり、工夫されている一方、時々わかりにくい表現がある」

 一人だけど、励みになる言葉をもらった。
「大人の都合で振り回される兄弟の切なさを感じる。子どもが強く生きざるを得ない状況を恐がらずに描いている意欲作」
 でも、尾之上チューターに、「読みにくい。単純な話を難しくしている」と、とどめを刺された。

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