135 その権田俊輔と、
文字数 1,360文字
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その権田俊輔と、十二月の文化祭のイベントとして開催されたビブリオバトルで、再び会ったんだ。
参加者はぼくを含めて十一名。
観客を合わせると五十名以上の人が、第一回目のビブリオバトルに集まった。
フロアを三分の一に仕切った狭い空間は、熱気ムンムンだった。
「こんなに集まったのは始めてだな」と周りから声が聴こえて来た。
今までは、発表されたテーマに合せた掌篇をその場で書き、その作品を合評するということを続けていたとのことだ。
クジ引きで発表する順番を決めるのだが、どういうわけか、ぼくの次が権田俊輔になり、隣同士となってしまったんだ。
司会者が、ストップウオッチを手に、ルールを説明した。
一人の持ち時間は五分で、四分過ぎると「残り時間は一分」と声をかけ、五分になるとスピーチの途中でも強制終了となる。
質疑応答タイムの発言も評価の対象となる。
最後に観客も含めて全員の投票で、一番読みたくなった本を決める。
ぼくは、『長距離走者の孤独』アラン・シリトー、権田俊輔は『さよならオレンジ』 岩城けい、他の人は『一瞬の夏』沢木耕太郎、『Cの福音』楡周平、『肝心の子供』磯崎憲一郎、『檸檬のころ』豊島ミホ、『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ、『狼と香辛料』支倉凍砂、『たぶらかし』安田依央、『風と光と二十の私と』坂口安吾、『ファミリーポートレート』桜庭一樹だった。
いよいよ始まると、場内は静まりかえった。
一番手は、『一瞬の夏』百田尚樹によく似た人だった。
「『進め!電波少年』で猿岩石がヒッチハイクしたルートは『深夜特急』に沿ってなんですが、危険な地域には行っていません」とつかみで長くなり、藤圭子とのスキャンダル話を口にして作品よりも沢木耕太郎エピソードに終始した。
『Cの福音』は主人公、朝倉恭介のカッコ良さとC(コカイン)の販売方法について熱弁。ぼくは興味を持てなかった。
『肝心の子供』はブッダとその息子、孫の三世代を描いた中編で、セリフが少なくて描写だけの作品です」で始まって、気に入った箇所を朗読。
肝心の内容についての話が、あったのかなかったのか、よくわからなかった。
『檸檬のころ』大きな事件は起きない。ただ田舎の高校生のリアルな普通を切り取った作品で、静かな語り出しに興味をそそられたけど、映画化された話から雲行きが怪しくなった。
「主演の榮倉奈々よりも、谷村美月の演技が良かった」と脱線。
映画を観ていた僕は、榮倉奈々の朴訥とした表情を新鮮に思っていたので、関心は急降下した。でも、本は読もうと思った。
『たぶらかし』は作者と知り合いだというつかみから入って成功。
様々な人物の代役を務める役者の物語。
「人が集まった時には、この中にも演技をしている人がいるんじゃないかと、つい疑ってしまいます」ときれいにオチもついて、きっちり5分で終了。
見事な語り口に拍手が多かった。
『ロリータ』は、身近に起きた事件、知人の息子が少女のワイセツ写真をネットにアップして捕まった話を主にして終わる。
思わず、「作品の何処に惹かれたのかが伝わらない」とツッコミを入れた。
『狼と香辛料』は、アニメ化もされている作品らしいけど、次がぼくの番なので、カンニングペーパーに目が行ってしまいあまり頭に入らなかった。
いよいよ僕の番になった。
その権田俊輔と、十二月の文化祭のイベントとして開催されたビブリオバトルで、再び会ったんだ。
参加者はぼくを含めて十一名。
観客を合わせると五十名以上の人が、第一回目のビブリオバトルに集まった。
フロアを三分の一に仕切った狭い空間は、熱気ムンムンだった。
「こんなに集まったのは始めてだな」と周りから声が聴こえて来た。
今までは、発表されたテーマに合せた掌篇をその場で書き、その作品を合評するということを続けていたとのことだ。
クジ引きで発表する順番を決めるのだが、どういうわけか、ぼくの次が権田俊輔になり、隣同士となってしまったんだ。
司会者が、ストップウオッチを手に、ルールを説明した。
一人の持ち時間は五分で、四分過ぎると「残り時間は一分」と声をかけ、五分になるとスピーチの途中でも強制終了となる。
質疑応答タイムの発言も評価の対象となる。
最後に観客も含めて全員の投票で、一番読みたくなった本を決める。
ぼくは、『長距離走者の孤独』アラン・シリトー、権田俊輔は『さよならオレンジ』 岩城けい、他の人は『一瞬の夏』沢木耕太郎、『Cの福音』楡周平、『肝心の子供』磯崎憲一郎、『檸檬のころ』豊島ミホ、『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ、『狼と香辛料』支倉凍砂、『たぶらかし』安田依央、『風と光と二十の私と』坂口安吾、『ファミリーポートレート』桜庭一樹だった。
いよいよ始まると、場内は静まりかえった。
一番手は、『一瞬の夏』百田尚樹によく似た人だった。
「『進め!電波少年』で猿岩石がヒッチハイクしたルートは『深夜特急』に沿ってなんですが、危険な地域には行っていません」とつかみで長くなり、藤圭子とのスキャンダル話を口にして作品よりも沢木耕太郎エピソードに終始した。
『Cの福音』は主人公、朝倉恭介のカッコ良さとC(コカイン)の販売方法について熱弁。ぼくは興味を持てなかった。
『肝心の子供』はブッダとその息子、孫の三世代を描いた中編で、セリフが少なくて描写だけの作品です」で始まって、気に入った箇所を朗読。
肝心の内容についての話が、あったのかなかったのか、よくわからなかった。
『檸檬のころ』大きな事件は起きない。ただ田舎の高校生のリアルな普通を切り取った作品で、静かな語り出しに興味をそそられたけど、映画化された話から雲行きが怪しくなった。
「主演の榮倉奈々よりも、谷村美月の演技が良かった」と脱線。
映画を観ていた僕は、榮倉奈々の朴訥とした表情を新鮮に思っていたので、関心は急降下した。でも、本は読もうと思った。
『たぶらかし』は作者と知り合いだというつかみから入って成功。
様々な人物の代役を務める役者の物語。
「人が集まった時には、この中にも演技をしている人がいるんじゃないかと、つい疑ってしまいます」ときれいにオチもついて、きっちり5分で終了。
見事な語り口に拍手が多かった。
『ロリータ』は、身近に起きた事件、知人の息子が少女のワイセツ写真をネットにアップして捕まった話を主にして終わる。
思わず、「作品の何処に惹かれたのかが伝わらない」とツッコミを入れた。
『狼と香辛料』は、アニメ化もされている作品らしいけど、次がぼくの番なので、カンニングペーパーに目が行ってしまいあまり頭に入らなかった。
いよいよ僕の番になった。