第116話 赤姫の見張り?

文字数 1,061文字

冥王はスコーンに、
クロテッドクリームを乗せている、
向井をじっと見た。

「何ですか? 
まだ、スコーンが欲しいんですか? 」

「違いますよ」

向井の言葉にムッとする冥王を見て、
アートンとトリアが笑った。

「実は赤姫を向井君の担当にしたので、
それを言っておこうと」

「ゴホッゴホッ!! えっ? 」

向井は驚きのあまり、
喉を詰まらせた。

「大丈夫ですか? 」

冥王が向井の背中をさする。

「あの、どうして俺が!? 」

向井は紅茶を飲んで息を整えた。

「赤姫っていい男に弱いのよ」

トリアが頬杖をついて言った。

「だからってなんで俺が。
新田君がいるでしょ」

「ん~新田君じゃ、
赤姫は荷が重そうだから? 」

冥王は口をとがらせて言う。

「向井君は頑丈そうだし、
特別室に出入りしているのを見てね。
上手くやってるから、
赤姫もちょちょいと、
扱ってくれるかな? って? 」

「無理ですよ。赤姫って、
鬼だってセイくんも言ってましたし」

「そんなに年中、
会うわけではないですから、
大丈夫ですよ。
まあ、親戚のおばさんに、
会う感覚でいてください」

「…………」

向井の面倒くさがる姿に、
トリアが笑って言った。

「ご愁傷様~」

「トリア、君もですよ」

「えっ? 」

驚くトリアに、

「向井君だけにするわけないでしょう。
赤姫も彼を付けるなら、
トリアが担当でいいというので、
向井君には可哀想ですけど、
トリアと仲良く、
赤姫の御機嫌伺をしてください」

「ご愁傷様」

不貞腐れるトリアに、
アートンが笑いながら言った。


――――――――


それからしばらくして、
黒谷が新たな住居に越したのを知り、
向井はその団地に赴いた。

今度の団地は、
少し中心部から離れており、
前の建物より築年数は新しいようだ。

向井が二階の部屋を訪ねると、
黒谷が出てきた。

「あっ、向井さん。
来てくれたんだ。入って」

黒谷は向井を部屋に入れると、
リビングに通した。

向井は綺麗に、
リノベーションされた室内に、
少し驚きながら黒谷を見た。

「随分とお洒落な部屋ですね」

「そうでしょ。でもね、
ここちょっとした訳あり物件なんですよ」

「えっ? 殺人でもあったの? 」

「いや………違う…ん? 
やっぱそうなのかな? 」

黒谷が考えるように首を傾げた。

「実はここ、十七年前に、
政府が立ち入り禁止区域に、
指定していた団地なんだよ。
これだけ綺麗にリノベされてるのに、
住むことは禁止だった物件なの」

「へえ~
それは裏に何かありそうですね」

「でしょう? 」

黒谷もそういうと笑った。

「でも俺が見る限り、
怪しい霊はいなかったし、
今のところ問題はなさそうですけど」

向井はそういいながら室内を見渡した。
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