第98話 牧野リベンジ

文字数 1,224文字

「だったら、俺もリベンジする! 
佐久間の紙切りが準優勝なんて、
悔しいじゃん」

「でも、
佐久間さんの副賞のA5ランクの肉で、
焼き肉して一番多く食べてたの、
牧野君でしょう? 」

「それはそれ、これはこれ。
皆だって食べたじゃん。
で、俺って結局何位だったのよ。
早紀や源じいたちにも負けたんだよ」

「参加できなかった死神達もいるし、
大盛況でしたからね。
またやりますか」

つい数秒前まで、
文句を言いあっていたのに、
もう忘れてる。

言いたいことを言っても許されてしまう。

牧野君のこの性格だけは、
神様が彼に与えた、
特権のように思えるな。

向井は楽しそうな二人を見ながら、
微笑んだ。



数日後―――

地震と水害が続けて発生し、
下界ではちょっとした騒ぎになっていた。

冥界でもアートン達が、
冥王と執務室にこもって、
何やら話し合いをしていた。

特別室も騒がしくなり、
大沢からの呼び出しも頻繁になっていた。

向井がそのことを冥王に伝えると、

「暫くは特別室には行かなくていいです。
何か問題がある時は私が処理します。
なので、
向井君には下界での変動を、
見ていてもらえますか? 」

「結界か………」

向井のつぶやきに冥王の眉が上がった。

「実は虎獅狼から、
結界の事を聞いたんですけど、
詳しいことは冥王から聞けと言われて。
この災害には、
それが関係しているんですか? 」

「この前図書室で、
聞きたいことがあると言っていましたが、
その事ですか」

「はい」

「………いずれ君には説明しますが、
今は下界も冥界も迷走状態です。
結論が出ないままに動いているので、
しばらく様子を見たあと、
君にもお願いをすることに、
なると思います。
安達君のことも頼みます」

「分かりました」

冥王が口を濁すときは、
それ以上今は言いたくないという事なので、
向井は頭を下げると静かに執務室を出た。

下界の災害が、
このまま治まらないとなると………
大きな事件に発展しそうだな。

向井はパトロールの為、
その足で下界に下りた。


二年前――――

田所は下界から戻ると、
死神課の電子掲示板を眺めていた。

「ほお~
今回は特例四人も入るんだな。
去年は二人、一昨年は三人。
これで少しは楽できるかな」

「どうしたの? 
なんか楽しそうだね~」

早紀が田所に声をかけた。

「電子掲示板? 
へえ~今年は四人も入るんだ。
去年は私と弥生ちゃんの、
二人だったからね」

「高田さんが再生されるから、
また一人減って増えてくれないかなと、
思ってたんだよな」

田所が両腕を組んだまま、
早紀を見た。

「俺がここに来た八年前は、
特例も人数が多かったんだよね」

「えっ? そうなの? 」

「ああ。
昔は大所帯だったらしいけどね。
俺が来た時は、
それでも二十人はいたかな。
なのに一年後には、
俺と高田さんだけになって。
十八人も続けて再生される? 
ビックリだよ」

「あははは。それは驚くよね。
じゃあ、倉田君達がきて、
ホッとしたでしょ」

「したした。
で、早紀ちゃんと弥生ちゃんがきて、
仕事が楽になるぞって思ったな」

田所が笑うと、セイがやってきた。
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