第63話 魂のオーラ

文字数 1,281文字

休憩室に戻ると、
ソファーで気持ちよさそうに寝ている、
牧野と安達の姿があった。

仲がいいんだか悪いんだか、
寄り添って寝ている姿は、
子供のようで可愛い。

向井はフッと笑った。

「安達君の様子は普通だったよ。
あの感じなら仕事に復帰しても、
大丈夫みたいね」

早紀がオードブルをつまみながら、
一人チューハイを飲んでいた。

弥生も仕事に戻ったようだ。

「寝てる姿は、
天使みたいなんだけどね~
ずっと寝てろって感じ? 」

早紀が笑った。

向井も缶ビールを持ってくると、
マリネをつまみながら飲みはじめた。

「安達君の魂って、
普通の霊感を持つ人と、
ちょっと違うんだよね」

早紀がチキンを食べながら小声で言った。

「えっ? 」

「私さ、
色んな霊魂を配達してるからか、
霊の持つオーラというか違い? 
なんとなく感じるのよ。
特例の霊魂は普通なんだけど、
安達君の霊魂だけは、
何とも言えない……
ん~上手く説明できないんだけど、
違うのよ。
それが不思議だったんで、
今回倒れた時にやっぱりと思ったの」

早紀は、
少し離れたソファーで寝ている、
二人を見ながら、
聞こえないように声のトーンを下げた。

「まいったなぁ~
早紀ちゃんには気づかれてたんだ」

「まあね。
少し魂の質が違うんだろうなって、
ことくらいだけどね」

「安達君は魂に問題を抱えているらしくて、
冥王が心配してたんだけど、
これなら俺がいなくても大丈夫かな」

「なに? 忙しいの? 」

「ん~そういうわけじゃないんだけどね。
冥王のせいで本業より雑用が増えててさ」

そんな話をしてると、
エナトが向井を呼びに来た。

「特別室から呼び出し来てます。
向井を呼んでこいって。
あの人たちって何様なんですかね」

「お殿様は思い通りにならないと、
癇癪おこすんですよ」

「向井さんも大変ですね。
じゃあ、お願いします」

エナトが去ると、
向井はふぅ~と大きく息をついてから、
立ち上がった。

「向井君はストレスで倒れそうだね」

早紀は同情するような顔で見上げると、
手を振った。



特別室―――――

円卓テーブルを囲んで、
何やら話し合いをしているのは、
元大物議員ら四人。

既に死人だが、
権力にしがみついて、
離れられない霊というものは、
いつの時代もいるものだ。

この特別室は、
そんな霊の受け皿になっており、
前冥王の時代から受け継がれている。

「死んでもこのように、
国を案じなければならんとは、
全く以てこの国はボンクラばかりだな」

大沢は皮肉っぽく笑うと言った。

「ボンクラだから、
自分達で自分の首を絞めてくれる。
エンタメというエサを与えてやれば、
忘れるのも早い。
刃向かう力をそいでやればいいだけだ」

須原も冷ややかに笑い、
酒を一口飲んだ。

「おい!! そこのお前。
向井はまだ来んのか? 」

下品なだみ声の道川は、
入り口に立つ死神を見ると怒鳴った。

「ただいま呼んでいますので、
もうしばらくお待ちください」

死神は頭を下げると言った。

「死んでも役に立たない奴は無価値だ。
我々がお前らにどれだけのものを、
与えてやっていると思っているんだ。
死んでも国の為に働く我々とは、
雲泥の差だな」

灰田が見下すように言い、
死神はそんな言葉のサンドバッグに、
じっと耐えていた。
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