第18話 賽の河原

文字数 1,112文字

賽の河原は子供のうちに亡くなった、
親不孝者という事で、
石を積んでは壊されと言われているが、
冥界では亡くなった子への思いを、
親が悲しみ安らぐまで、
子供は転生できないとされている。

賽の河原には、
そんな霊魂が集められていた。

子供を思う親の気持ちは、
そんな簡単に消えるものではないが、
時が経てば薄らぐものである。


河原には子守鬼がいて、
子供の面倒を見ている。

賽の河原では六歳までの子供が、
石積遊び、鬼ごっこなどをしながら、
親の思いが薄れるのを待っている。

その後、
気持ちが和らいできたものから、
消去課に運ばれる。

七歳を過ぎると成人と同じ扱いになるが、
サロンではなくホームでの生活になる。

十歳になると親の悲しみが強くても、
引き裂かれ再生に回される。

その際に保護課には、
リハビリプログラムがあるので、
十歳までの子供は魂再生療法を受け、
待つことなく再生される。

ただし、ネグレクトに関しては、
賽の河原に一旦運ばれてからすぐに、
保護課のカウンセリングへ回され、
再生へと進む。

十六歳から通常サロンでの生活になるが、
それまではホームで待たされることになる。


賽の河原は、
下界では子供の罪とされているが、
冥界での講義では、
人間の生そのものと教わる。

それが人間の欲には限りがなく、
満足することが少ないことから、
生まれてから人間は、
賽の河原を歩むと言われる。

賽の河原の石積の話は、
人生苦行をさしているのかもしれない。


向井と安達が玄関口で、
舟から降りる子供たちを待つ。

冥界から放たれる光の渦は、
老若男女関係なく、
彷徨う霊魂を上へとあげる。

ただその渦からはぐれると、
子供霊に関しては保護課だけでなく、
ホームからも死神が、
下界に降り連れて行く。

子供の死亡率も多い為、
六歳までを受け入れている、
賽の河原からの舟は、
日に何度も来ることがあれば、
反対に何日も来ないこともある。

なので、
賽の河原でも子供の霊で溢れている。

今回は数が少ない代わりに、
虐待された子供の霊が何体かいる様だ。

船頭から書類を受け取り、
向井が確認する。

「今回は少ないですね。
運ばれてきた六人のうち、
三人がネグレクトですか」

「ベビーがいなかったね。
六人とも四歳だそうだ」

「わかりました。ご苦労様でした」

向井がサインをすると、
船頭は帰っていった。

安達は目つきが鋭いので、
子供が怖がるかと思いきや、
意外と子供には好かれる。

魂として冥界に上がってくる子供は、
かなり浄化されているので、
虐待されていても、
魂自体は概ね修復されている。

子供ならではの治癒力なのだろう。

「ネグレクト三人は安達君が、
リハビリステーションにお願いします。
残りの三人は俺が消去課に送るので」

「わかった」

安達は子供の手を引いて、
歩いて行った。
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