第101話 特例新田誕生

文字数 1,017文字

次の日―――

狭間がやってくると、

「向井君はこのまま一度、
冥王にお会いください。
案内はアートンがするので、
そこでお話があります。
牧野君と新田君はこっちへ」

向井は部屋を出たところで、
アートンに連れられ、
冥王の待つ執務室へと向かった。

部屋に入ると、
そこにはもう一人六十代位の男性がいた。

細身でピシッとスーツを着た、
執事のような印象だ。

「向井さんを連れてきました」

アートンはそれだけ言うと頭を下げ、
部屋を出て行った。

「君が向井君? 」

これが冥王?

想像と随分感じが違う?

向井は手招きする冥王の近くに。
歩いて行った。

「いい男だね~
今年は新田君といい豊作の年だな」

冥王が笑った。

えっ?

向井が戸惑っていると、

「冥王。彼、困ってますよ」

横の男性が助け舟を出した。

「初めまして。私は高田と言います。
君が来たことでやっと再生できて、
ホッとしました」

「高田君の任務終了に伴い、
新しい派遣課調査員を待ってたんですよ。
タイミングよく君が来てくれて、
助かりました」

冥王はそういうと椅子から立ち上がり、
向井の手を握った。

「とりあえず高田君から話を聞いて、
引継ぎが済んだら、
詳しい話はそのあとします」

「じゃあ、向井君、
こちらで話しましょう」

高田はそういうと、

「奥の部屋をお借りしますよ」

と冥王に言い、向井を連れて行った。


――――――――


冥王室は書庫と小さな応接室があり、
寝室は部屋を出た隣にあった。

高田は応接室のドアを開けると、
向井を入れた。

中にはローテーブルと、
ソファーが置かれていた。

「どうぞ。腰を下ろしてください」

高田も真向かいでソファーに座ると、
タブレットを開いた。

「これはこのまま君に、
引き継いでいただきます。
この中に派遣霊と、
その記録が入っています。
仕事の内容は聞いていますか? 」

画面を見せながら話し始めた。

「はい。
室長から大まかな説明は受けました。
死後の世界が、
こんな風になっているとは知らず、
ちょっと驚きましたけど」

「ははは。そうですよね。
私もビックリです」

二人は顔を見合わせ笑った。

「派遣課は特別室も担当するので、
そちらの方が大変かもしれません」

「特別室…ですか? 」

向井が怪訝そうに聞く。

「はい。詳しいことは、
冥王から説明があると思いますが、

特別室は少し神経を、
すり減らすことになるかもしれませんので、
覚悟しておいてください」

「はあ」

向井は首をかしげて返事をした。

「それとこれも、
お話しておいた方がいいかな? 」

高田は少しの沈黙のあと口を開いた。
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