第49話 冥界婚

文字数 1,011文字

花村とまり子の結婚式が行われたのは、
工房とギャラリーが完成してから、
更に半年後――――

ギャラリーには多くの冥界人が集まり、
ささやかどころか華やかな式となった。

冥界結婚式がみられることは、
滅多にあることではないので、
特例も死神も、
時間を作って参列していた。

だがそこに、
牧野と安達の姿だけがなかった。

その理由が――――

「ええ~なんで今日に限って、
悪霊が増えるんだよ!! 
昨日のうちにあれだけ除去したのに、
なんで? ねえ、なんで? 」

「それは、
悪霊さんに聞いていただかないと」

セイが言う。

「倉田も岸本も来てるんだろう? 
ちょっと手伝ってよ~」

「嫌だよ。
たまの息抜きくらいさせろよ。
どっさり悪霊持ってきてやったろ? 」

「俺達からのご祝儀だからね」

倉田と岸本は笑いながら、

「ほら、行ってこいよ」

と追い立てた。

牧野はぶつくさ文句を言うと、
安達とエナトと一緒に出動していった。


「おや? 
若い二人は参加しないのかい? 」

マントを羽織って、
仰々しくギャラリーにやってきた冥王が、
牧野たちの姿を探しながら言った。

「今日は朝から悪霊が騒ぎを起こしてて、
牧野君たちは、
参加できなくなったんですよ。
あんなに楽しみにしてたのに」

「それは気の毒だな」

「大丈夫ですよ。
我々撮影隊がVTR作りますから」

セイがカメラマンを連れてやってきた。

「写真は加納先生が撮ってくれるので、
ギャラリーに飾ろうと思って」

「それはいいね~
このギャラリーは世界中どこを探しても、
見ることのできない特別な場所だからね」

冥王は自慢げに言うと、

「では、冥界婚を執り行いましょう」

両手を広げてギャラリーに入っていった。

「誰が主役なのか、分かっているんだろうか」

向井は苦笑いすると、後に続いた。


数時間後――――

結婚式も無事終わり、
誰もいなくなった静かなギャラリーを、
向井は一人見て回っていた。

花村とまり子は消去課に進み、
二人仲良く再生へと進んでいった。

冥界で結ばれた魂は、
来世でも結ばれる運命は、
高いのだそうだ。

閻魔帳の記載で証明されているらしい。

彼らが再び亡くなった時、
俺は延長されて、
まだ働いているんだろうか……
向井はそんなことを考えながら、
作品を一つ一つ見ていた。


ギャラリーは明日から、
誰でも見ることができる場所となる。

妖怪には冥界で悪さをすれば、
消滅させられてしまう、
開発室が作った、
ナンバーブレスの装着が決まった。

ギャラリーを見るのは自由なので、
虎獅狼も千乃も楽しみにしていた。
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