第99話 特例 向井誕生

文字数 1,065文字

「二人で何話してるんですか? 」

「ん? これ」

早紀はそういうと、
二人は同時に電子掲示板を指さした。

掲示板には番号だけで名前はない。

セイが赤ランプを見て、
納得したように笑顔になった。

「そうなんですよね~
今日二人冥界に来るので、
四人揃ったところで、
一ヶ月間の講義と訓練が始まります。
特例としてのお仕事は、
約一ヶ月半後になると思いますよ」

「どんな人が来るんだろう」

三人は赤ランプをじっと見つめた。


――――――――


三途の川から、
一旦サロンに運ばれたと思ったら、
そこから死神と呼ばれるものに連れられ、
向井は広い一室に連れていかれた。

自分が死んだときの記憶があいまいで、
痛みが消えた後、
気が付いたら死神に連れまわされて、
移動していた。

服も上下でカジュアルな、
スウェットに着替えさせられ、
ここに来た。

部屋に通されると、
中には二人の若者がいた。

会議テーブルに椅子が並べられ、
二人は微妙な距離で席についていた。

向井は部屋に入ると、
空いている椅子に腰かけ、
二人をじっと見た。

一人は……どこかで見た顔なんだけど、
思い出せない。

もう一人は金髪の若者だ。

「お前は何で死んだの? 
俺は抗争に巻き込まれちゃってさ」

これが牧野との初対面だった。

「ここにいるという事は……
やはり死んでるんですよね」

「なに? 
あんた死んだこと分からないの? 」

牧野はあきれるように向井を見た。

「君は組関係の人ですか? 」

「違うよ。
たまたま通りかかった公園で、
半グレの抗争に巻き込まれて、
殺されたんだよ」

「その風貌だから、
仲間と間違えられたんだね」

それまで黙っていた青年が口を開いた。

「好き勝手に言ってんじゃねえよ。
芸能人のあんたは、
どうしてここにいるんだよ」

牧野のその言葉に向井は声を上げた。

「あっ!! 」

そうだ。新田涼だ。

向井は人気俳優の顔を思い出した。

「俺はファンに押し倒されて、
気が付いたらここにいた」

「ファンに殺されたってことか。
人気者だな~」

「別に殺されたわけじゃないよ。
君も半グレに囲まれて死ぬなんて、
人気者だよね」

新田はそういうと、
小さな笑みを浮かべた。

牧野が言葉を失う姿に、
この俳優は面白いな~と、
向井も笑った。

三人がそんな話をしている所へ、
五十代くらいの、
筋肉質の男性が入ってきた。

「おっ、揃ってるね。

じゃあ、
これからの君たちの仕事について、
説明するから」

「仕事!? 」

三人が同時に驚きの声を上げた。

「そうですよ。
君たちは寿命を全うしないで、
亡くなっているので、
ここで残りの人生分、
働いていただくことになります」

「えええええ~!! 」

三人の声は廊下まで響き渡った。
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