第107話 不思議な魂の持ち主

文字数 1,090文字

「特例になるというのは、
本当に特別なんですよ。
魂魄は魄が強いと鬼になり、
人に害をなします。
鬼は人というのは嘘ではありませんよ。
特例は精神も肉体も、
強い存在のものにしか務まらないので、
子供は除外されます。
鬼は陰、神は陽。
その両方を持った者が鬼神であり、
君達特例です。
誰でもなれるわけではないんです」

冥王はそういうと、
真剣な顔で向井を見た。

「それにね。
人間は霊が好きなんですよね。
ほら、
よく守護霊の話などもするでしょう。
でも実際は殆ど光の渦に乗って、
ここから成仏されてるので、
いない人が多いんですよ」

「えっ? はっ? 」

向井が間抜けな声を出した。

「守護霊の多くは補導できなかった、
光の渦に乗らなかった霊です。
別に悪霊でもないので、
無理に祓いませんけど、
その人間と霊波動が合った、
という事でしょう。
守護するわけではありませんが、
その人間のそばにいたければ、
守らないわけにいきませんから、
自然と守護しているというわけです」

冥王が笑った。

向井は人間だった時の情報が、
どんどん崩れてきて、
何が何だか分からなくなってきていた。

「そんなに難しい顔をしなくても、
ここにいれば、
自ずと分かっていきますよ。

君たちの先祖だって、
調べればいつ生まれ変わっているのか、
分かります。
もちろん君たちのその前のこともね」

冥王が笑いながら話す。

「その黒谷君と高田さんも、
不即不離の関係を保っていたので、
向井君も大丈夫です」

冥王にそういわれて、
黒谷が住むという団地に、
来てみたのはいいが……

引っ越しする人が多いのか、
人が次から次へと、
荷物をもって移動していた。

向井が不思議そうに眺めていると、
一人の男性が近づいてきた。

「もしかして高田さんの次の人? 
ん? 人でいいのか?」

そういって腕を組んで考え込むと言った。

中肉中背。

人懐っこい笑顔の作業着姿の男は、
向井を見ると話しかけてきた。

「俺、黒谷。
高田さんから聞いてない? 」

「あ、いや、向井です。
想像していたより若くて、
少し驚きました」

「えっ? 俺、カッコいい? 」

「いや、カッコいいとは……」

「まいっちゃったなぁ~あははは」

人の話をきちんと聞くタイプではないようだ。

「写真で見ると、
もう少しがっちりして見えたので」

「どの写真? 見せて? 」

向井が高田に渡された、
タブレットを見せると、

「これ、六年位前の写真じゃん。
この時はリストラにあって、
人生お先真っ暗だった時だな。
彼女にも振られて、
仕事も住むところもなくなってさ。
もう、
死ぬしかないかって思ってたら、
高田さんに会ったんだよ」

「そうなんですか」

「今はこの時より年は食ってるけど、
体重落ちてるからな」

黒谷は明るく言った。
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