第55話 安達のリング 

文字数 1,047文字

冥界につくと死神課の前で安達を下した。

「安達君!! 」

向井が声をかける。

特例が病気になることはないので、
倒れる原因は他にあるはずだ。

向井が安達に触れて、
ふと表情を硬くした。

「どうしたんですか? 」

死神達が集まってきた。

「医務室に連絡してくる」

早紀がそういって歩き出すのを、
向井が止めた。

「早紀ちゃん、ちょっと待って。
工房に冥王がいるはずだから、
呼んできて」

「えっ? 冥王? 」

「そう。
これは冥王じゃないとダメな気がする」

向井はそういい、
気を失ったままの安達を、
静かに床に寝かせた。

「息してますよね」

オクトが横にしゃがみこみ、
安達の体に触れた。

!! 熱い……確かに少し異常ですね」

向井は安達が装着している、
リングが消えかかっているのを感じ、
どういうことだ? あの時何があった? 

倒れた瞬間を思い返していた。

「どうした? 安達君が倒れたって? 」

冥王はやってくると安達の横で、
しゃがむ姿勢になった。

「冥王。
安達君のリングが消滅しかかってます」

向井が小声で言う。

「オクト!! 」

「はい」

開発室長(究鬼)に例のものを、
私の部屋まで運んでくるように言ってくれ」

「分かりました」

オクトがその場を離れる。

「安達君はどうなってるの? 」

早紀が少し狼狽えた様子で見ていた。

「疲れがたまって霊に対して、
制御ができなくなっているんだろう。
大丈夫だ。君も疲れてるだろうから、
少し休憩しなさい」

冥王は立ち上がると早紀の肩を叩き、
向井を見下ろす形で言った。

「安達君を連れて部屋に来てください」

向井は冥王の真剣な表情に頷くと、
安達を静かに抱き上げた。

二人が立ち去る姿を見ながら、

「私、
冥王の顔を間近で初めて見た……
イケオジ? カワオジ? ダンディ? 
冥王っていい男じゃん。ねっ、ねっ」

早紀は興奮したように、
近くにいたエルフの肩を叩いた。

――――――――

冥王室のソファーに寝かされた安達は、
苦しそうだがうなされるでもなく、

ただただ深い眠りについているように、
動かなかった。

「少し様子がおかしかったんで、
気になってはいたんですけど、
まさかいきなり失神するとは、
思わなくて。
状態を見てこれは、
冥王に知らせた方がいいのではと」

冥王は安達に触れると、
体全身を光で包んだ。

「彼は特殊な子なんですよ。
出来るだけ気をつけて、
見ているんですけど、
ついて回るわけにもいきませんからね。
向井君が気づいてくれて助かりました」

「俺に安達君を頼むと言われたのは、
このことが理由なんですか? 」

「君はよく周りを観察できているので、
安心して任せられますからね」
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