第42話 高価な宝石
文字数 1,405文字
「宝石って高いよね~
私が持ってたのだって、
結構したからなぁ~
そういえばあれ、
どうなったんだろう」
「身寄りがいなければ、
残余財産の国庫への帰属になるね」
横のテーブルにいた美樹本が、
本から目を離さずに言った。
「なにそれ」
「身寄りがいない場合の財産は、
国に従いますという事かな。
まあ、財産があればの話だけど」
美樹本は元弁護士で、
別に思い残しがあるわけではなく、
再生の順番待ちでサロンにいる。
現在死神ディッセが、
彼から法律関係の教えを受けていた。
「安月給で貯金もないから、
そんな問題は心配ないけど、
じゃあ私の遺骨ってどうなってんの?」
「ああ、
それは死神課で確認できますよ。
以前聞いたら、
俺達のは無縁遺骨だから、
合葬で散骨されてるそうです」
向井が言った。
「確かにここ何十年で、
無縁仏が増えてるので、
合葬墓も満杯で、
散骨にされてるところもありますね。
地域によってはビニール袋に入れて、
ゴミと一緒に処分されてるみたいですよ」
「うそ………でしょ?」
驚く早紀に美樹本は意味ありげに笑うと、
「僕も独り身なので、
亡くなった後のことは、
既に決めてましたから」
と言った。
「美樹本君って幾つ?
若いのにそんな先のことまで、
考えてたの? 」
早紀がビックリした表情になった。
「弁護士をしてると色々あるんですよ。
人間いつ何が起こるかわからないので。
ほら、こうやって、
死んじゃうこともあるじゃないですか。
でも僕もそろそろ、
消去課に進めるそうなんで、
決まれば皆さんともお別れになります」
「そうなの。寂しくなるなぁ。
来世では殺されない人生が、
送れるといいわね」
早紀の言葉に美樹本が片笑んだ。
「まあ、頑張ります」
美樹本はある事件の被疑者に刺され、
死亡している。
魂の治療後一年待って、
ようやっと消去課に回されるくらい、
死人の順番待ちもひっ迫していた。
冥王が消去課の人数も、
増やしたいと言っていたが、
今の状況では難しい。
「まり子さんも石が届いたし、
作品の完成も間近ですか? 」
向井が言うと、
「もうほとんどできてるんだけど、
あと少し欲しい石があるから、
それが手に入ったら完成させるわ。
そのあと、
次に進むつもりよ。
向井さんにも色々無理言っちゃって、
ご免なさいね」
まり子は微笑むと作りかけの作品を、
見せてくれた。
静かに布を取ると――――
「これって、宝石画ですか? 」
美樹本も椅子から立ち上がり、
まり子の横に立った。
「この世界にきて、
ジュエリーじゃない、
もう一つの宝石の可能性を、
残したくなっちゃったのね」
まり子がウフフと笑った。
「最初はデザイン画を描いてたんだけど、
考えたら職人さんがいないじゃない。
そんな時にふと思ったの。
これが作りたいなぁって……
死んだ世界も美しいでしょう? 」
高級な石をふんだんに使った、
冥界の世界。
砕かれた宝石の輝きの中に、
希少石が散りばめられていて、
何とも形容しがたい景色が表現されていた。
「あと、ここにどうしても必要な石を、
幾つか入れられたら仕上がるから、
ギャラリーが出来たあとに、
花村も連れて行くつもり。
あの人、
私と一緒ならついてくるわよ。きっと」
「あはははは。凄い自信~」
早紀があきれ顔で笑った。
向井も笑いながら、
こうやって一人また一人と、
消えていくんだな。
そんな冥界の移り変わりも、
向井にとっては嬉しくもあり、
寂しくもある。
成仏はしてもらいたい気持ちとは裏腹に、
そんな思いもあり、
少ししんみりした面持ちで、
彼らの姿を眺めていた。
私が持ってたのだって、
結構したからなぁ~
そういえばあれ、
どうなったんだろう」
「身寄りがいなければ、
残余財産の国庫への帰属になるね」
横のテーブルにいた美樹本が、
本から目を離さずに言った。
「なにそれ」
「身寄りがいない場合の財産は、
国に従いますという事かな。
まあ、財産があればの話だけど」
美樹本は元弁護士で、
別に思い残しがあるわけではなく、
再生の順番待ちでサロンにいる。
現在死神ディッセが、
彼から法律関係の教えを受けていた。
「安月給で貯金もないから、
そんな問題は心配ないけど、
じゃあ私の遺骨ってどうなってんの?」
「ああ、
それは死神課で確認できますよ。
以前聞いたら、
俺達のは無縁遺骨だから、
合葬で散骨されてるそうです」
向井が言った。
「確かにここ何十年で、
無縁仏が増えてるので、
合葬墓も満杯で、
散骨にされてるところもありますね。
地域によってはビニール袋に入れて、
ゴミと一緒に処分されてるみたいですよ」
「うそ………でしょ?」
驚く早紀に美樹本は意味ありげに笑うと、
「僕も独り身なので、
亡くなった後のことは、
既に決めてましたから」
と言った。
「美樹本君って幾つ?
若いのにそんな先のことまで、
考えてたの? 」
早紀がビックリした表情になった。
「弁護士をしてると色々あるんですよ。
人間いつ何が起こるかわからないので。
ほら、こうやって、
死んじゃうこともあるじゃないですか。
でも僕もそろそろ、
消去課に進めるそうなんで、
決まれば皆さんともお別れになります」
「そうなの。寂しくなるなぁ。
来世では殺されない人生が、
送れるといいわね」
早紀の言葉に美樹本が片笑んだ。
「まあ、頑張ります」
美樹本はある事件の被疑者に刺され、
死亡している。
魂の治療後一年待って、
ようやっと消去課に回されるくらい、
死人の順番待ちもひっ迫していた。
冥王が消去課の人数も、
増やしたいと言っていたが、
今の状況では難しい。
「まり子さんも石が届いたし、
作品の完成も間近ですか? 」
向井が言うと、
「もうほとんどできてるんだけど、
あと少し欲しい石があるから、
それが手に入ったら完成させるわ。
そのあと、
次に進むつもりよ。
向井さんにも色々無理言っちゃって、
ご免なさいね」
まり子は微笑むと作りかけの作品を、
見せてくれた。
静かに布を取ると――――
「これって、宝石画ですか? 」
美樹本も椅子から立ち上がり、
まり子の横に立った。
「この世界にきて、
ジュエリーじゃない、
もう一つの宝石の可能性を、
残したくなっちゃったのね」
まり子がウフフと笑った。
「最初はデザイン画を描いてたんだけど、
考えたら職人さんがいないじゃない。
そんな時にふと思ったの。
これが作りたいなぁって……
死んだ世界も美しいでしょう? 」
高級な石をふんだんに使った、
冥界の世界。
砕かれた宝石の輝きの中に、
希少石が散りばめられていて、
何とも形容しがたい景色が表現されていた。
「あと、ここにどうしても必要な石を、
幾つか入れられたら仕上がるから、
ギャラリーが出来たあとに、
花村も連れて行くつもり。
あの人、
私と一緒ならついてくるわよ。きっと」
「あはははは。凄い自信~」
早紀があきれ顔で笑った。
向井も笑いながら、
こうやって一人また一人と、
消えていくんだな。
そんな冥界の移り変わりも、
向井にとっては嬉しくもあり、
寂しくもある。
成仏はしてもらいたい気持ちとは裏腹に、
そんな思いもあり、
少ししんみりした面持ちで、
彼らの姿を眺めていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)
(ログインが必要です)