第81話 賑やかな昼食

文字数 1,014文字

午後になり冥界に戻ると案の定、
牧野がご立腹で冥王と一緒に、
不貞腐れていた。

「楽しかったですか? 」

エルフが笑顔で聞いた。

「凄かったよ~
沢山のお店があってね。
ほらこれ~」

そういってネイルを皆に見せた。

「えっ? 
メンズネイルもやってくれるの? 」

エルフが驚いて安達の両手を見た。

「女性陣がネイルチップのお店で、
気に入ったものを購入したんですけど、
安達君が不思議そうに見てたんで、
お姉さんが付けてくれたんですよね」

向井が説明をした。

「シルバーにパール付けてもらった。
カッコイイでしょ。
そうだ。
みんなにマフィンとかケバブとか、
色々買ってきたよ」

向井とティンに荷物を持たせて、
今日の安達はお殿様状態でご機嫌だ。

「凄い量だね」

ソファーに寝転がっていたエナトも、
驚いた表情で笑った。

「俺をのけ者にしやがって。
食ってやる!! 」

牧野は飛び起きると、
テーブルに並べている、
ケータリング容器を取りに来た。

向井は、
しょんぼりしている冥王の横に座ると、
小さなラッピングを手渡した。

「はい。冥王にはこれ。
特別ですよ。シルバークレイのリング。
安達君が選んで買ったんです。
高いので足りない分は、
俺が払ったんですから、
大事にしてくださいよ」

ヘビのモチーフに、
ラピスラズリがはめ込まれている。

「おお~カッコいいですね。
安達君が選んでくれたんだって? 
有難う」

「えへへ」

照れくさそうに笑う安達を見て、
冥王は嬉しそうだ。

「息子の成長はどうですか? 
今のところすくすく育ってますよ」

「何言ってるんですか。ここにいる子は、
みんな私にとっては子供ですよ」

「そう思うなら、
これ以上仕事を増やさないでください」

向井が言うと、
ティンがお好み焼きを持ってきた。

「ホットドッグは牧野君に、
全種類持っていかれました」

「なんと。
あの子の腹はどうなっているんでしょうね」

「他のがよければ取りに来てください」

「いや、お好み焼きでいいですよ」

休憩室はさながら、
立食パーティーのように、
賑やかになっていた。

田所、新田もやってきて、
ワイワイ楽しそうだ。

冥王も『おいしいですね~』と言いながら、
嬉しそうに口に運んだ。

「君たちは食べないのか? 」

「俺達は安達君に連れられて、
色々食べてきちゃったんですよ」

「ここに来る前は食も細い子だったのに、
冥界ではよく食べるようになって、
それだけでも安心です」

「体の負担もないみたいですし、
安達君にとって、
お祭りみたいなものは初めてで、
楽しかったんじゃないですか」
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