第105話 モニター騒ぎ

文字数 1,018文字

「君が安達君? 」

向井は休憩室で、
一人座っていた青年に声をかけた。

冥王から話を聞いて、
会うことができたのは三日目だった。

確か十七歳と聞いたが、
見た目はかなり幼い。

小学生………
中学生くらいにしか見えない。

鋭い目つきも、
よく見るとおびえているような、
苦しそうな印象だ。

そういえば冥王が、

「彼は君達とは、
少し違うところがあって、
それで額の所にリングを付けています。
まだ仮のものなので、
もう少し開発された、
リングが出来上がれば、
印象も変わってくると思います。
君達の思う普通の生活を、
送ったことがないので、
気長に付き合ってください」

安達君は高校生だと言っていたが、
う~~~~ん、
少年にしか見えない彼と、
どうやって付き合えばいいんだろう。

今はリモートが通常になっているので、
学校に通うのは、
無償化対象の中学までだ。

無償化になっても、
子供が増えないこともあり、
学校数が減り、
高校からはリモート教育が多くなっていた。

安達君はどんな家庭環境で、
育ってきたんだろう。

そんな事を考えていると、
牧野と新田がやってきた。

向井の近くで足を止めると、
安達に視線をやった。

「あいつ誰? 」

「もしかして、彼が安達君? 」

新田の言葉に牧野は驚くと、
安達のそばに歩いて行った。

「こいつ子供じゃん」

そういって向井達の方を振り返ると、
続けて、

「お前幾つ? 」

と聞いた。

「………」

安達が怒ったように睨む。

「安達君は十七歳ですよ」

「へえ~小さいな」

「……」

「でも、俺から見たらガキだね」

牧野はそういうとTVを付けた。

「俺達から見たら牧野君もガキですよね」

新田は笑いながら言うと向井を見た。

俳優時代はクールだと言われていた、
新田の印象も、
冥界にきて随分変わった。

本人はどう思っているのかは、
分からないが、
向井は画面の中でしか知らないので、
親しみを感じでいた。

牧野がリモコンを手に、
ザッピングしていると、
あるアニメの画面で、
安達が急に声を上げた。

「今の何? 漫画が動いてる」

「えっ? 」

三人が驚いていると、

牧野がそのアニメに番組を切り替えた。

「凄い……」

表情が分かりにくい安達の顔が、
笑顔になった。

「なに? お前アニメ知らないの? 」

「知らない。これって動く漫画? 」

安達はそういうと、

画面に惹きつけられるように魅入っていた。

「笑うと可愛いね」

新田が驚く顔をしてから笑顔になった。

「ねえ、こいつって何者? 
ちょっと変じゃない? 」

牧野はそういうと、
怪訝そうに向井達のところに歩いてきた。
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