第77話 冥王の掛け軸
文字数 1,207文字
食堂を一緒に出てきた、
冥王と向井を見つけて、
元秀が近づいてきた。
「冥王~さっきから探してたんですよ」
「ん? 私ですか? 」
足を止めた。
「冥王がデザインした掛け軸、
出来上がりましたよ」
「おお~仕上がりましたか。
見たいです!! 」
嬉しそうな冥王に元秀は笑顔になると、
「工房の方に来ていただけますか? 」
と言った。
「冥王はどんなデザインを、
お願いされたんですか? 」
向井が聞く。
「まあ、冥王らしい感じですね。
一緒にご覧になりますか? 」
元秀が笑いながら言うので、
向井も気になり、
冥王と並んで工房に向かった。
工房に入ると安達が十朱と一緒に、
ドールハウスを作っていた。
アートンもその隣で楽しそうに、
十朱の作る冥界の景色をみて質問している。
向井達が入ってきたのも、
気づかないくらいに、
夢中になっている姿に、
冥王は満足げに眺めていた。
周りを見ると、
チビたちをはじめ虎獅狼や千乃も、
笑顔で一生懸命ものつくりをしている。
好きなことを楽しんでいる姿は、
みんな変わらないな。
向井の口元が自然とほころんだ。
ステージの方もかなり進んでいるようで、
工房とギャラリーの空間が、
広くなっている。
冥王も新しくなる光景を、
嬉しそうに眺めながら、
元秀のブースへ入っていった。
元秀は矢筈 を手に、
掛け軸を壁にかけると、
ゆっくり開いていった。
見ると迫力のある龍虎の絵が出てきた。
凄い………
向井はその絵に目を奪われたのだが、
何故か邪魔なものが中央にある。
「一つ聞いてもいいですか?
これは冥王がお願いした、
デザインなんですよね」
「そうですよ。カッコいいでしょう」
「………どうしても、
入れなきゃダメだったんですか?
俺には邪魔なものだと、
思うんですけど。ねえ? 」
向井はそういって元秀を見た。
元秀は笑いをこらえるように、
口元に拳を当てながら言った。
「龍虎は縁起物ですから、
図柄としては人気です。
冥王はそれを従えたかったんですよね」
冥王は感慨無量といった様子で、
離れたり左右で眺めたりと体を移動させた。
「なにも中央に、
自分の姿を入れなくても、
いいじゃないですか。
せっかくの素晴らしい絵が台無しです」
「まあ、
冥界でしか見られない特注ですし、
俺は描かせてもらって楽しかったです」
元秀は腕を組み満足げに話した。
「ほら、
分かってくれる人はいるんですよ。
これは私の部屋の床の間に飾るんです。
花村さんに作ってもらった龍の衝立。
あれと合わせてもカッコよすぎです」
「知ってます? 冥王の執務室は、
今やオタク部屋みたいに、
なっているんですよ。
好きなものを飾って並べて、
一人満足してるんです」
向井が耳打ちした。
「そうなんですか。あはははは」
元秀は可笑しそうに声を上げて笑った。
「とりあえず、
次はずっと描きたかった、
襖絵を作ろうと思います」
「すいませんね。
冥王のわがままにつき合わせちゃって」
「再生する前にいいお仕事させてもらって、
楽しかったです」
元秀は満足そうに掛け軸を見て微笑んだ。
冥王と向井を見つけて、
元秀が近づいてきた。
「冥王~さっきから探してたんですよ」
「ん? 私ですか? 」
足を止めた。
「冥王がデザインした掛け軸、
出来上がりましたよ」
「おお~仕上がりましたか。
見たいです!! 」
嬉しそうな冥王に元秀は笑顔になると、
「工房の方に来ていただけますか? 」
と言った。
「冥王はどんなデザインを、
お願いされたんですか? 」
向井が聞く。
「まあ、冥王らしい感じですね。
一緒にご覧になりますか? 」
元秀が笑いながら言うので、
向井も気になり、
冥王と並んで工房に向かった。
工房に入ると安達が十朱と一緒に、
ドールハウスを作っていた。
アートンもその隣で楽しそうに、
十朱の作る冥界の景色をみて質問している。
向井達が入ってきたのも、
気づかないくらいに、
夢中になっている姿に、
冥王は満足げに眺めていた。
周りを見ると、
チビたちをはじめ虎獅狼や千乃も、
笑顔で一生懸命ものつくりをしている。
好きなことを楽しんでいる姿は、
みんな変わらないな。
向井の口元が自然とほころんだ。
ステージの方もかなり進んでいるようで、
工房とギャラリーの空間が、
広くなっている。
冥王も新しくなる光景を、
嬉しそうに眺めながら、
元秀のブースへ入っていった。
元秀は
掛け軸を壁にかけると、
ゆっくり開いていった。
見ると迫力のある龍虎の絵が出てきた。
凄い………
向井はその絵に目を奪われたのだが、
何故か邪魔なものが中央にある。
「一つ聞いてもいいですか?
これは冥王がお願いした、
デザインなんですよね」
「そうですよ。カッコいいでしょう」
「………どうしても、
入れなきゃダメだったんですか?
俺には邪魔なものだと、
思うんですけど。ねえ? 」
向井はそういって元秀を見た。
元秀は笑いをこらえるように、
口元に拳を当てながら言った。
「龍虎は縁起物ですから、
図柄としては人気です。
冥王はそれを従えたかったんですよね」
冥王は感慨無量といった様子で、
離れたり左右で眺めたりと体を移動させた。
「なにも中央に、
自分の姿を入れなくても、
いいじゃないですか。
せっかくの素晴らしい絵が台無しです」
「まあ、
冥界でしか見られない特注ですし、
俺は描かせてもらって楽しかったです」
元秀は腕を組み満足げに話した。
「ほら、
分かってくれる人はいるんですよ。
これは私の部屋の床の間に飾るんです。
花村さんに作ってもらった龍の衝立。
あれと合わせてもカッコよすぎです」
「知ってます? 冥王の執務室は、
今やオタク部屋みたいに、
なっているんですよ。
好きなものを飾って並べて、
一人満足してるんです」
向井が耳打ちした。
「そうなんですか。あはははは」
元秀は可笑しそうに声を上げて笑った。
「とりあえず、
次はずっと描きたかった、
襖絵を作ろうと思います」
「すいませんね。
冥王のわがままにつき合わせちゃって」
「再生する前にいいお仕事させてもらって、
楽しかったです」
元秀は満足そうに掛け軸を見て微笑んだ。
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