第24話 霊媒師 霊光アンナ
文字数 1,457文字
翌日――――
向井は真紀子に頼まれていた、
手芸用品を受け取り、
そのあとにタブレットを見ながら、
霊の確認をしていた。
この国は毎日三千~四千人は、
亡くなっている。
しかも今では、
その半分が子供だというから、
増えるわけがない。
殆どの霊は再生の道へ進み、
消去課へまわされるので、
一番忙しいのが田所達なのかもしれない。
派遣霊はほんの一握りなのだが、
毎日のことなので数はなかなか減少しない。
しかも葵のようなものもいるので、
停滞しているのが現状だ。
昨日も再生へ進んだ派遣霊が三十人。
その中で死ぬ前にやり残した仕事を終え、
来世に進んだのは三人。
あとはサロンにいる間に、
少しずつ来世へ進む気持ちが、
強くなった霊になる。
全員に派遣先を見つけるには、
特例の数が少なすぎるのだ。
調べたところによると、
葵が今のところ最長らしい。
ある意味妖怪化しているのでは? と、
思ってしまう。
向井が地蔵通りから横道に入ると、
数メートル先でTVロケのクルーがいた。
何やら霊媒師と一緒に、
危険な場所を探して撮影しているようだ。
「また、面倒なのが……」
向井は両手を腰に置くとため息をついた。
偽霊媒師なら何の問題もないのだが、
中途半端に霊力のある霊媒師が、
一番問題なのだ。
こちらが姿を消しても、
退治しようとしてくる。
それも不出来な印を結ぶので、
特例には効かなくても、
近くを浮遊する霊や悪霊を、
増幅させてしまう。
向井は面倒に巻き込まれたくないので、
踵を返そうとしたところで、
霊媒師と目が合ってしまった。
よく見ると、
有名な霊光アンナではないか。
著名人相手に霊媒占いをする、
人気番組ももっている。
霊視も占いも適当なのに、
力のある霊媒師として扱われている。
多くの意味で、
TV局やマスコミも無視できない、
影の権力者の一人でもある。
その理由が党の幹事長だった、
「政界の傀儡師」との異名を持つ、
大沢帝国を築き上げた、
その実妹であるということ。
既に亡くなっている、
兄の威光が残っているのも、
特別室のつながりにあり、
向井としても非常に面倒な人物だった。
アンナのはんちくな霊能力のおかげで、
何度酷い目に合ったことか。
冥界では悪霊兄妹と呼ばれていた。
向井と目があったという事は、
今姿を消したら、
悪霊退散などと印を結んで、
二次被害をもたらすことにもつながる。
巻き添えを食らうのだけは避けたいので、
彼女たちが通り過ぎるのを、
待つことにした。
「面倒な相手と遭遇した……」
背後からヘルプに来た、
安達の声が聞こえてきた。
「特別室に出入りしているからか、
どうも俺との波長が合うみたいでね」
二人が話していると、
アンナが近づいてきた。
七十近いとは思えない早い足取りだ。
「あなた達、死相が出てるわよ」
「それはどうもご丁寧に」
向井が言うと、
「あなた信じてないでしょ。
私のこと知らない?
これでもかなり有名な、
霊能力者なんだけど」
「お顔はTVで拝見したことがあります」
「特別に払ってあげるから」
「いえ結構です。
霊がいても気にならないので」
「へえ、珍しい。まあいいわ。
何かあったら相談にのるから、
いつでもいらっしゃい」
そういうと向井に名刺を渡し去っていた。
「これで遭遇何回目? 」
安達が聞いた。
「相手には俺達を認識できていないから、
いいんじゃないですか。
とはいえ、
彼女たちが動いているとなると、
この辺も危ないかな。
牧野君を呼ばないと。
少しお手伝いしますか」
「……………」
「そんな顔しないで。
保護できないと、
悪霊に飲み込まれちゃいますよ」
向井は牧野に連絡すると、
渋々な安達を連れて、
アンナが消えた先へ歩いて行った。
向井は真紀子に頼まれていた、
手芸用品を受け取り、
そのあとにタブレットを見ながら、
霊の確認をしていた。
この国は毎日三千~四千人は、
亡くなっている。
しかも今では、
その半分が子供だというから、
増えるわけがない。
殆どの霊は再生の道へ進み、
消去課へまわされるので、
一番忙しいのが田所達なのかもしれない。
派遣霊はほんの一握りなのだが、
毎日のことなので数はなかなか減少しない。
しかも葵のようなものもいるので、
停滞しているのが現状だ。
昨日も再生へ進んだ派遣霊が三十人。
その中で死ぬ前にやり残した仕事を終え、
来世に進んだのは三人。
あとはサロンにいる間に、
少しずつ来世へ進む気持ちが、
強くなった霊になる。
全員に派遣先を見つけるには、
特例の数が少なすぎるのだ。
調べたところによると、
葵が今のところ最長らしい。
ある意味妖怪化しているのでは? と、
思ってしまう。
向井が地蔵通りから横道に入ると、
数メートル先でTVロケのクルーがいた。
何やら霊媒師と一緒に、
危険な場所を探して撮影しているようだ。
「また、面倒なのが……」
向井は両手を腰に置くとため息をついた。
偽霊媒師なら何の問題もないのだが、
中途半端に霊力のある霊媒師が、
一番問題なのだ。
こちらが姿を消しても、
退治しようとしてくる。
それも不出来な印を結ぶので、
特例には効かなくても、
近くを浮遊する霊や悪霊を、
増幅させてしまう。
向井は面倒に巻き込まれたくないので、
踵を返そうとしたところで、
霊媒師と目が合ってしまった。
よく見ると、
有名な霊光アンナではないか。
著名人相手に霊媒占いをする、
人気番組ももっている。
霊視も占いも適当なのに、
力のある霊媒師として扱われている。
多くの意味で、
TV局やマスコミも無視できない、
影の権力者の一人でもある。
その理由が党の幹事長だった、
「政界の傀儡師」との異名を持つ、
大沢帝国を築き上げた、
その実妹であるということ。
既に亡くなっている、
兄の威光が残っているのも、
特別室のつながりにあり、
向井としても非常に面倒な人物だった。
アンナのはんちくな霊能力のおかげで、
何度酷い目に合ったことか。
冥界では悪霊兄妹と呼ばれていた。
向井と目があったという事は、
今姿を消したら、
悪霊退散などと印を結んで、
二次被害をもたらすことにもつながる。
巻き添えを食らうのだけは避けたいので、
彼女たちが通り過ぎるのを、
待つことにした。
「面倒な相手と遭遇した……」
背後からヘルプに来た、
安達の声が聞こえてきた。
「特別室に出入りしているからか、
どうも俺との波長が合うみたいでね」
二人が話していると、
アンナが近づいてきた。
七十近いとは思えない早い足取りだ。
「あなた達、死相が出てるわよ」
「それはどうもご丁寧に」
向井が言うと、
「あなた信じてないでしょ。
私のこと知らない?
これでもかなり有名な、
霊能力者なんだけど」
「お顔はTVで拝見したことがあります」
「特別に払ってあげるから」
「いえ結構です。
霊がいても気にならないので」
「へえ、珍しい。まあいいわ。
何かあったら相談にのるから、
いつでもいらっしゃい」
そういうと向井に名刺を渡し去っていた。
「これで遭遇何回目? 」
安達が聞いた。
「相手には俺達を認識できていないから、
いいんじゃないですか。
とはいえ、
彼女たちが動いているとなると、
この辺も危ないかな。
牧野君を呼ばないと。
少しお手伝いしますか」
「……………」
「そんな顔しないで。
保護できないと、
悪霊に飲み込まれちゃいますよ」
向井は牧野に連絡すると、
渋々な安達を連れて、
アンナが消えた先へ歩いて行った。
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