第65話 御託宣室

文字数 1,202文字

ドセと別れて向かった御託宣室は、
特別室の先にある。

この小部屋は霊光アンナに向けた、
兄からの御託宣を与える、
アメジストドームが置かれている。

ここから大沢の意向を伝え、
それを現在のトップに、
御託宣できるようになっている。

受け手が受け継ぐ水晶玉に、
文字を浮かび上がらせるという。

これは帝都の時代から、
代々の権力者へと受け継がれていた。

その時の受け手が、
御託宣をしているらしい。

現在は霊光アンナが予言者となり、
お告げを行っている。

過去、御託宣を無視したことで、
政界を追われたものもおり、
それ以来、
神がかりだと言われつつも、
素直に拝聴する習わしになったそうだ。

そのお告げを利用するしないは、
トップが決めればいいだけだ。


御託宣室は、
シャワールームを少し、
大きくしたような小部屋だ。

壁に埋め込まれた、
大きなアメジストドームからは、
ジオードの結晶が、
美しく光り輝いている。

これを悪用することに抵抗はあるが、
浄化作用もあるので、
部屋に入るだけで、
向井も体が楽になるのを感じ取れた。

ドームの前に立ち言霊を放つと、
発光が広がり、
文字霊となり吸い込んでいった。

後は霊光アンナの水晶が、
それを伝えてくれるだろう。

向井はこんな橋渡しに、
いったいどんな意味があるのか、
分からないままに部屋を出た。


向井が特別室の配属を命じられた時、

「この国は怨みの上にあるので、
一度滅びたほうがいいんです。
でなければ、
国を破滅にしか導かない」

と冥王に言われたことを思い出した。

それが何を意味するのか、
向井にはあずかり知らぬことだが、
特別室に関係があるらしい。

冥王が厳しい表情で言ったのを、
今でも覚えている。

そんな知りたくもない国の闇に、
死後触れることになるとは、
俺の魂は徳からは、
程遠いのかもしれないな。

向井は休憩室へ歩きながら、
小さなため息をついた。


そういえば御託宣室を出た後は、
体が楽になる。

空間の浄化のせいかもしれないが、
水晶の邪気払いが、
影響しているのかもしれない。

悪霊と接している特例には、
効果絶大なのだろうか?

向井はふと、

『あのアメジストドームを、
休憩室にも置けないか? 』

と考えた。


安達だけでなく、
他のメンバーや死神の体のメンテにも、
効くかもしれない。

冥王に相談してみるか。

そんなことを思いながら歩いていると、
ギャラリーから、
賑やかな声が聞こえてきた。

覗いてみると、
冥王と虎獅狼が、
楽しそうに盛り上がっている姿があった。

「ほお~やはり虎獅狼もそう思うか? 」

「まあな。
このゾンビが妖を食らうのは解せないが、
その力を取り込むことで、
パワーが増したということであろう」

「うんうん。この先が気になるんだが、
来月まで出ないんですよ」

「俺も気になっているんだが、
葵の奴も最近は口が堅くての~
向井のせいで、
仕事のことはしゃべらんのよ」

「向井君は少し、
柔軟性に欠けるところがありますからね」

そういって二人が笑っているのを見て、
向井が背後から声をかけた。
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