第82話 お祭り?

文字数 1,101文字

「お祭りですか。いいですね~
やりたいですね~ね~? 」

冥王が向井の顔を見た。

「………」

「無視しないでくださいよ」

「発表会やるんだから、
お祭りはいらないでしょう? 」

そんなやり取りにティンが笑っていると、

「えっ? お祭り? なんかやるの? 」

牧野が冥王と向井の間に入り込んできた。

「私は食事中なんですから、
邪魔しないでください」

牧野は冥王の文句も聞かず、
ホットドッグを手に、
楽しそうに話し出した。

「お祭りっていえば屋台じゃん。
たこ焼き、焼きトウモロコシ、
チョコバナナ? 」

「牧野君、それ全部食べ物なんだけど」

「食べ物で十分だよ」

「屋台って何? 」

安達がメロンパンを食べながらやってきた。

向井とティンが驚いていると、

「甘いものは別腹~」

嬉しそうにかぶりついていた。

「ねえ、お祭りって屋台なの? 」

安達の質問に、

「お前はお祭り知らないのか? 」

「知らない。見たことない」

「夏祭りは? 」

「知らない」

「神社に屋台があるだろう? 
ここに帰る時に見たことないのか? 」

「………俺、神社じゃなくても、
ここに帰れるから」

「えっ? なんで? 」

「リングがあるから」

「そのリングって、
そんなこともできるの!? 」

牧野は驚いて冥王を見た。

「俺も欲しい!! 俺にもくれ!! 」

「牧野君には必要ないかな……? 
牧野君が付けても、
役に立たないと思いますよ」

「安達だけなんてずるい!! 
俺も何か欲しい!!
安達がいつもふらりといなくなるのって、
そのリングがあるから? 」

「俺は安達君と帰る時は、
リングで一緒にゲートくぐって、
冥界に戻るけどね」

向井が言うと、

「俺と一緒の時はなんで先に帰るんだよ」

「ん~わかんない」

安達はそういうと笑った。

「まあ、お正月の七日間は、
眷属が見てるので、
君たちはお休みですからね。
安達君がお祭りを知らなくても、
仕方がないですね」

冥王が最後の一切れを口に入れて言った。

「お祭りは祀ると言って、
神様への感謝を言うんですよ。
この国には多くのお祭りがありますけど、
今は季節の催しになってますね」

冥王が説明した。

「屋台はお供えみたいなものというと、
分かりやすいですかね。
神様のお祝いを皆が喜んでくれると、
嬉しいんですよ」

「ふぅ~ん。冥王も嬉しい? 」

「嬉しいですよ」

冥王が安達を見てほほ笑んだ。

「そんなのどうでもいいんだよ。
とにかく美味しいもんがいっぱい並ぶの」

「楽しそう」

安達がほわんとした顔でいるのを見て、
向井はふと思いついた。

「冥王も牧野君もお祭りがしたいんですよね。
それは食べ物の屋台があれば、
いいわけで………」

そういうと立ち上がって部屋を出て行った。

「どうしたんでしょう? 」

冥王が言うと牧野達も首を傾げた。
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