第15話 死神のお仕事
文字数 1,733文字
「呼んだ? 」
彼女は向井に言った。
「急ですいませんね」
「ん? おっ、虎獅狼。久しぶり~」
「二人はお知り合いですか? 」
向井が聞くと、
「まあね。山川とは長いからね~
虎獅狼とも二十年来の付き合いだね」
「えっ? ちょっと待って、
山川さんは死んでから、
二十年以上経っているんですか? 」
驚く向井に、
「そうなるわね。
私もかれこれ二十年。
彼女に憑依されてるってことかぁ~」
向井は頭を抱えてしゃがみこんだ。
「ええええええ~!!
二十年も成仏しない派遣霊って、
いるのか!? 」
「なぁに、
二十年なんて昨日みたいなもんだろ」
「虎獅狼にはそうかもね。
でも死んでるとはいえ、
人間の寿命は短いからさ」
「なるほど。不憫よの~」
「で、山川は今どこ? 」
「えっ? その辺に……」
向井はまだ頭が働かずに、
慌ててタブレットを動かした。
見るとトリアは山川専属になっている。
どういう事だ?
向井がそのことを尋ねると、
「ああ、仕方がないのよ。
私の体が山川仕様になっちゃって、
他の派遣霊が居心地悪いって嫌がるから」
「ああ、そういうこと。
山川さんとの相性がいいんですね」
「相性もなにも、
ああいう、
古い霊を扱える死神が少ないだけ。
今いる死神は現冥王の使役だから……
あっもしかして、
前冥王からの使役って私だけかも? 」
「お前も死神というくらいだから、
神なのか? 」
「なわけないでしょ。
神がこんな仕事する? 」
「しないのか? 」
「しないわよ。言っておくけど、
死神がどうやって作られてるか、
あんたら知ってる? 」
彼女の文句に、
向井と虎獅狼が同時に首を横に振った。
「冥王の一部で出来てるの。
あ~もう!!
そういうだけでも気持ち悪い~」
彼女は両腕で体を包み身震いした。
「大抵は髪の毛や髭に息を吹きかけて、
死神が出来上がるわけなんだけど、
私の核は前冥王なの。
ガラの悪い汚ならしいジジイだったわけ。
現冥王みたいないい男なら、
私も我慢できるんだけど、
あれよあれ~」
両手で頭を抱える彼女を、
向井がボ~ッと見ているので、
「あんた前冥王見たことないの? 」
「いやぁ、この仕事二年目ですから」
「冥王室出入りしてるんでしょ。
写真があるでしょ。
気取ったポーズの写真が」
そういえば、
壁に写真が飾られていたような……
向井は思い出すようにあごに手を当てた。
「冥王が変わる時に前冥王の写真だけ、
冥王室に飾られるのが習わしなんだって。
死神だって寿命があるから、
核が弱ればお役御免なんだけど、
私の核がこれまた強いのよ。
もう二百十年よ。
医務室に行って調べてもらったら、
まあ、丈夫。
くたばる気配がないって言われた」
彼女は言いたいことだけ言うと、
ふぅ~と息を吐いた。
すると遠くの方から葵が駆けだしてきた。
「トリア~久しぶり~」
「山川、いい加減にこれで成仏してよ」
「トリアとあたしの仲じゃん」
「とりあえず憑依できるよう、
メンテしてきたから、
さっさと入って仕事するよ」
派遣霊は思いが強いばかりに、
憑依後に体の不法占拠を企てるものもいる。
死神の体だ。
当然、
肉体を乗っ取ることは不可能なので、
悪霊扱いにされ、
核からの光の渦に飲み込まれ、
そのまま消えてしまう。
派遣霊でそのような企てをするものは、
まずいないが、
過去に数回だが、
そんな派遣霊がいた前例がある。
その為に派遣課の調査員が入り、
万全に備えている。
「とりあえず、急ぎだそうなので、
一時間後に松田さんの仕事場に伺います」
向井が言うと葵が、
「じゃあ、久しぶりにトリアの中へ……」
憑依する瞬間を虎獅狼もじっと見ていた。
「おっ、いい感じ~」
葵はトリアの体を馴染ませるように動かした。
「連泊グッズは一通り、
トリアさんに持ってきてもらっているので、
そのまま出かけられますね」
「オッケ~」
「葵のその姿、俺も久々に見たな」
「どお? 似合ってるでしょ」
虎獅狼と葵の姿に、
この二人をずっと一緒にしていて、
大丈夫なのか?
なんかちょっと心配になってきたぞ。
「なんだ。お前は心配性だな。
高田は平気だったがな」
虎獅狼があきれ顔で笑った。
なぜかこの虎獅狼には、
心の中を見透かされているようで、
落ち着かない。
「まあ、
お前とは生きている時間が違うからな。
そんなに気にするな」
虎獅狼はそういうと、
「ほら、行くんだろ? 」
と、二人の前を歩き出した。
彼女は向井に言った。
「急ですいませんね」
「ん? おっ、虎獅狼。久しぶり~」
「二人はお知り合いですか? 」
向井が聞くと、
「まあね。山川とは長いからね~
虎獅狼とも二十年来の付き合いだね」
「えっ? ちょっと待って、
山川さんは死んでから、
二十年以上経っているんですか? 」
驚く向井に、
「そうなるわね。
私もかれこれ二十年。
彼女に憑依されてるってことかぁ~」
向井は頭を抱えてしゃがみこんだ。
「ええええええ~!!
二十年も成仏しない派遣霊って、
いるのか!? 」
「なぁに、
二十年なんて昨日みたいなもんだろ」
「虎獅狼にはそうかもね。
でも死んでるとはいえ、
人間の寿命は短いからさ」
「なるほど。不憫よの~」
「で、山川は今どこ? 」
「えっ? その辺に……」
向井はまだ頭が働かずに、
慌ててタブレットを動かした。
見るとトリアは山川専属になっている。
どういう事だ?
向井がそのことを尋ねると、
「ああ、仕方がないのよ。
私の体が山川仕様になっちゃって、
他の派遣霊が居心地悪いって嫌がるから」
「ああ、そういうこと。
山川さんとの相性がいいんですね」
「相性もなにも、
ああいう、
古い霊を扱える死神が少ないだけ。
今いる死神は現冥王の使役だから……
あっもしかして、
前冥王からの使役って私だけかも? 」
「お前も死神というくらいだから、
神なのか? 」
「なわけないでしょ。
神がこんな仕事する? 」
「しないのか? 」
「しないわよ。言っておくけど、
死神がどうやって作られてるか、
あんたら知ってる? 」
彼女の文句に、
向井と虎獅狼が同時に首を横に振った。
「冥王の一部で出来てるの。
あ~もう!!
そういうだけでも気持ち悪い~」
彼女は両腕で体を包み身震いした。
「大抵は髪の毛や髭に息を吹きかけて、
死神が出来上がるわけなんだけど、
私の核は前冥王なの。
ガラの悪い汚ならしいジジイだったわけ。
現冥王みたいないい男なら、
私も我慢できるんだけど、
あれよあれ~」
両手で頭を抱える彼女を、
向井がボ~ッと見ているので、
「あんた前冥王見たことないの? 」
「いやぁ、この仕事二年目ですから」
「冥王室出入りしてるんでしょ。
写真があるでしょ。
気取ったポーズの写真が」
そういえば、
壁に写真が飾られていたような……
向井は思い出すようにあごに手を当てた。
「冥王が変わる時に前冥王の写真だけ、
冥王室に飾られるのが習わしなんだって。
死神だって寿命があるから、
核が弱ればお役御免なんだけど、
私の核がこれまた強いのよ。
もう二百十年よ。
医務室に行って調べてもらったら、
まあ、丈夫。
くたばる気配がないって言われた」
彼女は言いたいことだけ言うと、
ふぅ~と息を吐いた。
すると遠くの方から葵が駆けだしてきた。
「トリア~久しぶり~」
「山川、いい加減にこれで成仏してよ」
「トリアとあたしの仲じゃん」
「とりあえず憑依できるよう、
メンテしてきたから、
さっさと入って仕事するよ」
派遣霊は思いが強いばかりに、
憑依後に体の不法占拠を企てるものもいる。
死神の体だ。
当然、
肉体を乗っ取ることは不可能なので、
悪霊扱いにされ、
核からの光の渦に飲み込まれ、
そのまま消えてしまう。
派遣霊でそのような企てをするものは、
まずいないが、
過去に数回だが、
そんな派遣霊がいた前例がある。
その為に派遣課の調査員が入り、
万全に備えている。
「とりあえず、急ぎだそうなので、
一時間後に松田さんの仕事場に伺います」
向井が言うと葵が、
「じゃあ、久しぶりにトリアの中へ……」
憑依する瞬間を虎獅狼もじっと見ていた。
「おっ、いい感じ~」
葵はトリアの体を馴染ませるように動かした。
「連泊グッズは一通り、
トリアさんに持ってきてもらっているので、
そのまま出かけられますね」
「オッケ~」
「葵のその姿、俺も久々に見たな」
「どお? 似合ってるでしょ」
虎獅狼と葵の姿に、
この二人をずっと一緒にしていて、
大丈夫なのか?
なんかちょっと心配になってきたぞ。
「なんだ。お前は心配性だな。
高田は平気だったがな」
虎獅狼があきれ顔で笑った。
なぜかこの虎獅狼には、
心の中を見透かされているようで、
落ち着かない。
「まあ、
お前とは生きている時間が違うからな。
そんなに気にするな」
虎獅狼はそういうと、
「ほら、行くんだろ? 」
と、二人の前を歩き出した。
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