第95話 妖怪達のアクセサリー

文字数 1,104文字

「で、何か用か? 」

「あぁそうそう。これ」

そういって、
向井は小さな袋を手渡した。

「この前、
虎獅狼と千乃が作っていたプラ板です。
青田さんが、
アクセサリーにしてくれましたよ」

「それはわざわざ、すまんの」

虎獅狼と千乃が嬉しそうに受け取った。

「これなんじゃ? 」

呉葉とクロが袋の中身を覗く。

「可愛い………」

呉葉は、
千乃のヘアアクセサリーを見て、
笑顔になった。

「これはどうやって作るんだ? 
俺も作りたいぞ」

クロも虎獅狼のブローチを見て、
向井を見上げた。

「これはな、
冥界の工房で教えてもらって作るんだ。
この他にも針を刺して人形も作れるしな」

向井の代わりに虎獅狼が説明していると、

「人形に針を刺すのか? 
そりゃ呪いの人形だろ」

クロが言う。

「違うわよ~
本当に可愛いお人形が作れるの。
私は次にそのニードルに挑戦するのよ」

千乃が笑顔になった。

「わらわも作りたいぞ」

呉葉はアクセサリーを、
じっと見つめたまま言った。

「だったら許可をもらって、
ブレスレットを装着して、
工房で作られたらどうですか? 」

そんな話をしていると、
突然大きな揺れが起こった。

「地震じゃ」

五人は大きく揺れる地面に座り込み、
おさまるのをじっと待った。

公園の周囲でも人々が立ち止まり、
揺れが緩やかになるまで動かずにいた。

「ん? おさまったか? 」

虎獅狼は立ち上がると、
辺りを見回した。

「最近、特に多いですよね」

向井も周囲を見ながら、
怪我人がいないか確認する。

「人間どもが自ら結界を崩しておるからの」

「結界? 」

虎獅狼の言葉に向井が怪訝な顔をした。

「ん? そうか。お前は知らんのか。
だったら俺からは言わんが、
気になるなら冥王に聞くがいい」

思い見る向井に虎獅狼はそれだけ言うと、
千乃たちとアクセサリーを見ながら、
楽し気に話し始めた。


冥界に戻ると、
再び下界で大きな揺れがあったようで、
死神課の前で数人が集まり、
何やら話をしていた。

「向井さん、お帰りなさい。
地震大丈夫でした? 」

エナトが声をかけた。

「今も大きな揺れがあって、
下界では怪我人も出たみたいです」

オクトが言った。

「ここに戻る前に起きた大きな揺れは、
虎獅狼達も一緒でしたけど、
すぐにおさまりましたから」

「これだけ頻繁に地震が続くと、
下界は危険かもしれませんね」

エナトがひと思案するように、
腕を組んだ。

虎獅狼達は大丈夫だろうか。

そんな事を考えながら、

「そうだ。冥王は今、
どこにいるか分かりますか? 」

向井が聞いた。

「冥王なら図書室かもしれませんね。
コミックの発売日でしょ」

オクトが笑いながら言った。

冥王はお気に入りのコミックは、
新刊が発売された後に、
図書室で読むのが日課になっている。

向井はその足で図書室に向かった。
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