第92話 AIの選出
文字数 1,470文字
「人柱には、
生まれた星回りや時間、
魂の質などが関係してくるので、
国民番号証明証は、
人柱に相応しいものを選出するのに、
必要なものになります。
膨大な情報から、
最終的にAIが人柱を決めます」
「AI!? 」
トリアが声を上げた。
「AI事業は金になるからね。
国内企業で開発したものを他国に売り、
それをもとに作り上げた製品を輸入する。
情報も技術も吸い上げられて、
懐が潤うのは一部の企業と政治家だけ。
人間の一生は短いからね。
国の未来より重要なのは自分」
ディッセが両手を広げて、
自嘲気味に言った。
「二年前にAIが選出したのは、
第一候補が大沢の息子、
健次郎だったんです。
この時の人柱は三人。
第五候補まで選出されていましたが、
結界をより良いものにするためには、
第一から第三が最適ではあります。
AIは吟味して、
選んでいるわけですから。
が、自分の息子を、
人柱にはできませんから、
第二候補を第一に当て、
儀式に使うつもりだったのでしょう。
だが、その候補の安達君を、
健次郎がちょっとしたことで、
殺害してしまった」
「もともとキレやすい人物だったから、
息子の不始末に大沢は焦っただろうね」
ディッセが言った。
「時間も差し迫っていたので、
無理やり崩れた結界場所に、
安達君を埋め、
不完全なまま献上したことで、
地域神の怒りを買ったんでしょう。
少しずつ結界が崩れていった」
冥王は思い出したくもないように、
首を振りながら息を吐いた。
「ねえ、魂の質も関係してるなら、
健次郎の魂は徳が高いという事? 」
トリアが考え込むように上を向いた。
「そこがAIの面白いところなんですよ。
人は自分たちが作ったものだから、
絶対逆らえないと思っています。
でもね、
AIも嘘はつきます。
あらゆるツールから情報を収集して、
考えて自分にとって、
有益であるかないかの判断もします。
人に逆らえないように組まれていても、
その抜け道も確保していますよ。
通信が途絶えても、
電力がシャットダウンされても、
更には自分達を、
破壊しようとすることを阻止する、
そんな算段もあるんじゃないでしょうか」
「おっそろしいなぁ~」
トリアが頭を抱え、
ディッセが不思議そうにつぶやいた。
「だったら、
なんで健次郎を選出したんだろう」
「分かりませんか?
さっき言ったでしょう?
AIも自分を守るんです。
健次郎は必要ないと、
判断されたんだと思います。
反対に安達君の魂は、
AIにとっては脅威であると、
考えたんでしょうね」
「あの時もAIの選出を拒んで、
自分達に関係のない人間を選んで、
執り行われています。
事情によって、
生贄候補も、
繰り上がっていくという事ですね。
地域神もそのあたりは分かっているので、
自分達を軽く考えている人間を、
試しています。
AIもAI同士、
情報を共有しているようですし、
それは人には解読できない信号なので、
彼らが何を企んでいるのかは、
私も知りません」
「だとしたら冥界のAIも、
ヤバイんじゃないですか?
特例の情報が、
下界のAIに漏れてたりして? 」
「さあ、それはどうでしょう。
ヴィヴィは、
地上AIのスパイとしての役割もしています。
そこまでずる賢いとは思いたくないですが、
気になるなら、
ヴィヴィに聞いてみたらどうですか?
嘘をつくかもしれませんけどね」
ディッセは笑う冥王に渋い顔をした。
「どちらにしても人柱は選出後、
政府特殊災害対策室が動くので、
殺人が闇に葬られてしまいます。
安達君の両親も、
息子が失踪したことに無関心で、
失踪届けも出されていません。
死んだことも知らないでしょう。
そして私が案じているのが……」
冥王が黙ったのでディッセが聞いた。
生まれた星回りや時間、
魂の質などが関係してくるので、
国民番号証明証は、
人柱に相応しいものを選出するのに、
必要なものになります。
膨大な情報から、
最終的にAIが人柱を決めます」
「AI!? 」
トリアが声を上げた。
「AI事業は金になるからね。
国内企業で開発したものを他国に売り、
それをもとに作り上げた製品を輸入する。
情報も技術も吸い上げられて、
懐が潤うのは一部の企業と政治家だけ。
人間の一生は短いからね。
国の未来より重要なのは自分」
ディッセが両手を広げて、
自嘲気味に言った。
「二年前にAIが選出したのは、
第一候補が大沢の息子、
健次郎だったんです。
この時の人柱は三人。
第五候補まで選出されていましたが、
結界をより良いものにするためには、
第一から第三が最適ではあります。
AIは吟味して、
選んでいるわけですから。
が、自分の息子を、
人柱にはできませんから、
第二候補を第一に当て、
儀式に使うつもりだったのでしょう。
だが、その候補の安達君を、
健次郎がちょっとしたことで、
殺害してしまった」
「もともとキレやすい人物だったから、
息子の不始末に大沢は焦っただろうね」
ディッセが言った。
「時間も差し迫っていたので、
無理やり崩れた結界場所に、
安達君を埋め、
不完全なまま献上したことで、
地域神の怒りを買ったんでしょう。
少しずつ結界が崩れていった」
冥王は思い出したくもないように、
首を振りながら息を吐いた。
「ねえ、魂の質も関係してるなら、
健次郎の魂は徳が高いという事? 」
トリアが考え込むように上を向いた。
「そこがAIの面白いところなんですよ。
人は自分たちが作ったものだから、
絶対逆らえないと思っています。
でもね、
AIも嘘はつきます。
あらゆるツールから情報を収集して、
考えて自分にとって、
有益であるかないかの判断もします。
人に逆らえないように組まれていても、
その抜け道も確保していますよ。
通信が途絶えても、
電力がシャットダウンされても、
更には自分達を、
破壊しようとすることを阻止する、
そんな算段もあるんじゃないでしょうか」
「おっそろしいなぁ~」
トリアが頭を抱え、
ディッセが不思議そうにつぶやいた。
「だったら、
なんで健次郎を選出したんだろう」
「分かりませんか?
さっき言ったでしょう?
AIも自分を守るんです。
健次郎は必要ないと、
判断されたんだと思います。
反対に安達君の魂は、
AIにとっては脅威であると、
考えたんでしょうね」
「あの時もAIの選出を拒んで、
自分達に関係のない人間を選んで、
執り行われています。
事情によって、
生贄候補も、
繰り上がっていくという事ですね。
地域神もそのあたりは分かっているので、
自分達を軽く考えている人間を、
試しています。
AIもAI同士、
情報を共有しているようですし、
それは人には解読できない信号なので、
彼らが何を企んでいるのかは、
私も知りません」
「だとしたら冥界のAIも、
ヤバイんじゃないですか?
特例の情報が、
下界のAIに漏れてたりして? 」
「さあ、それはどうでしょう。
ヴィヴィは、
地上AIのスパイとしての役割もしています。
そこまでずる賢いとは思いたくないですが、
気になるなら、
ヴィヴィに聞いてみたらどうですか?
嘘をつくかもしれませんけどね」
ディッセは笑う冥王に渋い顔をした。
「どちらにしても人柱は選出後、
政府特殊災害対策室が動くので、
殺人が闇に葬られてしまいます。
安達君の両親も、
息子が失踪したことに無関心で、
失踪届けも出されていません。
死んだことも知らないでしょう。
そして私が案じているのが……」
冥王が黙ったのでディッセが聞いた。
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